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ぼく の かんがえた さいきょう の PC  作者: ぽむ
第一章 テクニカルライター
11/17

011 サプライズ

2話同時更新

 朝方記事をアップロードした後も、正月だというのにひたすら仕事をする。予告されたサプライズに関する憶測も含めた記事の他に、今までのinfinityに関する記事も洗い直す。そんな事を繰り返していたらいつの間に夕方になっていた。


 俺が仕事に一旦ケリを付け、身体を伸ばすと仕事が終る事を察していたのかリルたんがお茶を煎れてくれる。一言お礼を言って、俺好みの熱さのお茶を啜る。


 それにしてもinfinity買って良かった。リルたんはほんとに良くできた子だ。気のきく理想の女の子がしっかり陰で支えてくれる安心感。まったりとした空間が仕事の疲れをバッチリ癒してくれる事のありがたさ。うん最高だね。


 そんな幸福感を噛みしめつつ、infinity放送でDMB教育1にチャンネルを合わせる。このチャンネルではほぼ一日掛けて世界各地の新年祭の様子を時差に合わせて西へ西へと移動しながら伝えていくと言う番組をやっていた。仕事の合間の息抜きでちょくちょく見ていたが、各国毎に違う新年祭の様子というのは結構面白い。それぞれの国で、何故そういった形式になったか等の宗教観の解説も中々興味深い物があった。


 そして先程、日本時間の17時にロサンゼルスが新年を迎え、今はその様子を少し上空から眺めている形でカメラが固定されている。去年までと大きく違うのは沢山の人が空を飛び、空で乾杯をしている所だろうか。俺の今の状況はロサンゼルス上空でコタツに入りながら茶をすすっている日本人と言う所だろうか。もちろん実際の俺は自室に居るままである。


「そろそろだな……」


 手元の腕時計で時間を確認すると17時58分を回った所だ。番組では締めの言葉が発せられているので、じきに番組も終了するだろう。そしてその後は予告されたサプライズの発表が在るはずだ。


 そして18時、番組が終了し、DMBのロゴが空中に回転しながら登場する。そして彼、神崎博人が現れた。


「みなさん、明けましておめでとうございます。まだ一部の国が新年を迎えていませんが、それについてはご容赦いただきたい。


 さて、おかげさまで『infinity』の売れ行きは好調で僅か一ヶ月という短い期間にその所有率は7割を超え、8割に届こうとしています。国によっては9割を超える国もあり大変ありがたい事だと思っています。


 ただ、infinityは各国の法律の関係上、未だ十全に機能を発揮できていません。またinfinityの登場により市場を奪われ、大変な苦境に立たされている方達も大勢いる状況です。むしろ影響を受けていない方は恐らく全体の5%にも満たないでしょう。結局の所infinityで便利に成ったようでも逆に苦しめている状況とも言えます。


 こうなった原因は私の求める人種が文化を創るために必要な『知識欲』と『生産欲』のある人間だったと言う事が大きすぎたと言えます。とはいえ文化とは、それらを行えない人が豊かになった生活の余裕から、娯楽として購入できてこその物です。


 よって私は公約通り、今回の件で被害を被った方達に補填を行わねば成りません。しかしながら私の行える金銭的補填は今まで儲けた金額を全て当てても、一人頭数万円程にしか成りません。補填を受ける必要がある方々が5%未満であれば、儲けをそれに費やせば何とかなったのでしょうが、今回の場合は逆ですのでそれも適いません。


 それに時間的余裕もあまりありません。仕事が無くなって一ヶ月未満である今なら、まだ次の給料を支払い可能な会社も多いでしょう。しかしこのままでは時間がたてば立つ程、苦しい状況になるのは目に見えています。


 そこで、私はこれらの問題を解決するため、幾つかの方策を採る事にしました。


 まず第一に、たった今太平洋上の公海に少し広めの土地を作成いたしました。そしてこれをもって新国家樹立を宣言いたします。新国家の名称はかつてこの地にあったというおとぎ話にあやかりアトランティスとします。


 第二に、infinityが単なる情報端末に成り下がる旧科学特区を設定します。


 第三に、旧科学特区の一つとして、開拓星フロンティアを提供します。


 第四、最期に、infinityにポイント制を導入します」


 新国家樹立? 旧科学特区? 開拓星? サプライズってこれの事か。


「順に説明していきます。新国家樹立の目的は簡単です。先程申しましたようにinfinityは各国の法的制限により十全に機能を発揮できません。しかし、現在苦境に立たされている方達を思えば悠長に法整備を待っていられる程の時間もありません。従って、十全に機能を発揮できる場所として新しく国家を作成しました。


 これによって有料ではありますが、現代医療で治せないと言われた各種難病や、身体欠損などの再生治療も可能になります。是非治療目的に我が国をご利用下さい。


 次に旧科学特区の説明です。旧科学特区とは幾つかの国家においてinfinityを使用できない状態だったのですが、この地域がそれに該当します。

 そして今現在、それらの国に国民は一人もいません」


 ………え? 国民が一人もいないってどういう事だ?


