表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
騎士物語  作者: RANPO
第十二章 ~趣味人~
99/113

第九十七話 円満夫婦

フィリウスたちとS級犯罪者との戦いが始まります。なんとロイドくんたちは登場しません。

「溜めて溜めて最後の一撃でドカーンってのは俺様好みだが、風の魔法で言うとそれって何なんだ?」


 強くなる為、本を正せばモテる為、騎士の道を歩む青年――同年代の者たちは勿論、現役の騎士と比べても筋骨隆々としたガッシリとした身体が目立つ彼は、共に筋トレに励む友人に尋ねる。

 並みの強化魔法を上回る筋力、威力充分の大剣、強風とのコンビネーション、それらを組み合わせてかなりの強さを見せていた彼が更に一段階強くなる為に生み出したスタイル。隣で意味の分からない速度で縄跳びをしている友人の一言をキッカケとして誕生したそれは、しかし根本的な壁にぶつかっていた。

 彼の新しい戦闘スタイルは、相手の攻撃をかわしながらエネルギーを溜めていき、ここぞというところで最大威力の一撃を放って相手を倒すというモノ。彼の得意な系統である風の魔法は空気の流れを読む事で相手の動きの先読みができる為、前半の部分はマッチしている。

 問題は後半、エネルギーを溜めて放つ必殺の一撃。これが第四系統の火の魔法や第二系統の光の魔法であれば話はわかる。特大威力の大爆発や極太のビームなど、溜めて放つ一撃はイメージしやすい。

 では風はどうか。とりあえずやってみた彼が放ったのは練りに練り込んだ魔力で生み出した突風。確かに威力は凄まじく、相手は反撃で放った魔法ごと吹き飛ばされて壁に叩きつけられたわけだが、彼自身は思っていたよりも地味な結果に不満を覚えた。


「結局のところ風ってのは空気だからな! 竜巻とかの破壊力を見ればエネルギーがデカいのはわかるが、それを伝えるのに使ってんのがふわふわの空気なのがイマイチなんだ!」


 風――強風、暴風の恐ろしいところはそれが持続する点。爆発やビームなどはある一瞬に強大なエネルギーを炸裂させて大破壊を生み出すが、竜巻などが引き起こす破壊というのは瞬間的なモノではなく、ある一定の強い力が休むことなく対象にぶつかり続ける事で発生するモノ。また先の突風による一撃も、結局のところ風そのものに破壊力はなく、相手が倒れた要因は壁に叩きつけられた衝撃。それもある程度の重量と風を受けるだけの面積があったからこそであり、仮に相手がネズミか何かだった場合、壁までの距離によっては無傷で済んでしまう。

 一撃必殺の威力をイメージする際、爆発やビームは対象が何であれ一定の破壊を与える事ができるが、風は対象の重量や形状によって破壊の度合いが変化してしまう為、彼がイメージする最後に放つ最大の一撃とは相性が良くないのである。


「そうだ、わざわざ空気なんてモノを使わなきゃいいんだ! 風を撃つ為の魔力を溜めるんじゃなくて相手にそのままぶつけるエネルギーを溜めりゃあいい話だぜ!」


 彼に新しいスタイルのキッカケを与えた友人は彼が何を言っているのかさっぱりわからなかったが、後日彼はそれをオリジナルの魔法という形で実現してしまった。

 その名も『バスター・ゼロ』。彼の言葉を借りるなら風というのは空気とエネルギーの二つが組み合わさったモノであるから、魔法で生み出した風からそのエネルギーを抽出して剣や拳に溜めていき、必殺の一撃として放つのだという。

 だがここで言う「エネルギー」とはもはや風の魔法で生み出されるようなモノではない。風力や電力、熱に運動と、あらゆる形のエネルギーへと姿を変える前の純粋な力。それに「破壊力」というイメージのみを与えて放つその一撃は、対象を破壊するのではなく「破壊された状態」にしてしまうという意味不明な魔法。どれだけ強固なモノであろうと彼がそれの破壊をイメージできるのであれば魔法の理屈の上では破壊できないモノは存在しない。

 まさに一撃必殺。まだ正式な騎士にもなっていない学生の時分の彼ですら、限界まで溜めて放った『バスター・ゼロ』は幾重にも防御の魔法が張られた城規模の敵の拠点を一撃で消し飛ばしてしまった。

 こうして形となった彼のスタイル――そのムキムキの外見からは想像できない、流れ舞うように行われる華麗な回避と最後の最後で放たれる外見通りの一撃必殺。いつしか彼はそこそこ強い騎士学校の生徒から、未来の十二騎士候補の一人となった。


 ちなみにこの時、彼がどういうイメージで何をしているのかを本人の口から聞いていた彼の友人は同じことができないかと試してみたが、『バスター・ゼロ』を再現する事はできなかった。

 魔法において最も重要な要素はイメージ力であり、「それが起きて当然」という認識を基盤として世界の理を歪ませる技術であるわけだが、同じ事柄に対して誰かと誰かのイメージが全く同じになる事などあり得ない。

 手の平サイズの鉄球と聞いてそれをイメージするとしても、人によって大きさや重さは異なってくる。仮にそれらを数値的に指定したとしてもイメージする者がその値を正確にイメージできるかどうかというのはそれまでの経験などに左右されてしまい、全く同じ人生を歩むというような事でもない限り他人のイメージを完全再現する事は不可能である。

 後に彼の二人目の弟子となる桃色の髪の女騎士は『バスター・ゼロ』を再現してみせたが、あれも厳密には彼のそれとは細部が異なる魔法であり、それでも彼女が似た魔法を扱う事が出来たのは同じ第八系統の風の魔法の使い手という共通点などが影響しての事だろう。

 何にせよ、風の魔法が得意な系統というわけではない彼の友人には再現する事ができなかったが、これはこれでその友人にもキッカケを与える事となった。

 大きなエネルギーを一点に集中させて放つという事の凄まじさ――後に彼の友人はこの考えをもとにしてある魔法を作り上げる事となる。




「だっはっは! この街の空気はなんにも変わらないな!」

 フェルブランド王国内のとある街――いや、都市と言っても差し支えないだろう賑わいを見せるその場所にやってきた奇妙な集団の先頭に立つ筋骨隆々とした男――フィリウスが両手を腰にあてて道の真ん中で豪快に笑った。

「剣闘の街ペプラム……初めて来ましたが首都のラパンよりも……その、警備が厳重ですね。」

 奇妙な集団の中では恐らく一番普通の格好をしている女――桃色の髪をなびかせつつもマントと鎧が女性騎士である事を示しているオリアナは、道のあちこちに立つ騎士たちの鋭い視線にピリッとした緊張感を覚えていた。

「己の強さ一つで地位と名誉……まぁ、端的に言えば金を稼いでいる者たちが集まる所だからな。気性の荒い連中の乱闘騒ぎが日常茶飯事ゆえにここに配属される騎士の数は他の街の数倍で、一日を何分割にもして交代制で見守ってくれている。」

 奇妙な者の一人、尖った個所が一つもない丸い深緑色の鎧をまとった男――グラジオは、腕を組んだ状態で首だけ動かし、何かを探すように周囲をキョロキョロと見ている。

「粗暴が悪くて国王軍に入れなかった連中、どこかの騎士団や傭兵からのくずれ、誰彼構わず挑んで来る武者修行やら戦闘狂やら、お世辞にも上品とは言えないけれど強さだけは確か――そんなのがわんさか集まってる街ねん。」

 奇妙な者の一人、真っ赤な髪を揺らして露出の激しい真っ赤な服から胸元やら生足やらを見せつけるようにくねくねと歩く女――サルビアはすれ違う男たちに次々とウインクを放って行く。

「普通にセラームクラスがゴロゴロいるって話だけど……え、何でここに?」

 奇妙な者の一人、一言で言えば「鳥のコスプレをしている飛行機乗り」の格好をしている男――ドラゴンがジロジロと自分たちに向けられる鋭い視線にビクビクしながらなるべくフィリウスたちと距離をあけないように歩いている。

「わかったわ! この街に集まるような連中なら戦いに巻き込まれてもむしろオッケーってわけね! 悪い事考えるわねフィリウス!」

 奇妙と普通の間ぐらいの女――褐色の肌にドレッドヘア、陸上選手のような格好にシャープなサングラスというスポーツ選手のような姿のベローズはその一言で更に鋭い視線を向けてくる周りの者たちを一切気にせずに高らかに笑う。

「だっはっは! 二割くらいは正解だな! 要するにできるだけ巻き添えを小さくするにはどうするかって話だ!」

 この奇妙な一団が何者なのか知らなかったとしても彼らの喧嘩を売るような会話に絡んでくる者がいない理由――筋肉のお化けのような体躯と背中の大剣が自然と周囲をけん制しているフィリウスはそれを理解してか、数歩ごとにポージングを決めながらこの街へ来たわけを説明する。

「神の国の一件で『右腕』とその友達が俺様を狙ってるのは『パペッティア』の襲撃でほぼ確定だ! 普段どこにいんのか謎なS級連中が向こうから来てくれるってんなら騎士としちゃあ望むところだが、一般市民を巻き込まないようにっつって何もない原っぱで四六時中ピリピリしてるわけにもいかないだろ? いつ来るかわからん敵を迎え撃つ時は適度に警戒しつつも普通に過ごしてる方がいいわけだ! 自分たち以外にも騎士やら住民やらが敵の接近を教えてくれる街中でな!」

「まぁそうねん。S級相手に神経すり減らした状態で挑みたくないし、折角出てきた敵をちゃんと倒す為に必要な巻き込みって感じかしらん。で、それに最適な街がここってわけねん?」

