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御殿山の魔術師  作者: リノキ ユキガヒ
ですよねー
29/33

複雑な気持ち

例の如く私は何時の間にか現代に戻されていた。

あれからバイクは調子を崩しレッカー車で運ばれそのまま修理となった。

不思議な事に修理から帰って来たバイクに乗っても不意に過去に飛ばされる事はなくなった。

幸か不幸か?仕事の方が多少忙しくなり私はタイムスリップした事を記憶の片隅においやる事が出来た。

まぁ、忙しいときに過去に飛ばされたりしたらたまったものではないので、ある意味助かった事にはなる。

そして、仕事の方の忙しさがひとだんだくした頃に私は、ふと過去に飛ばされた事を思い出した。

仕事終わりに衝動的にバイクを日本橋に向ける。

行きすがら「もしかしたら…」という一抹の不安というか、期待というか、なんともいえない気持ちでバイクを走らせた。

しかし、そんな私の気持ちとは裏腹に何事もなく目的地に到着してしまった。

私は日本橋三越にある向かい側にある近代的な商業ビルの前に立ち尽くした。

周りを見渡して見ると夜にも関わらず人々の往来が激しい。

私はとりあえず、あの頃の面影を探す為にそのビルの周りをグルっと歩いて見る事にした。

しかし、そこは区間ごと大規模に整地されており当時の面影を垣間見る事はできなかった。

私は元の所に戻って来るとチラと日本橋三越を見た。

これだけは当時のままと思われる外観を残していたが近代的な装飾が施されているせいか?あの頃の荘厳さのような、威厳みたいなものはあんまり感じられる事ができなかった。

私は落胆とは違う、えもいわれぬ感情を抱いたまま再びバイクに跨った。

しかし、板橋の自宅には向かう気にはなれずそのまま、ハンドルを新橋の方に向けた。

そう、サニーの本社ビルのある御殿山に。

しかし、今現在サニーの本社ビルや開発部署は各地に散らばっており、本社機能は品川に、開発部署は地方の方になっている。

そしてサニーは今現在、経営不信に喘いでおり経営再建のニュースが世間を騒がせている。

皮肉な事にその経営不信の要因になったのがアメリカから渡って来た携帯オーディオプレイヤーだ。

それはまるでサニーのウォーキングマンが世界を席巻したように瞬く間に、世の中に浸透していきそれで音楽を聴くのが当たり前の世の中になった。

私のバイクは御殿山に着いたがそこには勿論、サニーの本社ビルは無く、変わりにタワーマンションが立っていた。

正直、そこに降りてあの時を思い出して懐かしむ気にはなれなかった。

私のバイクは御殿山をそのままスルーして山手通りをそのまま直進して、自宅のある板橋へとノーズを向けた。

そして、そのまま床に入った。

何事も無く夜は明け私は仕事へ向かう為の身支度を整えていた。

それが終わると、ドアを開け外に出た。

アパートの玄関先に何事も無く私の愛車・CBR600fが止まっている。

機械であるが何か言いたげにしているのは気のせいだろうか?

私は愛車から発せられている例え様の無い雰囲気を受け流すと、ヘルメットを被りエンジンを始動させてそのまま会社へと出勤した。

そして淡々とその日の業務を終わらせた。

そして帰宅し、夕飯を済ませて軽くシャワーを浴びて、ノンビリと音楽を聞いて、床に入った。

月曜日から金曜日までこれを繰り返した。

いつしか私の心には漠然ではあるが悶々とした気持ちが折り重なって行った。




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