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始ノ始ヲ語ル 星ノ譚 3

 ごく、ごく、ごく。


「……っ……ふぅ……」

 ……泉の水を調べて気づいたことがある。

 一つ。この泉は乾きだけでなく体力も回復する。

 二つ。傷を治す。三角頭にやられた傷が跡形もなくなっていた。

 三つ。定期的に妖精が立ち寄り、この泉を活用している。

 ということだ。まるでRPGのセーブポイントだ。現実離れにもほどがある。

 次に妖精についても分かったことがある。

 彼らは複数いる。そして僕に敵意を持っているわけではない。そしてもう一つ。

 おそらく、言葉が通じる。

 言葉が通じるというか、なんとなくこちらの意思が伝わる、といった感じだ。

 例えば、今はアンニュイなんだと僕が思っていれば妖精は気を利かせているのかなんなのかあまり近付かないし、僕がロンリーでサミシーと思っていれば妖精が近付いてくる。

 そんな具合だ。

 なんにせよ、意思が通じるものがあるのは嬉しい。

 次の転移まで孤独なのは本当なのだから。

 さて、これからどうしようか。

 

 ぴきーぴきーぴきー!


 ?

 妖精が騒ぎ出した。一斉に森の奥へと逃げていく。

「お、おい……どうしだんだ」

 聞いても答えずに逃げていく。

 その刹那、記憶に新しい、厭な音が聞こえた。

 足音。

 多足生物の足音。

 ソレは間違いなく、


 三角頭の足音だった。

 

 樹木の隙間からヤツらが顔を出す。その数は先ほどの比ではない。数えることも出来ないくらいの大群。

 ガサガサガサばりガサがりガサガサガサガサガサがり。

 足音に混じって咀嚼音が聞こえる。

(奴ら森の木を食ってやがる)

 とてつもない量の三角頭が、森の木を食い続けている。その速さは尋常ではない。

 泉にも三角頭の群れが入ってきた。一瞬で水が干上がる。

 ヤツらどんな構造してるんだ……。

 常識を無視するにもほどがあるぞ。

 呆けていると、三角頭がこちらにも目をつけた。

 ヤバイ!

 妖精が逃げたのと同じ方向に走り出す。

 くそっ!足場が悪い……。

 転びそうになりながら必死に走る。奴らのが早い。

 しばらく走る。どんどん距離が詰まる。

 森中からギチギチ音が聞こえてくる。

 まずい。このままでは……。

 ガッ!

「うわっ」

 バシャァ!

 急な段差があり、つまづいてしまった。段差の先は例の川だった。

 口の中に塩水が入る。だがそんなことに構ってはいられない。

「くそっ!」

 あわてて体勢を立て直し、虫のほうを向く。戦う覚悟で向き直る。

 間違いなく飛び掛ってくる。そう思った。しかし……

「っ……?」

 虫は来なかった。いなくなった訳ではない。川の向こう岸で大量の虫が口惜しそうに蠢いている。

 どういうことだ?この川を越えられないのか。

 取りあえずここは安全なのかもしれない。そう思い、奴らの動きに注意しながら撤退を待つ。

 三角頭はしばらくたった後、一匹また一匹と森の中へ消えていった。


「ふう……苦難は去ったか……?」

 安堵する。なんだか知らないがこの川のおかげで助かったようだ。

 これからどうしようかと思案していると、あの妖精たちが出てきた。

 妖精はじーっとこっちを見ている。

「お前たちはあいつらから逃げているのか」

 取りあえず語りかける。

「枯れちまったよ……あの泉」

 妖精は見ている。

「お前たちは逃げるだけか」

 妖精は見ている。聞き入っているようにも見える。

「……戦わないと、駄目じゃないのか」

 ……そうだ。

 敗者は滅ぶ。これは自然界の法則。

 このままではこれらは滅ぶだろう。

 恐らく、森も。

「それで、いいのか」

 妖精を見つめる。

 妖精は見ていた。


 イヤ ダ


 確かに、答えた。


「ならどうする。戦うのか」


 ソレハ デキナイ


「滅ぶのか」


 チガウ


「戦わないと滅ぶぞ」


 ソウダ


 ダカラ タスケテホシイ


「僕にか」


 ソウダ


 オマエ ヤツラ タオス 


 ソレデキル オマエダケ


 ワレラハ カテヌ


「何故だ。何故僕にはできる」


 オマエ ヤツラ シリゾケタ


 タノム


「……」


 タノム コノママデハ ワレラダケデナク モリモ ホカノイキモノモ……


「……」


 タノム……


「…………。いいだろう。君たちには借りがある」

「ただ……条件がある」


 ノゾミ……


「オマエ、はやめてくれ」


 妖精が笑った気がした。

 

 ……アリガトウ スグル


「……上出来だ」


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