「そうだ! グラジオも言ってたがここは騎士の数が多い上に住民も荒事に慣れてる! S級相手に無傷ってわけにはいかないだろうが他の街で待つよりはマシだろう! でもってここにはアレがある!」

 そう言ってフィリウスが指差したのは街の中心にある巨大な建物。田舎者の青年たちであれば学院のランク戦などが行われる場所を連想しただろうがあれよりも更に規模の大きな円形闘技場。周囲の壁には剣闘士と思われる者たちが描かれた垂れ幕がいくつもおりている。

「どういう登場をしようがとりあえずあそこに放り込めば周りを気にせずに済む! 効果があるかはわからないが便利な魔法も付与されてるから場合によっちゃ有利に戦えるだろう!」

「な、なるほど……ですがその、S級犯罪者が攻めてくるからと協力を頼めるモノでしょうか……街からすればデメリットしかないといいますか……」

「だっはっは! 心配するな、俺様も昔はここで世話になったからな! 闘技場の管理者兼この街のトップとは知り合いだ!」

「え……け、剣闘士だったんですか……?」

「路銀が無くなった時に何度か稼がせてもらった! ま、俺様があまりに強すぎるってんで試合の方は出禁にされたがな!」

「そ、それ大丈夫でしょうか……」


「出て行けこのゴリラ!」

「だっはっは! ご挨拶だな!」


 オリアナの懸念通り――というかそれ以上で、フィリウスの顔を見た途端この街のトップであるらしい、結構な年齢だとは思うのだが剣闘の街を仕切っている者として本人も多分に漏れず引き締まった身体をしている老人は机の上にあった置物を放り投げてきた。

「こっちの防御魔法をぶち抜くお前のバカ火力のせいで闘技場を何度修復したと思ってる! 修繕費を払え!」

「だっはっは! それはそっちの魔法が弱いのが悪いんじゃないか!?」

「十二騎士のイカレた魔法なんざ想定外だ!」

 フィリウスの一撃必殺の攻撃で闘技場が半壊していく様が想像できてしまうオリアナが二人の言い合い――というか街の長の怒りの声とフィリウスの笑い声を前に幸先の悪さを感じていると、サルビアが肩をポンと叩いた。

「心配ないわよん。こう言っちゃなんだけど、そもそも街の長に許可を取る必要なんてないんだからん。」

「そう……なんですか?」

「S級犯罪者を捕らえる、倒すっていうのは十二騎士の権限において最優先の事として扱われるのん。連中は災害みたいなモノだから、それを何とかする為って理由であれば街の人間を避難させるなり家の中に引きこもらせるなりの指示を出せるのよん。その街の最高権力者を差し置いてねん。」

「そんな権限が……」

「もっとも、フィリウスの場合はそんなモノがあろうとなかろうと許可無しに勝手に動くんでしょうけどねん。」

 サルビアの言葉の通り、フィリウスも許可を得るというよりは状況を伝えておくという感じで怒れる街の長に話だけして、いよいよ壁に飾ってあった剣が投げられそうになった段階でその部屋を後にした。

「だっはっは! 相変わらず元気なじいさんだ! この街の荒くれ者を管理してるだけあるってな! その時が来たらいい感じに動いてくれるだろう!」

「準備は整ったというわけだな。それで、「その時」までどう過ごす? 剣闘の観戦か?」

「そいつは久しぶりに楽しそうだがその前にここに来る予定の連中についての情報共有だ! ついでに腹ごしらえもな! あっちにいい店があるぞ!」

 そう言ってフィリウスが案内したのはたくさんの出店が無造作に並ぶ祭の会場のような場所。統一感の全くない店々からそれぞれに食べ物を買って通りが見渡せる席についた面々は、食事をしながらフィリウスの話を聞く。

「めでたく『右腕』にロックオンされた俺様なわけだが、あいつが動くとおまけでついてくるS級犯罪者は『パペッティア』、『シュナイデン』、『無刃』、『好色狂』の四人! 『好色狂』は夫婦だから二人組だがな! 全員合わせて――あー、なんだっけか?」

「『満開の芸術と愛を右腕に宿した人形が振るう刀』、です。記録の中で『無刃』がそう名乗ったとあります。」

「あっは、何度聞いても覚えられないわん。」

「だっはっは! 一応メンバーの特徴を並べてるんだがな! その順番に話すとすると、まずは芸術、『シュナイデン』! こいつは芸術家を名乗ってる猟奇殺人鬼だ!」

「若い女だと聞いたが、なかなかS級らしい肩書きだな。」

 ずずいと身を乗り出すグラジオ。

「おう、毎度デザインが違うらしいが目撃情報の中じゃいつも学校の制服を着てる若い女だ! たぶん大将と同じくらいだろう! 絵と彫刻にのめり込む美術学生だが、インスピレーションを得る方法が他人の腹をかっさばくってんだから迷惑な奴だ!」

「こっわ、なんだそいつ!」

「生き物の内臓に宿るグロテスクな機能美が泉のように溢れる血液に彩られてどうのこうの……と言っていた記録がありますね。」

「意味わからんし、オリアナはそんなセリフの記録まで覚えてるのか……」

「そもそもそんなセリフまで記録してるのがすごいわよねん。」

「だっはっは! まさにS級犯罪者って感じだがこいつも他の連中同様イカレた魔法の使い手で無駄に強い! 理想の美術道具っつー概念を手足に具現化して何でも切れる彫刻刀みたいなふざけたモノをあれこれ振り回す! 大抵の防御は物理的にも魔法的にも貫通してくるらしいな!」

「ほう、私の鎧も危ういか。残念だが接近戦は避けるべき相手のようだな。」

 見るからに肩を落とすグラジオに何が残念なのかを聞く者はおらず、フィリウスは次の説明に入る。

「芸術の次は愛――これは『好色狂』だな! 今回の面子の中じゃ一番マシなジジババ夫婦だ!」

「好色……少なくとも二つ名からは『シュナイデン』のような凶悪さはなさそうだがS級でこの呼び名、さぞや乱れた夫婦なのだろうな。」

 再度ずずいと身を乗り出すグラジオ。

「その通りなんだがその言い方だと微妙に外れだな! こいつらの犯罪は何かっつったらそれはただのわいせつ行為――いや、それの陳列か? この夫婦は所かまわず連れてる奴隷とおっぱじめる! 何ならヤリながら買い物までする乱れっぷりだ!」

「あらん? なかなかお盛んだけど奴隷となのん? 夫婦でじゃないのねん。」

「だっはっは、本人たち曰く、夫婦の愛し合いを人前でするわけないだろう、だそうだ! もはや線引きが理解できないんだが、ともかくんなことしてる奴がいたら当然騎士が声をかけるだろう? それでもお構いなしなもんだから騎士が実力行使に入るわけなんだが、問題はここでな! 今のところこの夫婦のわいせつ行為を止められた騎士は一人しかいない!」

「え……は? いや、ただのエロ夫婦なんだろ?」

 ただの迷惑な夫婦の話の中に出てきた恐ろしい一文にドラゴンが間の抜けた顔をする。

「しかもその一人ってのは偶然出くわした《ジャニアリ》なんだが、止められただけで捕まえるのも倒すのもできなかった!」

「要するに、やってる事はともかく強さが尋常じゃないってことねん。」

「そうだ! 素っ裸で出歩くのも夫婦でイチャイチャすんのも好きにすればいいし、人前って点を除けばあいつらがヤッてる相手は自分で買った奴隷だから法律的には何ら問題が無い! だがその迷惑行為を止めようとした騎士がことごとく返り討ちにされて、十二騎士といい勝負をして引き分けやがった! そんなこんなでいつの間にかS級犯罪者になっちまって『好色狂』って二つ名がついちまったのがこのエロジジババ夫婦ってわけだ!」

「《ジャニアリ》と引き分けるとは……フィリウス以上に規格外のパワーを持つあの男と互角となると、やはり『好色狂』もパワーファイターか。」

「夫婦そろってゴリゴリのな! しかも《ジャニアリ》が言うにはそのパワーを器用に使うらしく、攻撃のバリエーションが豊富で普通に厄介な相手だそうだ!」

「S級犯罪者の不思議だけどん、なんでそんなただの好き者がそういう領域の強さを手にするのかしらねん。」

「だっはっは! 愛と活力が源だとか言ってたらしいぞ!」

「ま、S級犯罪者って意味のわからないイメージを魔法に落とし込むものねん。次の『右腕』もそんな感じで怪物じみてるわよねん。こっちは前にも色々聞いたから大体知ってるけど……その時はまだオリアナはいなかったわねん?」

「だっはっは! むしろオリアナの方が色々知ってるまであるだろう! そもそもこの説明会はオリアナみたいに勉強熱心じゃないお前たちの為にしてるところまであるんだからな!」

 そうだろう!? と言わんばかりの顔を向けられたオリアナは縮こまる。

「いえ、その……知っていると言っても記録を呼んだだけで……《オウガスト》殿――フィリウスと過去に二度戦っていて……緑の騎士団リリウムスマラルダスとの一戦では街が一つ壊滅して山が二つ……消し飛んだとか……」

「デタラメよねん? 右腕に……えっと、数にできるアレコレをパワーに変えて集めるんだったかしらん?」

「数値化できる事全部だな! 身長体重、視力に握力なんかの身体に関連するモノは勿論、腹筋の回数や歩いた距離みたいな行動の記録まで、あいつを構成する要素全てを数えて力に変える! でもって一番力への変換効率がいいのが他人を巻き込む事で、最上級が命の関わる事象ってなもんだから、更なる強さを求めたあいつは殺しを始めた! 相手が強いと効率が少し良くなるとかで、「強い」と称される奴には騎士も犯罪者も関係なしに襲い掛かっていった結果、S級犯罪者の仲間入りをしたってわけだ!」

