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御殿山の魔術師  作者: リノキ ユキガヒ
のんべんだらり
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自己紹介

私の名前は「盛田温子」

仕事は埼玉県戸田市にある倉庫で事務の仕事をしている。

中学生の頃より、音響機器が好きでそっちの道を志したのだが、高校生時代に始めたバンドのせいで人生の道筋を多少踏み違えてしまった。

いや、多少どころでは無いかもしれない。

三十代の大台にのっても嫁には行けず、趣味のドラムとバイクを未だに辞められずここまでズルズル来てしまった。

ちなみに、お洒落なんぞはおとぎ話程度にしか思っていない。愛読書が「リズム&ドラムマガジン」に「月刊オートバイ」という所に私のそういったところが伺える。

かと言って今の生活に不満があるかといえばそうでも無い。

私自身はこの過不足ない生活に満足している。

年に一回位は長距離ツーリングには行けるし、ウサ晴らしに近所のスタジオに入ってドラムを叩いたり、昔取った杵柄で自分の叩いたドラムをセルフレコーディングしてパソコンで加工して遊んだり、

何だかんだ一人で色々楽しみながら生きている。

私自身の性格かも知れないが人と一緒に居るよりかは機械と一緒に居た方が心が安まるのだ。

今更ながらだが、あのまま一直線に音響関係の仕事を志していたら

こんな気ままな人生は送れなかっただろう。

それこそ、納期とノルマに追われる日々だ。

この辺りが社会人になってみて、自分自身が人並みに苦労をして来た今だからこそ言えるセリフだ。

ひょっとしたら忙殺されて機械好きも辞めてしまったかも知れない。

大概、理想なんて自分の思い描いていた世界とかけ離れているもんだ。

なので、元来ぐうたらしていて、自分の興味のある事しかしない私が、万が一オーディオメーカーの開発部か何かに所属しても何も出来ないのは目に見えている。

果たして第一希望を叶えても私自身幸せになれたのだろか?

そう思うと人生なんて解らないものなんだな~と思ってしまう。

そんな事をボンヤリ思いながら私は、事務所の壁に掛かっている時計を眺めた。


定時まであと少し。


口元が思わず緩む。さぁ、今日は何をしようか?

帰り掛けチョット足を延ばしてみようか?

その足で大型家電量販店に行くのも悪くない。ボチボチ新作のヘッドホンとかが出てくる時期だ。

そんな事を考えていたら定時が過ぎた。

私はタイムレコーダに自分のカードを差し込んで退社時間を打刻した。

ウチの倉庫は大手とは違って私の業務は大体、九時五時で終わる。なので倉庫の中は案外、閑散としていて打刻音が倉庫内に響き渡った。

そして、まだ仕事の終わっていない配車の大槻さんにペコリと会釈をすると彼は片手を挙げてそれを返事とした。

搬入用の巨大なドアは既に閉じられていて、出入りは脇にある小さいドアから行う。

私はそのドアから出ると一旦背伸びをした。

そして整然と並べられたトラックの間を縫って自分のバイクが停めてある駐輪スペースへと向かった。

昼間はパートのオバちゃん達の自転車に埋れている愛機だが退勤間際にはその姿を露わにする。

ホンダのCBR600F。

世紀末生まれの99年式と少々古い型だが600ccという少し中途半端な排気量は、大排気量車や小排気量車では味わえない独特な乗り味を持つ。某アニメの主人公を気取る様に言えば


「ピーキー過ぎてオマエにゃ無理だよ」


と言った感じだろうか?

実を言うと私自身何度か振り落とされそうになり肝を冷やした事がある。

そんな目にも合わされているのにコイツから降りる気にはなれない。

その証拠に走行距離は伸びに伸び、8万キロ。車検は二回通してもう時期三回目を迎えようとしている。

余談だがコイツの車検は12月24日に切れる。

この日がどれ位重要な意味を持つのか人それぞれだが私の場合は、


「車検が切れる」


と言う意味で特別な日ではある。



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