エピローグ
三年が、過ぎ宇都宮と俺は同じ家に住むようになっていた。半年後には子供が生まれる。
俺は今でもあの男が自分の想像の産物でないかと疑うことがある。そして、甲龍も…。
だが、失われた左手首を見れば、嫌でもそれが現実だったことが実感される。
この世界に甲龍が残した爪痕はあまりにも深く、大きい。そして、俺を含めた多くの人の中にも…。
ふと目を山並みに向けると、何かが飛んでいた。
心臓に杭を打ち込まれたような衝撃を感じて、目を凝らす。
「あれは…」
甲龍であった。
凶暴な方の甲龍ではない。初めて見た甲龍と同じタイプの甲龍である。人を襲うことのない甲龍。
その甲龍は傷ついていた。体のあちこちに傷を負い、羽の動きもどこかおかしい。
俺はその姿を捉えた視界が曇っていくのを止めることができなかった。それでも目の中に溜まった涙は零れ落ちることはない。甲龍に焦点を合わすのを妨げるかのように、目の表面に波打っている。
すごく懐かしい人に出会ったような感情と、全身を締め付けるような不安が混在していた。
甲龍の姿が見えなくなった時、俺はその甲龍を狩るために再び歩き出していた。
人類を窮地に追い込む可能性は、摘まなければならない。
それが人間のエゴと言われようとも…。




