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御殿山の魔術師  作者: リノキ ユキガヒ
一念発起〜エピローグ
30/33

きっかけはビバルディ

 何か虚しい。漠然と毎日を送っている自分に最近少し嫌気がさしてきた。

 通勤で仕方なくバイクは乗っているがドラムの方はトンとご無沙汰だ。

 まぁ、憂さ晴らしに楽器に向かうのも正直気乗りのしない原因でもあるが…。

 休日の午後。私はどこにも行く気が起きずダラダラとネットを検索して時間を潰していた。

 海外の公道をとんでもない速度で走り抜けるバイクの動画。

 著名なドラマーの貴重なライブ映像。

 チョット前ならワクワクしながら見れたのに今じゃ心が全然踊らない。

「ふぅ…」

 私は溜息を思わずついてしまった。

 何なんだろう?タイムスリップに巻き込まれなくなってからというもの、私は何だか妙な喪失感に駆られてる気がしてならない。

「何なのかしら?この気持ち…」

 そう呟いてからベッドへと横になった。

 ふとテーブルの上に置かれたスマホが目に入る。

 私はおもむろにそれを取り上げると画面をタップして何の気無しにいじり始めた。

「あーあ。こんな事なら写真でも撮りまくってればよかった」

 そう言うと画像のホルダーをタップした。

 サムイルネイムがズラっと出てくる。

 大体が仕事で一時的に記録が必要な物であったり、バイクで出かけたついでに撮った風景が多い。

「ふん。味気ないわね」

 私はその無機質な思い出ともいえない写メを思わず嘲笑した。

 するとその中に見覚えの無い写メが有る事に気がついた。

「なにこれ?私が風景以外撮るなんてあったかしら?」

 と言いながらそのサムイルネイムをタップした。

 画面一杯に映し出されるスーツ姿の男性とカッターシャツの胸ポケットに色鉛筆がギッシリ入った男性がカメラを覗き込んでいる画像。

「…」

 私はその記憶の無い画像を記憶の糸を手繰るように見た。

 しかし、一切何も思い出せない。

 違和感からくる心地の悪さに思わず起き上がった。

 そして頭を掻き毟りながら必死に思い出そうとした。

「わかんね」

 私はそう吐き捨てる様に言うとスマホをベッドの上に投げ捨てた。

 スマホはボスンと音をたてて布団の上に落ちていった。

 そして、窓ガラスから外を伺った。

 実にいい天気だった。私の頭の中にナゼかビバルディの「春」が鳴り響いた。

 バイオリンの軽やかなメロディ。フルオーケストラとは違う弦楽合奏曲のポップな感じ。

 その時だった。私はバラバラだったパズルのピースが合っていく様な感じるに襲われた。

 先ほど投げ捨てたスマホを慌て広いさっきまで解らなかった写メを再び見た。そして思わず声をあげてしまった。


「これ盛田さんと井深さんじゃない⁉」


 そう叫ぶと食い入る様にその画面を見つめた。


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