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御殿山の魔術師  作者: リノキ ユキガヒ
「やっぱり…」
11/33

ああ!!

「おい!ボンヤリ歩いてるじゃねーよ!」

 タクシーの運転手が運転席の窓から上半身を乗り出し叫んでいる姿が私の視界にいきなり飛び込んできた。

「えっ⁈」

 私は状況が読めずキョロキョロするだけだった。

 とりあえずバイクをタクシーの前から引っ込めた。その途端に無数の車が流れてくる。

 怒鳴られたせいか心臓が早鐘を打っている。

 路肩にバイクを寄せると道路から一段高くなっている歩道に腰を落とした。

 そして深呼吸をして辺りを見渡した。

 まず目に入ったのは近代的なビル群だ。

 そして私の背後には日本橋三越がある。でもそれは先ほどまで私が見ていたのとは少し様子が違う。

 何処か違うかと言われれば、解らないのだが雰囲気が違うのは明らかだ。

 そしてその向かいには盛田さん達のいる、壊れかけたビルがあったのだがそれが無くなって近代的な商業ビルがあった。

「あぁ、あれがニュースで言ってたビルか…」

 私はそう絞り出すように呟くとライディングジャケットにあるスマホを取り出した。

 そして地図アプリを立ち上げた。

 スマホからは当たり前のようにアプリが立ち上がり内蔵されているGPS機能から私が今、東京は日本橋にいる事を伝えてきた。

 訳が解らないがどうやら私は自分が住んでいた時代に戻って来たようだ。

 狐に抓まれるとは正にこの事か?と内心思いながらも私は疑心暗鬼のまま自宅へとバイクを向けた。

 家に帰り着いてようやく自分が現代に帰り着いた事を実感した。

 そして息をつく暇もなく私はパソコンを立ち上げた。

 そしてインターネットで


 盛田

 井深

 東京通信工業


 で検索をかけてみた。過去に行っていた間にずーっと気になっていた事だ。

 そしてその検索結果を見ると驚愕した。

 なんと私がお邪魔していたところは設立間も無い超有名企業だったのだ。

 その名も


 SANY


 そう。あの一流オーディオメーカーである所のサニーだ。

 そして私の事を介抱してくれた二人の男性は、盛田昭夫さんと井深大さんと言って設立当初からのメンバーでのちにサニーを世界的な企業へと成長させた中心人物だったのだ。

 私はモニターから目が離せなかった。

 自分でいうのもなんだが私もオーディオマニアの端くれだ。

 何か間違いとはいえあのソニーの黎明期を垣間見る事が出来たのだ。今になって後悔の念が怒涛のように訪れた。

「あーっ!どっかで聞いたことある名前かと思ったらサニーの前身だったんだ!」

 そう叫ぶと思わず床に寝転んだ。

「でも、今のサニーからすると随分粗末な所から始まったのね…」

 と呟きながら寝返りをうった。

 すると、とある本の背表紙が目に入った。


「メイドインジャパン」


 そう、片付けの時に出てきた、いつ買ったのか覚えの無い本のタイトルだ。

「これって確かサニーがどうやって一流企業になったか書いてる本よね」

 私は慌てその本を取ると貪るように読み始めた。

 そこには私が体験して来た時代の頃も詳細に載っており、ラジオ用のコンバーターの事も細かく載っていた。


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