 基本的にそうであるしついさっき『シュナイデン』と『好色狂』について話していた時は犯罪者の考える事はわからん! という感じに笑いながらしゃべっていたのだが、『右腕』について説明するフィリウスにはどこか凄みがあり、世界最強の十二人の一人である騎士の圧力に押されたオリアナは思わず話題を変える。

「き、記録の通りですと、やはり戦えるのはフィリウスだけでしょうかね……つ、次は人形――『パペッティア』ですね。」


「ああ、『パペッティア』は有名ね!」


 今まで一切会話に入らずに食事をしていたベローズの座っている方からそんな声がしたので顔を向けたオリアナは目を丸くする。

 ベローズの声がしたからではなく、ベローズの座っている方から声がしたからという表現なのはオリアナがその声に違和感を覚えたからであり、事実そこに座っていたのはベローズではなかった。

「人形作りが趣味なんだけどその部品には古今東西の職人が生み出した一品を使いたがって、大昔の遺物なんかも狙ってくるからトレジャーハンターの間じゃいい迷惑してるわ!」

 口調はベローズであるし、褐色の肌とドレッドヘアー、サングラスに陸上競技の選手のような格好という点は同じだが決定的な違いとして――そこにいたのは男だった。

「!? え、あの、あなたは――」

「だっはっは! おいベローズ、オリアナがビックリ仰天してるぞ!」

「? ああ、食事の時は男になるのよ! こっちの方が沢山食べられるから! 侵入者対策の罠で遺跡に閉じ込められるなんてよくある事だから、食べられる時に食べとくのは基本よね!」

「そういう事を言ってるんじゃないわよん、ベローズ。普通の人間は突然性別が変わらないってことに驚いてるのよん。」

「ああ、そっちね!」

 自分以外の全員がこの異常事態をそうとは思っていない事に気づき、オリアナは軽く深呼吸して落ち着きながらベローズ……らしい男の話を聞く。

「昔ある遺跡に眠ってたお宝を取りに行ったんだけど、それには呪いみたいな魔法がかかってたの! 手にした者の性質の陰と陽を逆転させる事で生命力を暴走させて殺してしまう死の罠がね! ラッキーな事にあたしはエネルギーの流れをコントロールするのが得意だったから、その魔法を受けた瞬間に性質を逆転させてくる力の流れをあたしの中で循環させる事に成功したの! その結果というか影響で、あたしはあたしの性質の陰と陽――つまり性別の女と男を自由に切り替えられるようになったのよ!」

 と、ベローズの女性的な口調でそう言った男の話をにわかには信じられずに目をぱちくりさせるオリアナを見てフィリウスが爆笑する。

「だっはっは! 最初は誰でもそんな反応だ! 前にも言ったと思うがオリアナ、俺様の『ムーンナイツ』じゃあお前が紅一点でな! あれをもっとちゃんと言うなら、まともに「女」の性別やってるのはお前だけなんだ!」

「あらん、失礼ねん。お姉さんは男に切り替わったりしないわよん?」

「だっはっは、元が違うだろう!」

「サルビアに対する議論は聞き飽きているぞ。ベローズ、トレジャーハンターの間で有名な『パペッティア』はどんな奴なのだ? 私たち側の記録との差異を確認しておきたい。」

「自作の人形を操る人形師で本人が表に出てきたことはないわ! お宝が眠る遺跡にも人形を送り込んで罠も謎も全部無視して強引に進んでくの! 例え凶悪な罠が発動したって人形だから関係ないって感じで、宝探しの何たるかを何にも理解してない奴よ!」

「ふむ、本人は正体不明で人形任せというのは同じか。騎士との戦闘記録でも一体……お気に入りなのかわからないが毎度現れるピエロの人形を中心に大量の人形を操って来る。しかも一体一体がセラーム級という事でどの戦闘でも多くの民と騎士が犠牲になっている。物量という点を考えると、最も厄介なのはこいつかもしれないな。」

「へぇ、グラジオは『パペッティア』に詳しいんだな。フィリウスと『右腕』みたいに何か因縁でもあるのか?」

 ドラゴンからの問いかけに対し、グラジオは何て事のないような口調で答える。

「『パペッティア』の人形には様々なタイプがあり、中には本物の人間と区別がつかない美女もいたそうで、それと戦った騎士は戦闘どころじゃなかったという。実に興味深い。」

 詳しい理由を理解した面々の表情を眺めて笑ったフィリウスは最後の一人について話し始める。

「ラストは『無刃』! こいつは桜の国のサムライに憧れた結果「切り捨て御免」っつー昔の制度を実践してただの辻斬りになった男だ! 今回の面子の中じゃ戦闘技術は一番だろう!」

「剣士ってことねん? 興味あるわん。何かの剣術の達人なのかしらん。」

「残念ながらこいつと戦って生き延びた騎士は一人もいなくてな! その遺体や戦場の状況からサルビアと同様の風の刃の使い手なんじゃないかって推測はされてる! 刀を持ち歩いてはいるらしいんだが具体的な得物の使い方がわかってないってんで、謎の刃って意味合いで『無刃』とかいう二つ名をどっかの誰かがつけたみたいだな!」

「それだと刃が無いって意味合いになって鞘の中は空っぽの刀を持ち歩くバカって事になっちゃうわねん。」

「だっはっは、そんなアホなことをしてるクセにバカみたいに強いのがS級犯罪者って連中だからな! 色んな意味でピッタリの名前だろう!」

 自分の事を狙っているS級犯罪者たちの紹介を終えたフィリウスはぐびぐびと飲み物を喉に流し込む。

「さて、そんな感じの奴らとぶつかる予定だったわけだが、どうやら俺様が思ってた以上に連中はせっかちだったらしいな! その身体で飯が食えるならお前もどうだ! 何かおごってやるぞ!」

 不意にそんな事を言ったフィリウスにオリアナだけでなく他の面々も首を傾げたのだが、ゆらりと物陰から出てきた者を見て場の空気が一瞬で張りつめた。


『これはこれは、いつから気づいてたんだ?』


「お前の説明をした辺りから気配がしてたぞ! もっと前からいたんだろうが、人形のクセに感情を漏らすとは面白いな!」

 フィリウスから説明を受けるくらいであるから、オリアナ以外の面々は今さっき話題になったS級犯罪者たちの顔は知らない。それでも全員が臨戦態勢になったのはその者が非常にわかりやすい外見をしていたからだ。

 満面の笑みだが恐怖を感じる白い仮面、白黒のピエロ服とジェスターハット。今の会話を聞いていれば誰でもこの道化師の正体はわかるというモノ。

『オレの人形が精巧ってだけだ。ちなみに飯は食える。』

 周りから奇異の視線を受けながら他のテーブルから椅子を拝借してフィリウスたちのテーブルに座った道化師――S級犯罪者『パペッティア』は異様に長い手足を偉そうに組んだ。

「だっはっは、そうやって余裕に構えてるのは人形だからか? それとも俺様たちはとっくの昔に大量の人形に囲まれてる状態だったりするのか?」

『後者でない事はわかっているクセに腹の立つ奴だな。この前はあっさりと壊されちまったからな、今度はちゃんと観察する為にこうして一番のお気に入りで来てやったのさ。』

「ほう? それで何を観察するんだ? 俺様の食事風景か? もう少し豪快に食ってた方が良かったか!」

『誰がそんなモノ観察するか、バカが。戦闘に決まってるだろ。あいつらがヤル気満々みてぇだから便乗するだけだ。』

 そう言って『パペッティア』が指さした先、よく見える通りの向こうへ視線を移した面々はそろって何とも言えない顔になった。


「むぅ、どうにも落ち着かないな。手に女の尻の感触が無いとどうにも……」

「仕方ないわよ、アナタ。久しぶりに戦おうっていうんだもの、折角の奴隷を傷物にしたくないわ。」


 それは二人の半裸の老人。白髪や顔のしわ等から見て間違いなく老人なのだが、胸や腰に適当な布切れを巻いただけという野性味あふれる格好ゆえに際立つ引き締まった身体やモデルのような美しい歩き方に年齢の推測が狂わされる。

 一般人の目からすれば肉体美を見せつける変な老人程度の認識だろうが、数々の戦闘を経験してきたフィリウスたちからすれば明らかな強者の気配。テーブルの上に並んでいる料理を勝手に食べ始めた『パペッティア』を横目に立ち上がった面々は、その二人の前に立ちふさがるように並び立った。

「本物を見るのは初めてなんだが噂通りというかそれ以上というか、今日はエロい事をヤリながらの登場じゃないんだな! 少し残念だぞ!」

「全くだ。」

 フィリウスの言葉に深く頷いたグラジオは、あまり年齢は関係ないのか、老婆の方をジッと見つめながら確認する。

「お主らが『好色狂』の老夫婦、という事で間違いないだろうか。」

「おぉっと、その通りだが人の妻に熱い視線を送らないでもらおうか。見世物ではないのだぞ。」

 格好と言動の一致しなさに緊張感が微妙にゆるむ中、グラジオに見つめられた老婆はふふふと上品に笑った。

「悪いけど脂身たっぷりの若さに満足していたお粗末な舌は卒業しているのよ。もうあなたくらいの若さじゃ満足できないの、ごめんなさいね。それと今回はキチンと名乗るからそのいやらしい呼び名は勘弁して欲しいわ。」