「国民が一人もいないと言っても、私が虐殺したとかそう言う物騒なものではなく、国家その物を物々交換によって買い取りを行いました」


 買い取った? どういう事だ?


「買い取りの具体的な対価は、コピーした太陽系を支払いました。コピーした内容は人間以外の全ての状態をそっくりそのままです。従って、移り住んだ彼らからすれば、アメリカやヨーロッパなどの国や資産を何の労力もなく手に入れる事が出来る上に、地下資源なども今まで以上に自由に使えるわけです。


 該当国を支配する権力者は当然今回の処置を知っているわけですが、国民からするといつの間に星空の配置が換わり、アメリカやヨーロッパ等の仮想敵国の人間が一斉に消えた様にしか見えないでしょう。


 彼らの何かを支配したいと言う欲求は相手が居なくなってしまった関係上、他国相手には満たされなくなりますが、彼ら上層部は『神が我々のために敵国の人間を全て消滅させたのだ!』と言う形で進めるようです。このお題目の所為で今後更に身分差が進むと予想されますが、そう言う殺伐とした道もまぁ有りでしょう。


 此方からすれば核戦争の切っ掛けとなる好戦国を何十億光年も離れた場所に隔離し、安全を確保したわけです。彼方としても労せず土地、資源、技術が手にはいり、私のような手に負えない存在が居なくなるわけで所謂win-winと言う奴ですね。まあコピーした地球にまた人間が溢れ、多数の国家が生まれ対立すれば、向こうで核戦争が起きる可能性がないとは言えませんけど」


 神と同じ力を持っているとは言っていたが…… 太陽系を丸ごとコピーして渡すとかどんだけだよ。


「それによって、現在ユーラシア大陸の多く地域を我が国アトランティスが買い上げた形になるのですが、この土地を旧科学特区として売りに出します。


 この土地では、infinityは低レベル情報端末としてしか働かないようにしています。従ってここでは今までと同じように生産や流通が必要です。簡単に言うとinfinityで職を失った方も、ここで暮らすのであれば今までと同じ様に職に就ける可能性があるわけです。


 土地の購入や移住に関しても、無料同然どころか移住後生活が安定するまでは、物質的な面で不自由の無いようある程度の無償支援をする予定です。最低で半年、最長で10年と言った所でしょうか。もちろん移住者の審査は致します。対象となるのはinfinityが有効である場合、今後儲けを見込む事が難しい会社とそれに関わる社員となります。審査が通れば会社や家、工場等、丸ごと旧科学特区へ瞬間移動も可能です。交通機関や上下水道などのインフラ設備も支援いたします。


 ただ、これでも生活が難しいと言う職種の方もいらっしゃるかと思います。そんな方には更に新しい職場として開拓惑星フロンティアでの仕事はどうでしょうか?


 此方も旧科学特区と同じように、infinityの幾つかの機能を封印する形になります。また、開拓星には人類に相当する知的生命体こそ存在していませんが『危険な動物』などが多数おり、開拓を進めるにはある程度の武器が必要になるでしょう。


 武器産業に携わる方々は此方に進出する事をお薦めします。


 さて、単純に資源や移住用の開拓星というならわざわざ何億光年も離れた場所へゲートを開く必要もないのですが、実はこの開拓星には地球にはない特殊な物があります。


 それは超能力や魔法と言われる物がごく一般的に存在している事です」


 超能力に魔法だと? そう言えば説明会でもテレパシーとか何とかいってたな。


「先程言っていた、『危険な動物』というのがそれらを駆使する動物となります。


 現在地球、というか人類はそれなりに科学が発展していますが、超能力や魔法といった精神が現実世界に影響を及ぼす霊学に付いては実績がほぼ存在しない状態です。


 これは以前の説明会でも述べましたが、霊学を極めればinfinityがなくとも、空を飛ぶ事も銃弾を生身で止める事だって可能になります。もちろんそうなればinfinityの使用を制限されている旧科学特区内であっても自力で空を飛ぶ事だって可能です。


 今回の開拓星の開放は、以前お約束したそれらを学ぶための場を用意すると言った約束を実現するものです。


 開拓星フロンティアには、霊学を発展させるために必要な実験材料を手に入れやすい環境となっています。ここは地球とは違い霊魂の影響を大きく受ける生命や物質が進化の過程で多数生き残った生態系を持つ星です。そのため参考にしやすい動植物や物質が数多く存在し、それらを観測する事で科学的思考による実験や実証も工夫次第で可能となります。もっとも元となるトリガーが精神である以上、生身で常に一定の筋力を発生させるのが難しいのと同様、個人が霊的エネルギーを一定レベルに保つ事は難しく、最初は基準となる物差しを作るのにも苦労すると思います」


