赤いさくらんぼ
赤い実はじけた。
から、
赤い実→さくらんぼ=赤いさくらんぼ
というタイトルになりました。
「そ、そうだったんだあ・・・。へえー・・、ほおー・・。このみんがセノウエ君をねえ・・・。」
「ば、バカ、なに大声で言ってんのよ!」
「あ、ごめん。」
「~~~~~っ!」
「でも、応援、するよ。」
「・・・。ありがと?」
「うへへ。」
私は、晴香に自分がずっと瀬上良を好きだったことを告白した。
さすがに、瀬上良が晴香を好きだったことは言えないが。
「来い、濃い、故意、鯉、恋。」
「・・な~にやってんだ?」
「うひゃあっ!わわ、瀬上良・・。」
「なんでさ、いっつもフルネーム呼ぶの?俺だけ。」
「い、いや、それは・・。どうでもいいでしょ!?」
「このみん、その悲鳴はどうかと思うよ。」
「晴香も冷静なつっこみいらないから!」
瀬上良の後ろには。
当然のごとく高野浩二。
「晴香、かえろーぜ。」
「タカノくん。ありがと。じゃねー。」
「は?・・まって、晴香!まちなさいこの、ちょ、えええええ。」
お。おいて、いかれた・・・?
ため息をつく、瀬上良。
「はあ。しょうがねえな。帰るか。」
えええええええええええええええええええええ。
も、もっと、おしゃれしとけばよかった・・。
いや、それより。
はーーーーるーーーーかーーーーーー!!!!
「ねえ、あの、・・大丈夫、なの?」
「んー?ああ、野々宮?」
「う。・・ん。」
瀬上良は、あの失恋を。
まだ、引きずっているのかと。
また、くるしんでいるのかと。
不安。
心配。
・・・嫉妬。
自分がいや。まだ、晴香を思っているんだと思うと、醜くなる自分。
「いや?もーぜんぜん。あいつら、全然気使わないからさ。慣れたし、別にどうとも。」
本当?
絶対?
うそじゃ、ないの?
・・うそ、だ。ありえない。吹っ切れてはいても、ぜったいこんな、すぐに治ったりしない。
心の傷は、癒えない。
そう、私みたいに。
「うーん、ここまでなんにもないとは思ってなかったけど・・。お前のおかげかもな。ありがとさん。」
ああもう、いやだ。
なんで、こんな一言で。
こうもうれしくなっちゃうんだろう・・。
「べつに、なんにも、してないし。」
「はは、お前がそれを言う?」
「悪かったね、べーーだ。」
「べ、べーって、おま、子供かよ!」
くっくっ、と笑う瀬上良。
ぶすっとしてる、私。
ああ、なんて不似合な。
でも、まるで夢みたい。
この一瞬があれば、どんなにつらいことがあっても。
永遠に、いきていける。
だから、さ。
「今日、塾なんだ。」
「へえ。大変だな。」
「うん。」
だから、ね。今日だけだから。
「ゆっくり歩いていい?帰りたくない、から。」
欲張っても、いいかな。
ちょっとだけ、瀬上良を独り占めしていたい。
「おー。いい、いい。」
もう少し、隣にいたい。
「ありがと。」
あと少ししたら、クラスが変わって。
好きな人も、変わって。
関係も、変わる。
その前に。
「・・瀬上良、ありがとう。」
伝えてみたい。
いっちゃう?
このみん、いっちゃうの?
の巻でした。