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御殿山の魔術師  作者: リノキ ユキガヒ
一念発起〜エピローグ
31/33

バレてました

当然の事だが私は盛田さんと井深さんをスマホで撮る様なことはしていない。

と、いうか二人の前はおろか。タイムスリップした時はできる限り自分が未来から来た人間で有る事を悟られない様にしていた。

ナゼ、二人の写真が私のスマホに有るのだろう?

必死に思考を巡らせた。そしてある一つの推論が思い立った。

それは私が初めてタイムスリップした時だ。

そう、井深さんが当然開けたドアに頭をぶつけて気を失った時。

その時に私の所持品からスマホを取り出し、訳も解らず弄り回してる間にカメラアプリが立ち上がり知らぬ間に撮影されていたのだろうと…。

「って事は」

私はその考えに至るとある一つの結論も同時に導き出された。

「私が未来から来た事もバレてた?」

そう思った瞬間に私の心に何か衝撃の様な感情が突っ走った。

その衝動に突き動かされる様に立ち上がると、思わずサニーの歴史をネットで調べ始めた。

が、どこにもそれらを匂わせる記述はどこにも無かった。

「ま、そりゃそうか」

ガッカリというか?安堵というか?なんとも言えない微妙な気持ちで私はインターネットのページを閉じた。

しかし、それと同時に不思議な感情も芽生えた。

私の経験したこの奇妙な体験。これを何とかして皆に伝えたい。

別にタイムスリップした事を自慢したい訳じゃ無い。

今では大企業と呼ばれている色んな会社も初めのうちは小さい会社から始まったと、いう事をだ。

そしてそれらは全て情熱によって支えられて来た事。

これらの事を何とか色んな人に伝えたい。私はそんな衝動に駆られた。

そしてふとある事に気が付いた。

「そう言えば私、小説とか書いた事ないな…」

大分突拍子もない事だが誰かに何かを伝えたい思いからそんな考えに至った。

思い立ったが吉日。私は小説についてネットで調べて回った。

そして一つのサイトに辿り着いた。

それは「小説家になってみよう」という小説投稿サイトだった。

私はそのサイトを貪る様に見て回った。

「随分色んな人が色んな事書いてるのね」

そう呟くと自分も何にか書けるのではないかと思いはじめた。

しかし、今時万年筆と原稿用紙で執筆をするのも何だか違う様な感じもする。しかもそれではネットに作品をアップするのにまた打ち直さなければならない。

少し気が萎えた所でパソコンの傍らに置いてあるスマホが目に入った。

何の気なしに取り上げてスタート画面をボンヤリ眺める。

するとそこに「メモ」のアイコンが目に入った。

「ん?これを利用すればお手軽に小説が書けるんじゃ…」

萎えた気が再び湧き上がる。

私は取り敢えずそのメモアプリに向かって何も考えずとりあえずポチポチと文章を適当に綴ってみた。

小説はもとより文章を書く事事態が小学校の作文以来だ。

しかし、思ってた以上にサクサク書けたので時が経つのを忘れ私は夢中になってスマホのメモアプリに文章を綴っていった。

部屋の中が薄暗くなって来て私はようやくかなりの時間が経った事を悟った。

「もう、こんな時間か…」

そう呟くと窓ぎわまで行って外の景色を眺めて見た。

「しかしあれだな。こんなに夢中になれる事がまだあったなんて」

と、私は思わぬ出来事の余韻に浸っていた。

そして気が付けば私の心は充足感で満たされている事に気が付いた。


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