 超能力とか魔法かよ…… もしかして開拓星って剣と魔法のファンタジー世界なのか? あ、いや知的生命体が居ないって話だから魔物だけが居る世界って事か。


「最期にポイント制についてです。これは基本的に、お金で購入できない各種特典をポイントの許す限り割り当てる事が出来る制度です。


 ポイントでのみで購入可能な物として『若さ』や『死亡時復活』等があります。


 『若さ』とはそのままです。テロメア修復などで細胞の若さを復活させ、容姿もそれに見合った様に修復します。ポイントを払い続ける事が出来るなら、10代のみずみずしい身体で不老に成る事も可能です。10ポイントで一ヶ月若返る事が出来ます。ただ、一度に若返り過ぎるとリハビリが必要になるので注意が必要です。


 『死亡時復活』、これは主に開拓民が使う事になると思いますが、万が一自分が事故や戦闘などで死亡する際、指定された場所で肉体を修復、魂を結びつけ復活できる権利です。先程の『若さ』と一緒に適用すればポイントの続く限り不老不死に成る事も可能です。これは1回の復活につき、1000ポイント必要です。


 その他には各種肉体改造も行え、肉体面であるなら超人と呼べるような身体に成る事も可能です。他にもとっておきの特典がありますが、その説明は後回しにするとして、まずは具体的なポイントの仕組みについて解説します。


 特典を得るためのポイントは2つの要素によって成り立ちます。一つは個人の努力によってなる個人ポイント、もう一つは他人からの評価によって成り立つ評価ポイントです。


 個人ポイントとは、どれだけ知識を身につけたか、どれだけ身体を鍛えたか、そして開拓星などでどれだけ開拓に従事したか等により加算されます。これは開拓従事ポイントを除き、随時計測され、知識、体術などが総合的に判断されてポイントが決定されます。具体的にはノーベル物理学賞ぐらいの知識で、約1万ポイント程になります。若さに換算すると、80歳程若返る事が出来るわけです。他にも歴史上の偉人、関羽レベルの武術でならやはり1万ポイント程になります。若返った分は更に研究研鑽を続けて欲しいものです。このポイントは余程サボらない限りあまり減りませんので、特典が解除されたくない機能に割り振ると良いでしょう。


 次に評価ポイントです。これは『この人は良い人だ』とか『この人は信用できる』と思われた人数に比例して増えます。が、『こいつは悪い奴だ』『信用ならん』と思われると逆にマイナスされます。評価ポイントは一人頭、マイナス1からプラス1までの実数がその人を知る人数分合算されます。自分を知る人間が一億人居れば最大一億ポイント稼げるわけです。有名人であれば比較的楽に評価ポイントを稼ぐ事も可能ですが、逆に信用を失うとあっという間にマイナスに落ち込む可能性があります。また、例え本当は善人であっても、有名になる事で嫉妬を買ったり、悪意によって良くない風評を流される事でマイナスになる可能性もあります。


 ただ、そう言った悪意によりポイントが減った場合に限り、申請があり妥当と判断されれば過去記録よりその真実を突き止め、犯人を白日の下に晒す事も可能です。逆に仕掛けた方は回復不可能な程の悪評を受ける事になりますので注意が必要です。


 そんな訳で評価ポイントはマイナスに落ち込む事もあります。この場合、このポイントで付けた特典が全て剝がされるだけでなく、マイナス分の1割が個人ポイントより引かれ、同様の事が起ります。そして個人ポイントも0に成ってしまうとinfinityの機能の殆どが使えなくなります。悪い事はしない方が身のためと言う事です。


 ただ誤解を受けやすい人や、人の評価など気にしたくないと言う方は、評価ポイントその物を無効に出来ます。方法は二つ。評価ポイントでのポイント交換を一度も行った事がないのであれば無償で。そうでないなら個人ポイントを2000支払う事で無効化できます。まぁ自分が最初から悪人と思っている人はこれを選ぶのでしょうが、そうでない場合でも、己の正義を貫く為、それが例え大衆のための行動であっても、大衆からの支持を得られないなんて事はよくある事です。そういった事に身に覚えがある方は一考の価値があると思います。考え無しが産み出す悪意無き悪評なんて物はそこら中にありますからね。


 尚、肉体強化の一部はお金でも買えますので、お金に余裕があるならお金で払った方が良いでしょう。まぁそれなりに高いですが……


 開拓星には命の危険が存在しますが、同時に様々なチャンスの眠る土地でもあります。また開拓に従事すれば地球にいるだけでは稼げない程のポイントを自分で稼ぐ事も可能に成ります。それは自らに眠る可能性の発見にも繋がります。


 また、競合や取り合いを避ける為に開拓星は各国に一つづつ、同じ物をコピーして用意しました。取りあえずまともな武器のない日本は武器産業を開拓星に作った方が良いかも知れません」


 若返りに生き返りだと? しかも超人化とか、まるでゲームのRPGじゃないか。なるほどこのポイント制は開拓星における人手確保の餌でもあるわけだな。しかし、開拓星までコピーするとかもはやなんでもアリだな。