「おお、そうだそうだ。『シュナイデン』や『無刃』のようなカッコイイ二つ名ならまだしも人を性犯罪者のように。私はパスチム・アカハ。妻はクレイン・アカハ。この名と強い夫婦愛に相応しい呼称を希望するぞ。」

「だっはっは! 悪いが騎士がつける二つ名ってのは九割方犯罪者の見た目と所業で決まるんでな! 『露出狂』とかになっていないだけカッコイイ方だと思うぞ! それに一度ついた二つ名が変わる事はそうそうない!」

「やだ、それじゃあこの先もずっと『好色狂』? アナタ、どうする?」

「そうそうないという事は全くないわけではないのだろう。名前が変わるようなインパクトを残せればあるいは、というところだろうな。例えばそう……十二騎士を倒す、といった具合のな。」

 ふふんと笑った『好色狂』の夫の方――パスチムは運動前のスポーツ選手のように準備運動を始めた。

「なるほど、『パペッティア』の言う通りヤル気満々なわけか! しかし正直言って『右腕』絡みのS級の中じゃお前たち二人はわざわざ俺様のところに来ないと思ってたぞ!」

「ほう? 何故だ。」

「こうして会っちまったら捕まえるが、『好色狂』は探し出してやっつけないとマズイ犯罪者ってわけじゃないんでな! 俺様にしてみればどうでもいいというか、むしろ俺様の目の保養にもなるってもんだ! お前たちが心配してるだろう、俺様が魔人族と協力して動くって状況に仮になったとしても俺様はお前たちをターゲットにはしない! 優先順位はそこらのB級犯罪者以下! 他の騎士も似たような認識だってのに、こんな真っ先に来るだなんて思わんだろ!」

「確かにその通りだ。私も妻も魔人族を従えた十二騎士に追われる事は想定していないとも。問題なのは、他の「『右腕』絡みのS級」たちは私たちと違って全ての騎士が討伐を望む凶悪犯揃いという点だ。あれらが捕まるなり殺されるなりすると私たちの平穏に支障が出る。」

「要するにお前たちが協力関係にある理由のせいって事か? 未だにハッキリしないんだが、その答えが今日聞けるといいな!」

 ニヤリと笑ったフィリウスはそろそろ準備運動を終えそうなパスチムの方へ一歩前に出ようとするが、ふとそれをグラジオが止める。

「いきなりお前が出るな。手の内のいくつかも確認してからにしろ。その為に私たちがいるのだから。」

「おいおい、俺様の『ムーンナイツ』は捨て駒じゃないぞ?」

「心外だな、私はあれを倒すつもりだというのに。」

 フィリウスの胸の辺りをポンと叩き、グラジオが前に出た。

「悪いが、主役の前に相手をしてもらうぞ。こいつ……《オウガスト》の『ムーンナイツ』の一人、グラジオ・ダークグリーンだ。」

「はっはっは、これは丁寧に。さっきも言ったがパスチム・アカハだ。普通なら妻と共闘するのだが、戦いは久しぶりなのでな。まずはなまった身体を……んん?」

 名乗ると同時に身につけている緑色の丸い鎧に風をまとったグラジオに対して何かの構えをとったパスチムだったが、何かがしっくり来ないのか首を傾げながら別の構えをとり、それでもまだ何かがおかしいようでポリポリと頭をかいた。

「いかんな……S級扱いになってからというもの絡んでくる騎士の強さは跳ね上がったが頻度は激減していてな……思った以上にブランクがあるようだ。最後に戦闘を行ったのはいつだったか……少し待ってくれ。」

 そう言ったパスチムは視線を横へ向け、グッと握った拳をその場で突き出した。


 ボンッ!!


 老人とは思えなくともその引き締まった身体的には納得のいくキレのある拳にどんな魔法がかかっていたのか、パスチムの横にあった建物は木端微塵に吹き飛んだ。

「おー、危ない危ない。いきなり何てことするんだあの爺さんは。」

 何故かそんな事を言ったのはドラゴンで、パスチムの攻撃に目を見開いていたオリアナはドラゴンの方を見て、再度驚愕する。

 ドラゴンに変化はないが、その左右には一般人――恐らくは今しがた消し飛んだ建物の中にいた人たちが、何が起きたのかさっぱりわからないという顔で十数人ほど座り込んでいたのだ。

 パスチムが横を向いてから拳を突き出すまでのほんの数秒の間に行われた救出。そのわずかな時間で間取りも知らない建物の中から全員を救い出すという信じられない速度は勿論、その救出劇が行われた事に気づいたのが終わった後であるという点――風のコントロールにある程度の自信があり、当然空気の流れにも敏感な自分が全く気がつかなかったという事実に、オリアナは変な格好をしている先輩騎士の凄さを再認識した。

「おお良かった、技の一つも使えなくなっていたらどうしようかと。」

「だっはっは、今さっきお前たちは積極的に捕まえなくてもいいんだがと言ったそばで無関係な一般人を巻き込むか!」

「何を言う、ここにはあの十二騎士がいるのだぞ? 私が何をしようと一般人に被害が出るなどありえない――これは信頼さ。」

 今の一発で勘を取り戻したのか、グルグルと肩を回したパスチムはようやくしっくり来ているらしい構えをとった。

「では行くぞ!」

 そう言って構えたまま、その仕上がった肉体から想像される一般的な速度で走り出したパスチム。フィリウスたちからすればその動きは体術などをほとんど学んでいないとわかる素人のそれだが、今しがた披露された一撃を十分に警戒したグラジオはまとう風に一層の魔力を込め、しかし回避する事なくパスチムの適当なフォームから放たれるパンチに自身の拳を合わせて迎え撃った。

「――!!」

 拳の均衡はほんの一瞬。パスチムの拳をしっかりと受け止めたと思われたグラジオは次の瞬間、砲弾のような速度で殴り飛ばされた。ちょうどグラジオの後方に立っていたフィリウスたちは飛来したグラジオの巨体を慌てて回避し、通りの彼方まで飛んで行ったグラジオの着地を見届けるとパスチムへと視線を戻した。

「なんだ、見かけ倒しだな。最近の若いのは足腰が弱――」

 不満そうな顔で腕をグルグル回すパスチムだったがその不満を言い終わる前に見えない何かを真正面から受け、後方に立つ妻――クレインを通り越してこれまた遥か彼方へと飛んで行った。

「一瞬の間に力を炸裂させる衝撃タイプ、力の使い方が上手いというのは本当のようだ。」

 彼方まで飛んで行ったはずのグラジオがいつの間にかフィリウスたちの近くに戻ってきてそんなことを呟いたが誰も驚く事はなく、フィリウスが「ほう!」とあごに手を当てる。

「随分あっさりと飛んで行ったなと思ったが、踏ん張ってしまうと腕がイカレるレベルだったか!」

「純粋な力比べができるのは《ジャニアリ》クラスだろうな。空気や風を挟んで緩和するか回避がおすすめだ。ただそれ以前にあの力は――」


 ズンッ!


 グラジオの言葉を遮る轟音を響かせ、飛ばされた先から跳躍してきたらしいパスチムが豪快に着地した。

「はっはっは、なんだ今のは、空気の塊か!? あれほどまでに圧縮されたモノは初めて見たぞ! なかなかの威力だ!」

 少し楽しそうに言ったパスチムに、フィリウスもまたニヤリと面白そうな顔を向けた。

「言う割には無傷だな! グラジオも言いかけたが、攻撃を受けた時もパンチの時も強化魔法の気配がしなかったっつーか変な強化魔法っつーか、そっちもなかなかにユニークな魔法を使うみたいだな!」

 フィリウスの言葉に、何故かパスチムは肩をすくめた。

「さて、どうであろうな。魔法ではあるのだろうが小難しい理屈は知らんよ。私はただ、この心と身体に満ち満ちている活力をまとっているに過ぎんのだから。」

 そう言うとパスチムはふらりと自身の妻へ近づき、その肩を抱き寄せた。

「最愛の人を愛し、愛される事に勝る人生の喜びは存在しない。愛とは個人の趣味嗜好を越えた本能の渇望――唯一無二の相手に出会い、愛する事を続けてきた者の活力が、身体に宿るエネルギーが、技術をこねくり回した頭でっかちの付け焼刃に劣る道理などありはしないのだよ。」

 その破廉恥な格好が始まりの男女に見えるほどの眩しい愛を語るパスチムだが、『好色狂』と呼ばれる事になった理由を考えるとわけがわからなくなるフィリウスたちの表情を見てクレインがほほ笑む。

「年齢もそうだけれど、相手を見つけられてもいないあなたたちは色々な点があまりに若いわ。夫婦円満の秘訣も知らないのでしょう? ああ、そう考えるとダメね……」

 パスチムに抱き寄せられ、その胸板にほほを添えていたクレインの表情が曇る。

「いい男にいい女、折角なら少し楽しもうかと思っていたけれど……深みも厚みもない薄っぺらに食指も動かなくなっちゃったわ……」

「そうだな……今日のところは目的を果たす事だけを考えるとしよう。しかしオマエも久しぶりだろう? 私のように準備運動が要るのではないか?」

「ふふふ、ついさっきアナタが言ったのよ、劣る道理はないってね。」

 そう言って不意に見つめ合った二人は流れるように口付けをかわし――その姿を消した。ここで一般的な騎士であったらどこに行ったのかと周囲に目をやっただろう。だがここに集ったのは第八系統の頂点である《オウガスト》と彼に選ばれた精鋭たち。空気の流れを読む事に長けている風の魔法の使い手である彼らの視線は上へと向いていた。

「「はっ!」」

 上空へと舞い上がったパスチムとクレインの動きは鏡合わせのような左右対称でシンクロしており、重なる掛け声と共に空を切る蹴りが繰り出されると、足先が描いた軌跡がエネルギーを持った斬撃として放たれた。

 フィリウスたちのど真ん中に落ちたそれは前後十数メートルの地面に真っすぐな亀裂を走らせたが、特に危なげなく回避した面々はすぐさま反撃に出た。


 ガキィンッ!


