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始ノ始ヲ語ル 星ノ譚 2


 再び、水場を求めてさまよう。

 歩きながらさっきの出来事を反芻する。

 あの虫は何だったのだろうか。あんな虫は見たことがない。

 何故攻撃を仕掛けてきたのか。何故突然攻撃をやめたのか。

 それよりもあの三角頭に付けられた傷が気になる。

 毒があるのかもしれないというのもあるが、それより傷口が乾いたミイラのようにぼろぼろになっているというのが怖い。

 水分が完全になくなっているのだ。

 跡が残るだろうか。

 しかし、それらはこの時代が未知だからで片付くので、考えるのをやめることにした。

 もうあの忌まわしい三角頭を目にすることもないだろう。ようは砂漠に行かなければいいのだ。

「さて、考えもまとまったし気を取り直しますか」


 ごくり、ごくり、ごく。


「っはぁ……」

 あれから三時間。日が傾き始めていた。

 のどの渇きに耐えられずペットボトルのお茶を飲んだのだが……飲むのをやめるのにとても精神力を使う。

 それほどまでに乾きは深刻だった。

 おかしい。あの傷のせいだろうか。

「はぁ……いい加減……疲れてきた……」

 ため息を吐き、深呼吸をする。……特に意味はないが。

 息を吐く。止める。耳を澄ます。

「……?」

 もう一度、神経を研ぎ澄まし耳を澄ます。

「……まさか」

 走り出す。

 微かにだが、水のせせらぎが聞こえたのだ。

 段々と大きくなる音。

 道が、開けた。

「……ビンゴ」

 そこには川があった。小さいが、確かに川だ。

 近づいて屈む。

 水をすくう。

 口に含む。

 ……吐く。

「ぐぼフォ……ッ……がはッ……」

 咳き込む咳き込む。

 なんじゃこりゃ!

「海水……か……?」

 塩水だった。しかも結構濃い。

「畜生……ついてないな……」

 訳が分からない。

 何で塩水なのか。

 飲めないじゃないか。嫌がらせか?

 シンゴめ……。

 居もしない無罪の友に八つ当たりしつつあたりを見渡すと、妙な生物がこちらを見ているのに気づいた。

 どうやら虫ではない。

 初めて虫ではない生き物を見たぞ。

 目が合う。

 ……何だコイツは。

 形容に困った。なんというか……なんというのだ?

 絵描き歌に「かわいいコックさん」というものがある。体の形はそのコックさんのような感じだ。

 しかし違う所は……コック帽ではなくパーティに使う三角帽のようなものをかぶり、顔は○に点を二つつけただけ。透明な羽が生えている。

 何なんだこの童謡チックな生き物は……。

 妖精といえばそう見えないこともないが……これは現実だぞ。

 む……脳が存在の容認を拒否したがってる。

 僕は狂ってないぞ。

 しばらく妖精(仮)と睨み合っていると、こちらを向いたまま妖精が近付き、後ろを向き飛んでいった。

 ……と思ったら振り返った。

 ……また行ってしまった。

 ……振り返ったぞ。

(ついて来いってか?)

 いろいろなことに半信半疑で妖精についていくことにした。


              *

 妖精についていくこと五分。開けた場所にたどり着いた。

「これは……」

 泉があった。

 なんとも……神秘的な泉だ。

 頭上には僅かな月明かり。それさえも樹に遮られ途中で闇へと変わる。この泉の周りに生えるヒカリゴケはその月明かりよりも明るく、どこか淡かった。泉は深く、水は澄み切っていて蒼く、そこに苔の光が入り宝石のように輝いていた。樹上の玄菟、森間の宵闇、泉の淡輝。三様の光のコントラストが、不可思議な雰囲気を醸し出していた。

 この、雰囲気はなんだろう。

 素晴らしい光景。

 静かなる情景。

 そのはずなのに、

 こういうものを見ると、

 何故、

 こんなにも、

 死にたくなるのだろうか。

 いつまでも其処に在りたいという気持ち。

 ここで一生を終えたいという感覚。

 二つは相反するはずなのに、

 確固として存在する。

 矛盾なのか。

 必然なのか。

 分からないな。

 ……水をすくう。

 口に含み、嚥下する。

 渇きは、癒された。

 唐突に、眠くなって、

 意識が、落ちました。


              *

 自然に目が覚めた。

 上半身を起こす。

 ……あのまま眠ってしまったのか。風邪を引かないといいのだが。

 よくよく考えてみると、この森は気温や湿度の感覚があまりない。寒いわけではなく、暑いわけでもない。湿っていないし、乾いているわけでもない。

 ……いや、湿っている。どうもいけない。気にしていないと感覚が鈍る。

 辺りを見回す。と、例の妖精と目が合った。

 ……何を考えているのか良く分からん目だ。

「なぁ……おまえは僕を案内してくれたのか?」

 妖精は見ている。

「おまえは……なんなんだ?」

 妖精は見ている。

「僕の……味方か?」

 妖精は見ている。

「僕の名前は優だ」

 妖精は見ている。

 ……僕は一人になったときは、極力何かを喋っていようと心がけている。

 精神の保養になるし、言語トレーニングにもなるからだ。今はナチュラルで日本語だ。

 決して普段から独り言を喋っているアブない奴ではない。

 決して。

「まあ……いいさ」

 悪い奴ではないだろう。

 妖精は見ている。そして……


 テキ デハ ナイ


「……!?」

 妖精は去っていった。

「今のは……?」

 直接頭に語りかけるような……声が。

「そんな訳はないだろう」

 そんな……ことはな。

このハナシ一番のゴロゴロポイント。

キャッ!

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