 それにしても個人ポイントに評価ポイントね。確かに評価ポイントは少し恐い物があるかも知れないな。例えば人類の科学に貢献したアインシュタインも見方を変えれば原爆の産みの親とも言えなくもない。世間の風評が『彼さえ居なければ原爆は産まれなかった』という形で悪人にされなかったのはある意味運の良い事だ。原子力発電という平和利用の道が見つかり、十分に考える時間が出来たからこそとも言える。しかし時代の瞬間的には逆恨みは確実に存在していたはずだ。


 そう言えばアメリカの資産家も同じような立場かも知れない。アメリカでは資産家はそうでない者に施して当然だという風潮がある。即ち金を持っているのに施さないのは悪だと言い放ち、あからさまな攻撃対象になる。彼らはイチャモンと呼べる無茶な裁判を起こし、資産家から金をせびり取る。陪審員も資産家の敵であり、日本では有り得ないような訴えで裁判を勝ちに導くのだ。日本の感覚からすればどう考えても法の穴をほじくり、それを盾に屁理屈を述べる悪の行為なのだが、アメリカの一般層からすればこれは正義の鉄槌であり、正しい事なのだ。


 即ち評価ポイントとは煽動されやすい愚かな民衆の総意とも取れる。煽動する人間も煽動される人間も自分の都合で正義を設定し、それが悪だとは微塵も疑っていない。しかしそれらの人間によって、いつの間にか悪くもない人間が悪に認定される事になるのだ。このへんは民主主義における多数決が及ぼす怖さにも似ている。


 そう考えると、評価ポイントは非常に恐いシステムだ。これに関しては極力使わない方針で何時でも無償で無効化できる様にしておいた方が良いのかも知れない。


「あぁそれと、動物愛護団体とか言うおかしな基準で特定の動物を保護して善人になった気になっている偽善者に対し、一応言っておきましょう。


 開拓星フロンティアにすむ動物は当然感情もあれば多少なりとも思考能力はあります。ですがそれがあるからと言って知的生命体と呼べる知性に結び付くという訳ではありません。


 例えば、DMB教育において様々な動物の思考もお伝えした訳ですが、どれもこれも非常に原始的な思考までしかしておりません。私の考える知性とは文明を興し、その上で文化を発達させる事が出来る事です。


 文明とは、自らの生活の補助とすべく、先を見通し周囲の環境を改変する事を意味します。例えばそれらの種が協力して家を建てたり、道具を作ったり、畑を作って農業をしたり、牧場を作って家畜を育てたり等、生活の助けとなる様に集まり、周囲を住みやすいように環境を自分たちの都合で変えていく事です。今を生きるためではなく、未来のための備えを想像できるかと言うのが文明の切っ掛けになります。


 そう言う意味では、猿もイルカも人間以外の哺乳類は殆どが落第です。計画的に巣を作る鳥やカワウソ等のほうが余程猿よりも優れています。しかしそれよりも優れている種もあります。


 それは蟻です。蟻は地面を掘り、自分の住み家を作り、崩れないように穴を補強します。また蟻は狩りも行いますが、農業も行います。他種族の幼虫を飼い、その分泌物を収穫物とします。人間が牛を飼い、牛乳を得るのと同じようにです。また、植物も栽培します。特定のカビや菌糸類を集めそれを栽培し、食料とするのです。しかも、栽培用の部屋、家畜用の部屋とちゃんと別れていますし、不要なゴミはちゃんと巣の外に捨て、蟻なりの衛生管理もちゃんとしています。これは立派な文明と言えます。


 現在の所、外敵が強すぎるために自分の生活を守るのに必死で文化までは発達しませんが、もし強大な外敵が居なければ遠い将来、蟻が文明を更に発達させ、科学文明や魔法文明を発達させてもおかしくはありません。まぁ現状では芳香文明が発達する可能性が一番高いですが……

 蟻も今後、何らかの文明的な転換が起き、生活に余裕が出れば豊かな文化だって発生するかも知れません。人間の歴史を振り返れば現在の蟻の文明はとても近似しており、なんとなく理解できるのではないでしょうか?


 そう言う意味では人間の次に観察の対象となりうる種を敢えて上げるのであれば、猿でもイルカでも鯨でもなく、蟻と言う事です。即ち、動物愛護団体が知性を理由に保護するのであれば真っ先に保護すべきは蟻と言う事になり、未来を予測できない猿などはやはり畜生でしかないのです。


 そこで、これらの観点から開拓星の動物を見る場合、開拓星で文明を発生させている種は一つもありません。


 人間が飼い慣らし、調教すれば言葉を覚え意思の疎通が可能になりそうなレベルの思考を持った動物も居なくはないですが、所謂知的生命体に成れる者は居ません。まぁ猿回しの猿のごとく、しっかりと教え込めば可能かも知れませんが、そのレベルだと思って下さい。