「は!? まじか!」

 一番槍は先ほどの救出劇で信じ難い速度を見せたドラゴン。回避と同時に攻撃直後のパスチムへ、鳥の羽を模した幅広の片手剣による超速の斬りつけを仕掛けたのだが、生身の肌を斬ったはずが金属を叩いたような音が響いた事と自身の手に広がる痺れに驚愕する。

「なるほど! そういう感じね!」

 次に動いたのはベローズ。いつの間にか女に戻っている彼女は空気の渦と共にその場で跳躍、一直線に『好色狂』へと突撃していった。その速度は弾丸の如くだったのだが、空中のクレインがパスチムの腕を掴んでベローズの方へと放り投げたのはそれよりも一瞬前で、凄まじい速度で両者が衝突する――と思われたその瞬間、空中で跳ねるように方向転換したベローズはパスチムをかわし、そのままクレインへとその拳を叩きこんだ。

「あら?」

 剣で斬りつけて金属のような音がしたのはパスチムだが先ほどのエネルギーを飛ばす攻撃はクレインも放っており、おそらくはパスチムと同じ魔法を使用して同等の防御力を持っていただろうその身体に、腕でガードされはしたがベローズの拳は確かにめり込んでいた。

「結構やるじゃない。でも――」

 本人の筋力と風の力でそのまま殴り飛ばそうとするも拳はそれ以上押し込めず、空中だというのにビクともしないクレインに少し驚くベローズの腹部へと目にも止まらぬ速さの掌底が打ち込まれ、同時に眩いエネルギーが炸裂した。

「ちょっと足りないみたいね、お嬢ちゃん。」

 ゼロ距離で爆弾が破裂したかのような一撃だったのだが、コマのようにくるくると回転しながら落ちてきたベローズはバレエダンサーのような優雅さで綺麗に着地し、何ともないようにお腹の辺りをポンポンと叩く。

「フィリウスの魔法に雰囲気が似てるわね! あの二人とんでもない力をまとっているわ!」

「だっはっは、ここにいる面子だと攻撃が通るのは俺様とオリアナとベローズだけだろう! 全員そのつもりで動けよ!」

「! じ、自分もですか!?」

 どういう系統かわからないが強力なエネルギーを放つ攻撃、ドラゴンの剣は効かないがベローズの拳は効く防御、どちらも何が何だかサッパリわかっていないオリアナだった為、自分の名前が出た事に田舎者の青年のようなすっとんきょうな声が出た。

「だっはっは、大将みたいな反応だが要するに『バスター・ゼロ』なら効くって事だ! この前ちょろっと話したことを試すいい機会だぞ!」

「は、はい!」

 オリアナはとりあえず言われた通りに『バスター・ゼロ』の準備を始めつつ、自分以外の全員が把握できているらしい相手の魔法を知る為、先輩騎士たちの戦いに注目する。

「むん、むん、むん!」

「んー、まいったわねん。」

 パスチムの力強い掛け声に対して困った反応をしているのはサルビア。先ほどベローズと衝突するはずだったパスチムはそれをかわされた後もそのまま突き進んでサルビアの方へ突撃したようで、ぼんやりと身体に光をまとった状態で型は素人だが一振りごとに空気が破裂する拳を連続で打ち込んでおり、対するサルビアは時折指を指揮者のように振りながらパスチムのパンチをかわしている。その指に動きに合わせ、空気の散る音に混じって先ほどのドラゴンの攻撃の時のような金属音が響く中、サルビアはため息をついた。

「やれやれ、ここまで無傷だと自信を無くすわん。」

 サルビアが指の動きに合わせて放っているのは第八系統の風の魔法の一つ、『エアカッター』。それに込める魔力を最小限に、だが達人的な風のコントロールと強固なイメージで切れ味をそのままにして気配を限界まで薄くした、目にも魔法的な感覚にも「見えない」空気の刃。『カマイタチ』と本人が呼んでいるそれを何発も受けているというのにパスチムは一切傷つかず、全く意に介さず攻撃を続けている。

「確かに、これはベローズみたいに隙間を見つけるのが得意じゃないと無理っぽいわねん。でも――」

 サルビアがトンッと大きく後ろに跳びながら指ではなく腕全体を振り下ろすと、一際大きな音と共にパスチムの前進が見えない刃に押されて止まる。

「無効化してるわけじゃないから、やりようはあるわよねん?」

「はっはっは、小雨の中に一粒混じった大粒の雨に少し驚いたに過ぎないぞ? 私の身体には傷一つない! 内に熱を秘めているようだがどうにも欲望に染まっているそれでは私の活力には遠く及ばん。」

「そうねん、お姉さんだけではねん。ドラゴン!」

「お、おう!」

 サルビアの呼びかけにドラゴンが答えた瞬間、二つの斬撃音がほぼ同時に響き、パスチムがまるで足をはらわれたようにふわりと宙に舞った。

「なん――どあぁっ!」

 突然の浮遊感に戸惑うのも束の間、いつの間にかそこにいたベローズの拳を受けてパスチムはきりもみ回転しながら殴り飛ばされた。

「ぬぅ、これは――」

 先ほどのクレイン同様、空中だというのに見えない力でもって勢いを殺して停止したパスチムだったが、体勢が整うほんの一瞬前に足首の辺りにサルビアの『カマイタチ』が撃ち込まれ、同時に頭部を上から下へドラゴンが斬りつける。

 結果、前方へ倒れ込んで頭を突き出すような姿勢になったパスチムの顔面に――

「『スピニィィィィングインパクト』っ!」

 ベローズの鋭い回し蹴りがめり込み、パスチムは再度飛ばされて近くの建物へ突っ込んだ。

「二人とも助かるわ! ああやって物理的に体勢が崩れるとまとったエネルギーも適度に揺らぐから隙間を狙いやすい!」

「今のん、老体には酷なくらいに蹴りで顔が歪んでたわねん……これで決着になったりしないかしらん。」

「お、それは嬉しいな。」

 ガラガラと崩れる建物を眺める三人の会話を聞いて若干首を傾げるオリアナに、ふとフィリウスが解説を入れる。

「あの夫婦の異常な防御力は本人たち曰くの活力を全身にまとってるからなんだが、金属の鎧みたいな物質的なモンじゃないしエネルギーってのは放っておくと勝手に発散して消費されていくから、どうしたって循環させる必要があるわけだ! 例えるなら川の流れだが、ベローズはその川のどこにどんな感じの石ころを置けば流れの中に穴が空くかってのを見極めるのが得意だからな! サルビアとドラゴンの攻撃でパスチムの姿勢をいい感じに崩し、流れが乱れたところでベローズが穴をあけて攻撃をねじ込むってわけだ!」

 と、簡単な事のようにフィリウスは説明したが、実際は相当難しいのではないかとオリアナは考える。特に相手の姿勢を崩す攻撃――二方向から攻撃を打ち込めば身体を回転させられるというのはわかるが、タイミングを合わせなければ効果は薄い。特にとてつもないパワーを持つ今回の相手には衝撃に対して踏ん張らせない為にも攻撃は同時で無ければほぼ意味がない。

 どちらに転ばせるかの指示もなく、タイミングを合わせる掛け声もなく、それを実行してしまう二人の騎士。恐らくは互いの動きを空気の流れから読んでいるのだろうが、その精度が凄まじいのだ。

「ちなみに、ああいう手合いに対してはあんな感じの攻め方もあるぞ!」

 三人の達人に驚きと尊敬の視線を送っていたオリアナはフィリウスの指差す方へ顔を向け、いつの間にか始まっていたグラジオとクレインの戦いを見た。

 とは言っても激しい攻防は無く二人は向かい合って立っているだけなのだが、クレインの足元はそこを中心にして一定範囲の地面が陥没していた。

「ふむ、潰れてしまわないのは流石だが、活力とやらでそれなりに頑張って対抗しているのが見て取れる。そのエネルギーも無限ではないだろう? どちらかが尽きるまでこの状況を続けても、私は構わないぞ。」

 風の魔法の使い手であればグラジオが何をしているのかは感じ取れる。グラジオが得意とする、半分以上は強固なイメージの影響であろうが、もはや鋼鉄のような硬度になっている圧縮空気でクレインを推し潰そうとしているのだ。ざっくり表現するならば巨大な鋼鉄の壁を絶え間ない暴風で上から下へ押し続けている状態――別に両腕を掲げて踏ん張っているわけではないが、立っているだけのクレインはしかし何かに抵抗するかのような表情をしていた。

「これはなかなか、ね。見てるだけで満足しちゃってる引っ込み思案なのかと思ったけれど、その気になる時もあるという事かしら?」

「悪いがそちらのものさしで語らないでもらいたいな。私には私の流儀がある。」

 何の話をしているかはさておき、ベローズたち三人の曲芸のようなコンビネーションに対してグラジオの攻撃は完全な力技。小手先の技術は圧倒的なパワーに敵わない、というような事は騎士界隈では時折話題になるテーマではあるが、グラジオのそれはまさに実践版。勿論あの状態に持って行くまでに駆け引きなどのテクニックがあったのだろうが、フィリウスの言う通りこちらも攻め方の一つである。

「ま、今回の場合何よりも大事なのはキッチリ二人を分ける事だな! 最初の攻撃を見る限り、どう考えてもこの夫婦に共同作業はさせちゃまずいからな!」

 コキコキと首を鳴らし、動けなくなっているクレインに攻撃を仕掛ける為か、フィリウスがグラジオの方へ歩き出した。


 S級犯罪者相手に――その強力な魔法に即座に対応して攻め手を導く。前回の『魔王』との一戦ではそれぞれの戦いを見る事はできなかったが、やはりすごい面々なのだとオリアナは息を飲んだ。

 強すぎてS級認定されるような相手を、もしやこのまま倒してしまうのか――そんなことを考えたオリアナだったが、それを否定するように瓦礫の中から、そして圧縮空気の下から笑い声が響いた。


「いやさすがだな! これが十二騎士選抜メンバー、そこらの騎士とは格が違うというわけだ。」

「そうねぇ。でもわたしたちはまだ円満な夫婦の間にある強い愛の力を見せてはいないのよ。」


 そう二人が言った瞬間、両者から放たれる気配――強さの圧が数倍に跳ね上がる。崩れた建物の中から出てきたパスチムは見た目に全く変化が無いのだが、相対しているベローズたちの表情には緊張が走り、空気に潰されそうに少し大変そうな顔をしていたクレインも、急にリラックスした表情を見せてグラジオを驚かせる。


「そう、妻も私も全力ではない。《ジャニアリ》と戦った時は……ふふ、普段ならそんなことは思わないのだが、力を出し切る戦いというのは楽しいモノだった。あの時の高揚にはまだまだ及ばない。」

「ああ、あれは楽しかったわね。積み重ねた愛と活力を全開にしてアナタと一緒に戦う事があんなに気持ちのいい事だったなんて、《ジャニアリ》には感謝しているのよ。」


 二人の変化を、しかし「そりゃそうだよな!」というような顔でニヤリと笑うフィリウスに、『好色狂』はググッと伸びをしながら問いかける。


「「あの楽しさをもう一度、私たちに味わわせてくれるのか?」」


 強い相手との戦いに喜びを覚える猛者のようなセリフだが、驚くべきはこの夫婦が夫婦となった時、二人はどこにでもいる二人だったという点である。




 男と女が出会い、惹かれ合い、結ばれる。恋人を経て夫婦となる男女などというモノは昔から無数に存在しており、とある二人もそんなどこにでもいるような夫婦の一つだった。

 騎士学校ではない普通の学校で出会い、卒業と共に結婚した若い夫婦はそれなりの仕事でそれなりの収入でそれなりの生活を送っており、特筆する点があるとすればその若さゆえか、所謂夫婦の営みの頻度が非常に多かった事くらいだろう。

 騎士とも犯罪者とも関わる事のない二人の転機――即ち後にS級犯罪者にまで至るキッカケはある日の夫婦の営みの中で互いに微かな「飽き」を感じた事だった。一般的な夫婦であればいわゆる倦怠期の訪れであるとし、しばらく距離を置いてみたり新しい事にチャレンジしたりして乗り越えていくだろう時期だが、二人が他の夫婦と異なったのはこの時の反応――二人はかつて感じた事のないほどの絶望を覚えたのだ。

 あれほど愛し、焦がれた相手との充実した日々にどうして「飽き」などというモノを感じるのか。これが大きくなっていったら最終的に二人は別れてしまうのではないか。そんな最悪の未来を想像してしまった二人は必死に解決策を模索した。

 よりたくましい男になればいいのか、より美しい女になればいいのか。それともいい家に住むべきなのか、お金が必要なのか。普通の夫婦である二人は他のS級犯罪者たちのように「思いつく事全てを実践してみる」、というような事はしなかったが、恐らく歴史上これほどまでに夫婦円満について語り合った夫婦はいないだろうというほどに議論を重ねた結果、キッカケが夫婦の営みであったからか、二人は単純ながらもどこか斜め上の結論に至った。


 どれほど素晴らしいモノでもそれだけではいつか必ず「飽き」が来るというもの。好物だからと言ってそればかり食べていたらどこかのタイミングで他のモノが食べたくなるのは当然である。だから最愛の相手との愛の時間を過ごす際にはその合間に別の者との時間を挟み、「やはりあの人が一番だ」という事を再認識し続けることが重要だ。

 そしてもう一つ大切なのが性欲というモノ。精神的であれ肉体的であれ、愛し合うという事とこれは切り離す事ができない。だが生物の本能として存在しているそれはそうであるがゆえに老いと共に希薄になっていく為、死がふたりを分かつまで結ばれた頃と同等の熱を愛に注げるかどうかは性欲の維持にかかっている。いわゆる「枯れた」状態にならないよう常に興味を持ち、精力をたぎらせる事が必要だ。


 これこそが夫婦円満の秘訣であるとした二人は行動を開始する。

 生涯をこの相手と添い遂げると決めている二人の中には別の者を挟んだ事でそちらに愛が移ってしまう心配は微塵もなく、それぞれに娼婦や男娼で別の異性を経験し、戻った後の愛し合いで微かに生じていた「飽き」が見事に無くなった事、そして別の者と比較することで際立つ相手の素晴らしさに感動した。

 また、性に関する情報収集にも力を入れ、それこそ娼館などで専門家たちの意見を聞き、技術を教わり、年齢別の愛し合い方などを勉強していった。

 最初の頃は二人にも多少の恥じらいがあり、思春期の子供が周囲にバレないようにコッソリとそういう知識を学ぶのと同じように人目を気にしていたのだが、最愛の者と添い遂げられない可能性に比べたら些末な事と、二人からは徐々に羞恥心というモノが消えて行った。


 月日が経ち、長年の蓄積で得た知識と経験を奴隷商や娼館などに提供するアドバイザーのような事を生業としながら、普通の夫婦であれば営みを年に一回するかどうかという年齢になっても毎日のように互いを愛し続けていた二人は、ある日周囲と自分たちとの違いに気がつく。

 それは愛や性よりも大きな枠組み――人生そのものの満足度とでも言うべきか、同年代の人々は勿論、仕事で出会う多様な者たちの話を聞いている内に自分たちの幸福度がどれだけ高いのかという事を知ったのだ。

 億万長者ではないし世界最強でもないが、最愛の者を愛し、愛され続ける事のなんと素晴らしい事か。生きる気力や生命力、活力とも表現されるその力の多さで言えばきっと世界トップクラスだろうと、その時二人は確信したのだ。


 そしてこの確信が、二人に強大な力を与える事となる。


 羞恥心はほぼ無いが騎士などの目を気にして奴隷などを楽しむ時は屋内でしていたわけだが、「屋外」や「人前」という要素は更なる活力に繋がるとしていつかはやりたいと思っており、この確信を得た二人の頭の中にはこんな考えが浮かんでいた。果たして、自分たちよりも満たされていない者たちに愛の為の行為を邪魔されるなどという事があるのだろうか、と。

 ある日、二人は初めて公の場でそれぞれが購入した奴隷を青空の下で楽しんだ。周囲から悲鳴があがり、見物人も集まる中、近くにいた騎士が注意をしに来たわけだが、戦いに関しては素人である二人にはその騎士の強さがどうこうという事はわからずとも、自分たちと比べて活力に満ちた人生を送っているかどうかは一目でわかった。

 自分たちの方が上。こんな薄っぺらい人間が自分たちを害するなんてことはあり得ない。その揺るがない認識のもと、夫婦は騎士を圧倒的な力で返り討ちにした。


 二人は騎士学校には通っていないし、武術や体術を身につけているわけではない。だが仕事の内容が悪事とまでは行かずともそちら寄りである事は確かな為、護身程度の強化魔法は覚えていた。レベルで言えば騎士学校の一年生にも劣るモノだったが、二人はそれを自分たちの活力に対するイメージによって規格外の魔法へと昇華させたのだ。

 まるで田舎者の青年のように、普通の魔法使いでは常識が邪魔して実現できないであろう極端かつ強固なイメージを、学校で学んだわけではないために理論も技術もきちんと理解しているわけではないお粗末な、だがそれゆえにイメージの影響を大きく受ける魔法にのせた結果、夫婦は他の者では再現不可能な強化魔法を手に入れたのである。


 自分たちが使っていた強化魔法が変質したという感覚はあるが、それがどういう理屈でそうなったのかはわからない。ただ自分たちが活力に満ち満ちているからこうなった事は確か。ならばこの先も互いに愛し、愛される素晴らしい人生を送る限り自分たちを阻む者は存在しない。こうして、死がふたりを分かつその時まで愛しい相手を愛しいと思い続けることを目的として人生を謳歌し、その過程で少しだけ迷惑な事をするがその程度の事すら誰にも止められないほどに化け物じみた強さを持った夫婦、『好色狂』が誕生した。


 大抵の騎士は敵にならず、二つ名がつくような大物ですら返り討ちにしていた二人だったが、そんな夫婦の前にとうとう世界最強の十二人の一人、《ジャニアリ》が現れる。出会いとしてはただの偶然だったのだが、二人は初めて自分たちの力でも倒せなさそうな相手を知った。とはいえそれ自体は驚愕するような事ではなく、何故なら二人の目には《ジャニアリ》が自分たちとはかなり違う方向ではあるが心身共に満ち足りた人生を送っている者――即ち活力に満ち満ちた者に見えていたからだ。