 もちろんそれらを保護し家畜化するのも開拓としては重要な仕事の一つです。


 とりあえず、私の個人的意見を言わせて貰えば『殺すのは可哀想だから』なんて言うエゴと偽善の塊のような意見は、生きていく上で他の命を消費せざる得ない人間が言う言葉ではありません。命に貴賤無し。特定の物を優遇するというのはエゴでしかありません。そう言う意見は少なくとも私のように他者の命を必要とせず永遠に生きられる存在、最低でも今の人間種を超越した存在になってから言って欲しいものです」


 なんか急に毒吐いた! この人は案外好き嫌いがハッキリしてるな。そう言う意味では神様じゃなくて人間っぽいけれど。


 あぁもしかしてこれってさっきの悪意無き悪評に掛けてるのか。確かに『殺すのは可哀想だから』なんて言うのは一見正義の思考だが、それを殺す事で生きてきた人間にとってはいい迷惑でしかない。自分がしないからと言って他人に強要するのはエゴだ。インド人が欧米人に『俺は牛肉食わないから牛を食うな』と言っても納得はしまい。結局の所彼らの求めているのは他人の評価というステータスであり、服飾品のような物でしかない。表面上正義に見える物を大声で掲げる事で、賛同という飾りを得たいだけなのだ。本人たちは其処に悪意を持っている訳ではないのが始末に負えないと言える。


 うん、やっぱり評価ポイントは恐い事になりそうだから使わない方針で行こう。


「さて、ちょっと脱線しましたが以上が私から提示できる現状の失業対策となります。しかし、そのどれもが嫌だと言う場合は更にもう二つの選択肢も一応あります。


 一つは最初に説明した既に幾つかの国が移住済みの『コピーした太陽系』に追加住人として移住をする事、もう一つは更にコピーした完全に無人の太陽系に改めて移住をする事です。但し移転された場合、その後私はノータッチになりますのでその世界で生きていけるのかは完全に本人次第です。


 ただ、あちらの世界では安全のために、人が消えた国で発電所などが暴走しないよう全てのインフラ施設が停止した状態になっています。向こうについてから今まで通りのインフラを使用したいなら、電気ガス水道などは施設に侵入し、それらを起動できるだけの知識と技量が最低限必要となります。


 一応これをサポートするためにinfinityを半年に限り、これまで通りに使用できます。空を飛ぶ事も自分の身を守る生活補助も既に持っている貯金で買物をする事も可能です。まずはinfinityから知識を検索して発電所や上下水道を動かせる様にすると良いでしょう。


 ただ、原子力発電であるなら、燃料の交換は長期間考えなくとも良いですが、火力発電などの場合は燃料の補給を頻繁に行わねばならず、相当数の人間が移住しなければ、管理も出来ないと思います。家庭用発電機を用いるのも手ではありますが、これも石油の輸入などについてどうするのかを長期的に考える必要があります。


 正直な話、移住者はかなり少ないと思いますから、コンビニやスーパーなどにある缶詰などである程度の期間は暮らせるかも知れません。しかし、まともな生活を考えるのであれば農業を行い自給自足する覚悟がなければ無理でしょう。


 そして、これらに移住する事の最大の難点は、政府や警察機構がまともに機能しない可能性が高い事です。その上で武器や兵器等がそのままありますので、それらを先に手に入れた物勝ちな『暴力が物を言う世界』に成る可能性が在ります。理性的な行動を期待しますが、こちらの世界を選ぶ方はそうなる可能性がある事を十分覚悟して選んで下さい。そう言う意味では開拓星を選ぶよりも危険な未来の可能性が高いです。開拓星ではポイントは有効なので死んでも復活できますが、こちらでは死んだらそのままです。


 一応既に移住済みの国家に帰属するのも方法としてはありなのですが、これもあまりお薦めはしません。何故なら先程言ったように、向こうは神に選ばれた説を大々的に普及させる方針ですので、今さら他国の人間が帰属しようとしても、他国民は神に見放された罪人というレッテルを貼られ、奴隷扱いされる可能性が非常に高いです。これは日本人が向こうの日本の地域に移住する場合も同様です。例え自分の家のコピーであっても、彼らからすれば神から貰った財産を勝手に奪う泥棒と変わりがないわけです。


 それでもある程度人の居るコピー地球に行きたいというのであれば、止めませんが。


 と言う訳で、見かけ上なら以前と同じ世界を用意はするのですが、実際には全く別物に成ると思って下さい。もし移転後の世界に嫌気がさし、戻りたいと思った場合は一度だけ戻るチャンスを与えます。チャンスは移転して半年後の一度だけです。ですので直ぐに後悔しても、半年間は一生懸命生きて下さい。その経験はきっとこちらに戻った後に役に立つでしょう。


 まぁここまでしても不満を持つ方はいるでしょうが、最初に言ったとおり、元々滅んでいた世界をサルベージしたにすぎず、これ以上の責任を持つつもりもありません。その上で、もし私に喧嘩を売りたいならどうぞ気の済むまで売って下さい。ま、傷一つ付ける事も出来ないでしょうけど…… ただ、喧嘩を売った以上はinfinityの機能は凍結されると思って下さい。旧科学特区に住むならあまり関係のない話かも知れませんが。


 と言う訳で、私から提供する打開策をまとめますと、


 1.大きなチャンスが存在するが、開拓という多少の危険がある場所に移り住む。

 2.色々と危険があるが、以前の常識と同じ世界に移り住んでinfinityとおさらば。

 3.今の世界の旧科学文明特区などで次の仕事を探す。


 の3点になります。2の移転はinfinityがこの世界に認知された日、10月26日の太陽系を基本としてコピーされますので、infinity登場により車などを廃車にした方も移転先には自分の車があるはずです。移転時期は今から一ヶ月後、希望者を一斉に転移させます。順次送ると本当に早い者勝ちな無法地帯になりますので、そういう事はしません。尚、移転等を考えている方は、一ヶ月の間に各種掲示板などを使用して情報収集すると良いでしょう」


 うん、コピー地球に移り住むって選択肢はないな。某世紀末伝説のヒャッハー!な人をやってみたいとか破滅思考なら別かも知れんが。


「さて、最期に…… 先程、説明を後回しにしたとっておきの特典について説明します」


 そういえばポイント説明の時にそんな事言ってたっけ。


「ポイントを100万溜めた場合、それを使用する事で希望した世界を旅する事が出来ます。題して『異世界を自分でデザインして俺TUEEE出来る』権利です。


 小説でよくある異世界トリップのような物です。もちろん帰還方法も決める事が出来ます。簡単な所では死んだら元の世界に戻る等でもいいですし、MMO的にログアウトを用意し何時でも戻れるでも、転移門を設置して自由に行き来できるようにしても構いません。また、infinityの機能については自由に制限を掛けられます。スリルを楽しむならinfinity機能を幾つかOFFにし、これまでに自分が鍛えた力を存分に試すのも良いですし、安全に世界を楽しみたいのであればinfinity機能を全て使える世界に設定するのがよいでしょう。


 世界については私が実現できる範囲で、発注者の為だけに新規で作成します。其処で王になるも良し、まったりスローライフを望むのも良し、恋愛系ゲームのようなハーレム世界を創るのも良しです。よほど破綻した世界でなければ実現できます。


 またファンタジーな世界を創り一般に開放し、仮想空間でないMMOで大儲けを狙うなんてのも出来ます。ただMMOの場合は発注者も含めてGM相当には成れません。自分の能力はあくまで『それまでに蓄えた自分が使用できる力』のみです。沢山の人を招き入れる事は出来ても、自分に実力が伴わなければGMの様に人を裁く事は出来ません。また仕様の性質上MMOっぽい物を作っても、死亡したらログアウトして元の世界に復活という世界システムを組み込まない限り、基本生身で参加するデスゲームと変わりません。参加する人はよく仕様を読み、死の危険がある場合はinfinityでの『死亡時復活』の権利や自力での不死を実現しておく必要があります。


 他にもこの権利の利用法の一つとして、過去世界をコピーして実験や検証に使う事も可能です。例えば戦国時代をそのままコピーして、織田信長を助けたら歴史がどう変わっていたのかを検証してみると言うのも有りですし、自力で不死を手に入れているならば、その時代から世界の影の黒幕として世界支配を楽しむなんて真似も出来ます。また歴史を変えないまでも、歴史学者には実地で文化を知る事が出来るため研究価値としても高いと思われます。


 そしてこれらを有効に扱うためにタイムストレッチボックス以上の時間差も実現できます。MMO的な多人数参加型では色々無理がありますが、一人用であるなら作成した新世界に入っている間、こちらでは一切時間がたたないようにし、出ている間は新世界の時間を止めておくと言う事も可能です。更には時間の巻き戻しも可能です。新世界内で失敗したなと思ったらゲームのように時間を戻してやり直す事が可能になります。


 また歴史検証等に関しても有効に観察できるように観察モードも用意します。観察モードとは幽霊のような存在になって世界を自由に観察できる状態です。誰にも認識されることなく自由に世界を観察できます。また見るだけでなく、中にいる人物に触れる事でその人物が何を考えているのかも知る事が出来ます。歴史の真実を解明したい学者にはお勧めです。


 ただし、歴史検証モードは幾つか制限があります。何も手を加えずに時間を進めれば当然『今』にたどり着くわけですが、個人のプライバシーを考えると全てを観察できるのはあまり良い事とは言えません。その為、とある例外を除き、歴史検証モードは『現在生きている全人類が産まれる前までの過去』に限定します。例えば人類の最高年齢150歳がいれば150年前までの過去を検証できます。但し例外としてその世界に行ったっきりでその世界に骨を埋める覚悟であるならば、その限りではありません。