 騎士の中にも自分たちと同等の活力を持つ者がいる。予想はしていたが遂に遭遇したそういう相手を前に、二人は対策を考えた。

 全くその気はなかったのだが、《ジャニアリ》との一戦によってS級犯罪者となった二人はこれを利用する事にした。騎士たちから犯罪者認定されてからというもの、別にこれと言った悪事を行ってはいないが裏の世界との関わりが強くなっていた二人はS級犯罪者と呼ばれる連中についても色々な話を聞いていたわけだが、二人は彼らを極悪非道な者たちとは思っていなかった。

 自分たちと同じように、自身の幸福の為に必要な道を歩いていたらそれがたまたま社会のルールから外れていただけ。しかしだからと言って歩みを止める事なく進み続け、結果あらゆる障害をはねのける活力に満ちた心身を手に入れた者たち――それがS級犯罪者なのだと、二人は感じていたのだ。

 だからうっかりS級犯罪者になってしまったが為に好きな事をし辛くなった同じ境遇の者が他にもいるはずで、それぞれが持つ力を合わせれば平穏無事に人生を謳歌できる――そう考えた二人はそんな感じで集まっているS級犯罪者の集団がいないか探し始めた。

 S級犯罪者のみで構成されるグループと聞いて真っ先に出てくるのは『世界の悪』が率いる『紅い蛇』だが、これは自分たちが騎士に見つかろうが関係ないし、むしろそれを楽しんでいる節すらあるので対象外。

 他には『デッドエンズ』や『ディナー』と言ったモノがあったが、前者は共通の趣味のS級犯罪者が集まったモノだし、後者に至ってはただの戦闘狂集団である。同じ状態の者はいるかもしれないがそれぞれの方法で隠れているのだろうかと肩を落としていた二人の前に、ふいに一人の男が現れた。

 たくましい身体に上品な服装、立派な紳士に見えたその男は自分をS級犯罪者の『右腕』と名乗った。ある目的の為に同じS級犯罪者の仲間を集めているらしく、二人がその条件に合うのだと言う。仲間に加わってくれれば今後同等の活力を持つ騎士と遭遇する可能性を限りなくゼロにできるとも言われ、二人はその男の話に乗った。

 こうして、メンバーの一人が命名した『満開の芸術と愛を右腕に宿した人形が振るう刀』というチームの一員となった二人は、男の言った通り《ジャニアリ》レベルの騎士は勿論普通の騎士にすらほぼ見つかる事なく人生を謳歌していった。

 そして現在、二人は騎士に見つからずに済んでいたあるモノを守る為、久しぶりに騎士――少なくとも強さで言えば《ジャニアリ》と同等の力を持つ騎士との戦いに臨んでいる。




 第八系統の風の魔法の使い手は、目で見る事や音を聞く事などに加えて空気の流れを感じるというプラスアルファの情報を用いる事で他の系統の使い手に比べて「相手の動きを読む」という事に長けている者が多い。セラームクラスの騎士となればまず攻撃を当てるにはどうすればいいかという事を考えなければならないほどだ。

 ただ当たり前の事ではあるが、読めたところで対処できない攻撃というのは存在する。自身の反応速度を遥かに超えるスピード、どう動こうと当たってしまうような攻撃範囲、防ぐ事もいなす事もできない圧倒的なパワー。

 要するにこいつはその全部盛りだと、目にも止まらない速さで攻撃を仕掛けるも気合の入った掛け声と共に発せられたデタラメな衝撃波にふっ飛ばされたドラゴンはぐるぐる回る身体を空中で制しながら眼下の怪物を見下ろしていた。

「はっはっは! 一人欠けると私を転ばせる事ができないようだな!」

 ズンズンと、まるで冗談みたいに一歩ごとに地面を砕きながらかすっただけでも骨やら内臓やらを持って行かれるだろう光り輝く拳を振り回すパスチムと、それをギリギリで回避しながら『カマイタチ』を撃ち続けるサルビア。ドラゴンが飛ばされた事で一時的に止まったコンビネーションの隙をつくパスチムへ、その背後から攻撃を仕掛けるベローズだが、身体を覆っているエネルギー――活力を上手く貫けずに跳ね返される。

「そして体勢が安定していれば守りも盤石! 魔法には詳しくないがそういう事なのだろう!?」

「――!!」

 サルビアへ放つもかわされた大振りなパンチをそのまま後ろに回して振り向く勢いと共に背後のベローズへ拳を放つパスチム。素人丸出しの、三人が三人ともその軌道を完璧に予測できた下手な一撃なのだが、回避した瞬間その拳によって叩かれた空気が爆風のような広範囲の衝撃波となり、ベローズを砲弾のような速度で吹き飛ばして後方の建物へと突っ込ませた。

「――っ!」

 ベローズが心配ではあるがここで駆け寄るのはあまりに危険。背を向けて隙だらけだが攻撃しても何ら効果のないパスチムから距離をとったサルビアは「冗談じゃないわん」というような顔を上空のドラゴンに向ける。

 デタラメな強化魔法を使う者というのは実のところそれほど珍しくはない。強化魔法は全系統の中で最も簡単な魔法と言われているし、実際学校などで理論を学ばずとも何となくで使えてしまう者は結構おり、そういう者らは知識がない故にデタラメなイメージをあっさりと形にしてしまうのだ。

 だがそういうモノは大抵、自分よりも相手が強いとわずかでも感じた瞬間に瓦解する。自分は強い、自分は最強、誰にも負けないなどというイメージは実際の強さを――その者のそれまでの人生経験からは想像できない強さを前にした時に崩れ去るのだ。

 だがこの二人は違う。活力という、人生の幸福度のような曖昧な、だが二人にとっては確かに感じ取る事のできる絶対的な基準によって「自分たちの方が上」と判断し、それをイメージとして魔法を発動させている。

 研ぎ澄まされた戦闘技術でも圧倒的な筋力でも天才的な魔法技術でも、例え二人が見た事も聞いた事もない代物であったとしても、二人の判断基準である活力によって相手が格下だと判断したなら最後、二人には相手に勝つ未来しか見えない。

「お、妻も張り切っているようだな。」

 距離を取ったサルビアとドラゴンを横目に妻――クレインの様子を眺めるパスチム。ヘルムのせいで意識があるのかよくわからないが、先ほど大気圧によってクレインの動きを封じていたはずのグラジオはその鎧の一部をひしゃげさせた状態で座り込んでおり、フィリウスが一人、パスチム同様のパワーを振り回すクレインと戦っていた。

「ほんとに、凄いわね! こんなに、当たらないのは、初めてよ!」

「だっはっは! 俺様もこんなにパワフルなばあ様は初めてだ!」

 パスチムと同じように――いや、それ以上に隙だらけかつ格好だけの動きで小さな子供が両腕を振りまわすのと大差ない攻撃を繰り出すクレイン。だがその腕には一撃必殺の威力があり、ほんの少しかするだけでも致命的なダメージを負う事になる。

 型のある武術や体術ではない事がそういう技術を身につけているモノにとっては逆にやりづらく、これまでこの夫婦に返り討ちにされた騎士たちはそんな違和感のせいで本来なら避けられる素人パンチを受けてしまっていたのだろう。

 もっとも、全ての攻撃が凄まじい威力の衝撃波を放つので違和感に対応できたとしても完全回避は困難なのだが、歴代の《オウガスト》の中でも特に「攻撃を回避する」という点においてトップクラスの技術を持つフィリウスは「だっはっは」と笑いながらわずかに存在する攻撃範囲の外側へするするとその巨体を移動させて行く。

「こりゃ《ジャニアリ》とは真反対っつーか、力を使うのが上手いってのはちと表現が間違ってるな! ガキンチョの夢いっぱいのラクガキみたいに、その場その場で思いついた強そうな攻撃をそのデタラメな強化魔法で実現してるって感じだ! 技術一切無しのイメージ任せ、その歳でここまで自由な魔法を使えるとは感心するぞ! いい人生を送ってるな!」

「当然よ、わたしと夫の人生だもの!」

 言いながらクレインがフィリウスの目の前でパンッと両手を合わせるとその音と共に振動を伴ったエネルギーが放たれ、周囲を文字通りの木端微塵に粉砕した。

「おっと、今のは危なかった! ただの拍手も武器になるか!」

 その巨体からはイメージできないほど軽やかに宙に舞ったフィリウスはクレインを飛び越えて背後に回る。普通ならその絶好の機会に背中の大剣で攻撃を仕掛けるところだろうが、フィリウスがそれをする――即ち大剣を抜くのは相手を倒す時であり、その時が来たらならば死角からの攻撃や隙を突いた一撃などという小賢しいモノは一切不要。相手を倒すのに充分なエネルギーがたまったならば相手の攻撃も防御も全てを吹き飛ばして必殺の一振りが炸裂する。

 だから次の瞬間、パスチムが戦いを眺めている間を回復にあてていた『ムーンナイツ』の面々は驚愕する。

「危なかったのね? いい事を聞いた――」

 くるりとフィリウスの方へ振り向いたクレインがただの呼吸と深呼吸の中間くらいに少しだけ多く空気を吸った瞬間、フィリウスが背中の大剣を抜いて盾のように構えたのだ。


「――わっ!!」


 物陰に隠れていた子供が通りすがりの人を驚かせるような短い声だったが、それは膨大なエネルギーを伴った上に音速を越えた速さで放たれ、傍から見るとクレインが口からビームを出したように見える閃光と共にクレインの正面を太陽のような光が飲み込み、その一拍後に凄まじい轟音を響かせながら消し飛ばした。