 またこの条件では、私がこの世界に顕れる前までの世界までしかシミュレート出来ない訳ですが、私が現れない世界を選択するのであれば、その先も可能です。この場合、infinity機能も使えないのですが、それまでに鍛えた自分自身の力は有効ですので、自分自身の人生を俺TUEEE状態で最初からやり直すと言った事も可能です。もちろん、以前言ったとおり、私が出現しなければ核戦争で滅ぶ世界なのでその対処は自分でしなければなりません。まぁ私の目論見では核ミサイル程度であれば個人の力で全てを無効化する事も可能なレベルに種としての進化を遂げられるはずなので、特に障害にはならないでしょうが」


 色々と興味深い。色んな意味で自分の理想とする世界に行けると言う事か。infinityで失業した人もこっちの世界でやり直すってのもある意味アリになるわけだ。しかし、ノーベル賞レベルで1万ポイントなのに100万ポイントとかかなり厳しいんじゃないのか?


 それに、核ミサイル無効化とかどうなんだ? 確かにinfinityの仕様説明では核の直撃でも昼寝が出来るとあったけど、そんな能力が個人で手にはいるのか? あ、でも霊学を極めればそんな事も可能みたいな事も言ってたし、ありうるのか?


「さて、となると具体的に100万ポイントをどう溜めるのかが気になる所だと思いますが、現時点で一番簡単なのは有名になって評価ポイントを溜める事です。芸能人や政治家になるって言うのもありなのですが、MMO的な物であるならHPでプランを宣伝すればそれに賛同する人の評価ポイントを稼げるかも知れません。歴史学者の場合も同様です。全員観察モードで参加できると言う形で協力者を募集するでもいいかも知れません。


 他にも100万ポイント溜めた開拓者等からこの権利を売って貰うと言う方法もあるでしょう。開拓星で最強の生物を狩る場合、300体程狩れば100万ポイントたまります。もっとも、現時点ではほぼ無理ですが…… なにしろ魔法障壁のせいで原爆を直撃させても軽い火傷程度しかダメージを食らいません。倒すには霊学を研究し、最低限相手の障壁を無効化もしくは突破する方法をあみ出す必要があります。とはいえ狩れる人間が出てくるまで100年は掛からないと思います。今後寿命は大幅に伸びる事になりますし、皆さんが生きている内に100万ポイントの達成者を多数みる事が出来るでしょう」


 100年って…… 思考のスパンが長すぎだろう。って言っても今後若返りが出来るのであればそうでもないのか?

 少なくとも頑張れば頑張るほどその頑張る時間が増えるわけだし、年老いた身体で現役を諦めた人間も復活する事を考えるとアリなのかも知れない。恐らく若返って更に新しい事に励めば若返った以上のポイントを稼ぐ事が出来るようにしてあるのだろう。なにしろ全くの新規の分野が開放されたのだから、研究の余地は十分だ。でなければこの前提は成り立たない。


「さて、今回の会見も脱線混じりの物に成ってしまいましたが、以上をもって新年の挨拶と共にお年玉とさせていただきます。これらの詳細についてはいつも通りヘルプアシスタントにお尋ね下さい。ポイントによる特典には今回説明した物以外にも多岐にわたります。きっと満足いただける物があると思いますので是非確認して下さい。


 では本日のお正月会見を終了いたします」


 終ったか…… 相変わらずと言うべきか、この人が表に出てくると、世界をガラッと変えるような事になるな。

 見ているこっちはそれなりに楽しいし、記事のネタにも成るけど、国家の首脳陣としてはたまらん相手だな。


 そう言えばポイント特典が他にもあるって言ってたけど、この辺も確認しておくか。


「リルたん、神たまが言ってた他のポイント特典ってのは?」


「めぼしい所だと……


 50点で開拓星ガイドブック、開拓星生物図鑑、開拓星植物図鑑。これらは1万円で購入も可能だよ。

 1000点で常時更新される開拓星詳細地図。

 5000点で霊学初級解説本、霊感強化、魂魄増大。

 1万点で性転換、アトランティス国籍。

 10万点で私などのヘルプアシスタントの実体化。

 100万点で霊学中級解説本、恒星間航行可能な宇宙船。

 5000万点で霊学上級解説本。

 9999万点で世界構築読本。


 こんな所かな? このうち幾つかは個人ポイントで支払わないと駄目ってのもあるからちょっと注意が必要かも」


「性転換ってまた微妙な…… って、ヘルプアシスタントの実体化? それってリルたんが人間に成れるって事?」


「うん、お兄ちゃんと結婚も出来るって事です」


「………マジデ?」


「マジです。ヘルプアシスタントの結婚を認めているのは地球じゃアトランティスだけだから、アトランティスの国籍も必要だけどね。ちなみに実体化には当然私の同意も必要だよ。ただ、ヘルプアシスタントの一部の能力が失われるので微妙かも。でもその代わり開拓星で一緒に戦う事も出来るよ」


「いやいや十分でしょ。これは確実に、マイ嫁と結婚するために開拓星に行く人間が増えそうだ。実際の所、開拓星ってどの程度の危険度なの?