「フィリウスっ!」

 この場にいる面々の中では一番付き合いが長いのだろうサルビアが思わず叫ぶ。そうしてしまうほどに桁違いの一撃だったが――

「おいおいおい、剣を盾にしたのなんざ何年ぶり――」

 えぐれた地面の上、不自然に残った――いや、そこでフィリウスが防いだからこそ残り、お立ち台のようになった場所の上でフィリウスが目を丸くし、『ムーンナイツ』の面々がほっとしたのも束の間、猛スピードで迫っているクレインに気づいたフィリウスは足場の悪いその場所から後ろに跳躍して安定した所に着地すると同時に、手にしていた大剣をすぐそこの地面に突き刺して両手を構えた。

「凄い! 凄いわね!」

 回避ではなく受ける事を選んだフィリウスの前に立ったクレインは、先ほどまでと同じ素人の動きだが、先ほどまでとは明らかに違うパワーとスピードで凄まじい猛攻を始めた。

 こちらからの角度のパンチはどうか、チョップやキックはどうだろうか――まるで何をしたらどんな反応をしてくれるのかを楽しむように多種多様の一撃必殺の攻撃を繰り出すクレインに対し、フィリウスはその全てを手の平で受け、その後絶妙な力の受け流しと風の力でそれらをいなしていく。

 周囲の建物は当然のように吹き飛び、フィリウスを中心とした一定範囲内の地形がみるみる内に変わっていく。

「あはは! そうそう、確か《ジャニアリ》もこれくらいしてくれていたわね! あなたはどこまで行けるのかしら!」

「楽し、そうだな! 旦那の方も俺様の仲間を圧倒して、こっちを見物、してるみたいだし! これは、チャンスだな!」

「チャンス? 次の攻撃のって事かしら!」

「ああそうだ! さっき、言ったが! お前たちの魔法は、《ジャニアリ》と真反対の、イメージ全振り! そんなお前たちと互角に渡り合ったその《ジャニアリ》ってのは、強化魔法を、キッチリ技術的に、極めた奴なんだ! 活力云々は知らないが、お前たちの魔法はお前たちのイメージを越えなくても、技術の方向で上回る事はできるって、わけだ!」

「ドレッドヘアの子の事かしら! 確かにあれはビックリだけど針の穴に糸を通すみたいに繊細過ぎるんじゃないかしら!」

「だっはっは、実はもっと凄いのがある! ま、技術っつーか原理的にって感じだがな! あいつは飲み込みが早いしもともとああいう細かいのが得意だからな! 俺様にはちと無理だ!」

「? 何の話――」


 ドスッ


 話ながら行われていた規格外の攻防が止まる。もしかすると『好色狂』はすっかり忘れていたのかもしれないが、この場にはもう一人、戦いには参加せずに準備をするように言われていた騎士がいる。

 その騎士が桃色の髪をなびかせて手にしたランスを向けた先――フィリウスに猛攻を仕掛けていたクレインの左脚に、二、三センチほどだが向こう側が見えるような穴が空いた。

「クレインッ!!!」

 その叫びと共にパスチムはクレインの、フィリウスはランスを向けた騎士――オリアナのもとへと移動した。

「だっはっは! よくやったぞ! あんな適当なアドバイスで出来るとはな!」

「――っ……はぁ……い、いえ……」

 参戦していなかったというのに荒い呼吸で額に汗を浮かべるオリアナは、先日行われた『魔王』との一戦の後、フィリウスから言われた事を思い出す。



「もしかすると『バスター・ゼロ』はお前に向かないのかもしれないな!」

「えぇ!?」

「だっはっは、その驚き方は大将そっくりだな! いや、たぶん思ってる意味とは違うぞ! 使い方の問題だ!」

「つ、使い方ですか……」

「オズマンドの幹部クラスを倒した一撃も、この前の『魔王』との一戦で魔獣とかいうのにされたベローズたちを足止めしたのも、別に間違った使い方ってわけじゃないがオリアナとは微妙に相性が悪い! そもそもアレは一撃で相手を倒す為に生み出した魔法だからな! 加減一切無しの魔力全開放出が基本だ! 多少アレンジはあっても結局のところ俺様が教えた使い方ってのはエネルギーをドバッとぶつける事だけだ! 対してオリアナはそういう一撃必殺みたいな技で戦うタイプじゃないだろ!」

「そう……ですね……フィリウス――に比べると地味ですが、相手の動きや魔法に合わせた風を使って隙を突くタイプと言いますか……」

「だっはっは! 地味さ派手さは関係ないぞ! 勝たなきゃいけない奴に勝てればいい! とにかく『バスター・ゼロ』っつー魔法を俺様みたいに必殺技にしなくてもいいって話だ!」

「――! 必殺技に……しなくてもいい……」

「あの独特なエネルギーの感触は掴んだだろ!? あとはお前の得意な風の精密制御にそいつを流し込むだけだ!」



 未だに、理屈はわかっても原理がさっぱりわからない絶大なエネルギー。熱なり電気なり、あらゆるエネルギーになり得る――いや、それらがそうなる前の始まりの姿。それ故に如何なる力にも干渉し、ただ純粋に込められた概念を炸裂させる力の塊。フィリウスはあっさり使っているが、オリアナは引き出すだけでも凄まじい集中を必要とするその力の別の使い方。

 わかっていて言ったのかテキトーな言葉が出ただけなのかわからないが、「流し込む」という表現がオリアナの中で非常にしっくり来て――彼女は魔法で生み出した風に『バスター・ゼロ』のエネルギーを加える事を練習し始めたのだ。



「風系の攻撃魔法の初歩の初歩、『ウィンドランス』にエネルギーを込めたな!? 意味わからん速度な上にあいつの活力の鎧を易々と貫通したぞ! 『バスター・ゼロ』は原初に近いパワーだからそこから枝が伸びて生じたモン全てに通用するだろうって《ジャニアリ》が言ってたがやっぱりその通りだったみたいだな!」

「全開で……使っていた時よりはマシですが……まだ結構負荷が来ます……まだまだ練習が必要ですね……」

「だっはっは! そんな折角の一発を絶好のチャンスで撃ったってのに横っ腹なり脳天なりを狙わずに脚を貫くとは、優しいな!」

「――! す、すみません、S級犯罪者相手にこんな……」

「いやいいぞ! お前の魔法はお前のやりたいように使え! さっきも言ったが、あの二人に関しちゃ俺様はそれほど思うところがない! 何が何でも殺さなきゃいけない最悪の犯罪者って部類じゃないからな! ただ、二人同時に動かれたらまずい夫婦をそういう状態にしちまった! 《ジャニアリ》と互角にやり合った本領はここからってわけだな!」

 緊張と楽しさが混ざったような笑みを浮かべたフィリウスの言葉に、オリアナはクレインの肩を抱くパスチムへと視線を向けた。

「油断しちゃったわ……十二騎士が連れてる精鋭だもの、これくらいのビックリはあるわよね。」

「しばらくはオマエの美脚に頬を寄せられないとは残念だが、お預けもまたスパイスになろう。」

 てっきり「よくも妻を!」という感じに怒りをあらわにするかと思われたが、パスチムもクレインもやれやれという感じに寄り添っている。

「普段であれば活力で劣る者に負ける道理はないのだが……やはり十二騎士というわけか。技術で上回る……なるほどな。」

「あら、弱気じゃないの。アナタらしくないわね。」

「オマエにこんな傷をつけてしまったのだ、戒めは必要だとも。だが当然、私たちが負ける事はない。ここからはその理由を――夫婦の全力を惜しむ事はないというだけだ。」

「ふふふ、どうやら《ジャニアリ》の時の高揚をまた楽しめそうね。」

 パスチムの肩を借りて立ち上がったクレインだったが、二人の身体を覆っている光がクレインの脚に収束してオリアナが空けた穴を塞ぐと、クレインは何事もなかったかのように両脚で立った。

「ああ、驚く事はない。再生させる魔法などというモノは私も妻も使えん。その場しのぎに過ぎない応急処置だが……ここからしばらくの全開を出すには充分だろう。」

「もし死なずに済んだなら是非参考にしてちょうだい。わたしと夫の活力――積み重ねた愛の力の全てを。」

 まるでこれからダンスを披露するかのように手を取り合って一礼したパスチムとクレイン――S級犯罪者『好色狂』は、その身を覆う光を更に後光のように輝かせて跳躍した。



『ったく、ようやくか。クライマックスまで力を使わない陳腐な勇者演劇じゃねぇんだぞ。』

 太陽のような光が降り注ぎ、周囲の影が濃さを増す中、戦闘が始まってから即座にいなくなったこの街の住人達の代わりに唯一残っている観客である『パペッティア』はフィリウスたちが食べていた料理をもりもり食べながら輝く『好色狂』を見上げる。

『引っ張った上に負けたとしても、せめて《オウガスト》の本気を引き出してくれたらあとはオレが片付けといてやるぞ、淫乱夫婦。』

『好色狂』ことアカハ夫婦のパスチムとクレインですが、書くほどに(個人的な感覚では)とてもいい夫婦になっていきました。

ラブラブな二人には是非恋愛マスターやロイドくんたちと出会ってみて欲しいですね。

ちなみにインドに詳しい方がいましたら名前の由来がわかるかもしれません。


行き当たりばったりでフィリウスの弟子となってもらったオリアナさんですが、段々と強くなっていくところが面白いですね。

遠い未来、次の《オウガスト》を巡ってトーナメントロイドくんと戦ったりするかもしれませんね。


次で『パペッティア』との戦闘に入る予定ですが……夫婦がどうなるかなんだかわからなくなってきました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