 なんか神たまの話では原爆でも倒せない奴が居るとか言ってたけど……」


「その辺は心配ないかなぁ。詳しくはガイドを手に入れてくれって言われてるけど、基本的にはPRGのゲームみたいに、転移ゲートのある『はじまりの街』の周辺動物は凶暴なものでも野良犬程度だよ。まぁ20匹倒しても討伐ポイントで1ポイントつくかどうかだけど……」


「そんな少ないの?」


「討伐ポイントは確かに少ないけど、討伐した動物の素材を売る事でもポイントが付くからそうでもないよ。例えば霊学初級を治めるには最低限、霊魂や精神波をハッキリと認識できないと無理なんだけど、その助けになる物が手にはいるの」


「具体的には?」


「むー、本当はガイドブックか霊学初級本を買うべき何だけど……


 あの星に済む動物の殆どは視覚として霊魂や精神波を捕らえる事が出来るの。具体的には角膜細胞に刻まれた生体魔法陣によってそれが視認できるようになってる訳。人間が霊魂を感じるための基幹『霊感』はかなり退化してしまっているのだけど、無くなった訳じゃない。ただ、あまりにも使わなかったので殆ど機能してないだけなの。


 視力に例えると、弱視系の視力減退で、全盲直前の0.001ぐらいの視力な感じ。だからこれに関してはなにかあるかも知れないと感じる程度な訳。あまりにも像がぼやけすぎているから、それを信じる事が出来ずに錯覚と思おうとしてしまう。だからまずはそれを鍛える必要があるの。


 具体的には視覚を通じて霊魂や精神波を確認し、自分の感覚器官、霊感による認識が錯覚による物ではないと自覚させる事が最初の一歩。自分の霊感を確信できるようになったら、今度はその精度を上げるように鍛えていく訳。


 ただ、角膜だけにナマモノだから腐っちゃえば役立たずだし、おそらくこれらの素材は常時需要がある形になるんじゃないかな」


「ん? でもその角膜ってのを使用しなくても自力で霊魂や精神波が認識できるようになればいらなくなるんじゃないの?」


「理屈的にはそうなんだけど、あればあったで応用は効くしね。例えばカメラに組み込めば、今までの機材でもそれを捕らえる事が出来るようになる訳だし。ただ、液晶の発端がイカスミという生体物質だった訳だけど、それがすぐに化学合成物質に変わった様に、目玉についても同じ道を歩むかも知れない。具体的には、角膜に刻まれた霊視の生体魔法陣を解析できて、それを人工で精製できるようになれば目玉素材の買い取りは無くなるかな?」


「なるほど…… 霊学の初期発展途上の為に必要な素材って事か」


「うん、グランドマスターも開拓星の動物配置にはかなり苦心して、霊学を学びやすいように生態系を調整してるみたい」


「開拓が進めば進むほどに、霊学も発展していく仕組みになっている訳か」


「そゆこと。ちょっと親切すぎるんじゃないかな~ってぐらいに調整されてるよ。開拓星の最強の動物クラスだと、次元壁を操れるぐらいまで霊学を発展させないと討伐は難しいかな。次元壁を理解するには霊学だけじゃなくて、今の科学のM理論なんかもマスターする必要があるけど、理解さえできれば瞬間移動や、4次元トートバックも自分で作れるよ」


「M理論って……先端数学者レベルじゃん」


「大丈夫、霊学を進めていけば頭の回転速度や理解力を高める方法も順次会得できる筈だから、その頃にはM理論なんて今の四則演算レベルだよ」


「マジか……」


 しかし、神たまはホントに自分と同レベルの存在を作ろうとしてるのかもな。


「なぁ霊学中級以上の解説本とか世界構築読本とかもの凄いポイント数なんだけど、この辺を理解すれば神たまに少しは近づけるのか?」


「うーん…… かも知れないぐらいかな。今の段階だとグランドマスターがどれ位すごいのかも解らないと思うけど、これを理解する事でやっと本当の意味でグランドマスターがとんでもない人だって実感できる感じかも知れない。


 ぶっちゃけて言ってしまうと、恐らく殆どの人は霊学中級解説本を理解出来ないと思う」


「え? どうして?」


「グランドマスターがグランドマスターたり得るのはご自身がバグだと仰ってたけど、普通は其処まで知識を魂に溜め込む事が出来ないの。万一溜め込んだとしても知識過多で指一本動かせないほどに身動きが取れなくなってしまう。それを緩和するために魂魄増大ってポイント特典を用意してるけど、部屋を広くして知識を沢山置けるようになっても、それを十全に使えるかどうかは別の話だし」


「……ああ、なるほど。狭い部屋に置いてある物の範囲なら常にそれを理解しているけど、街1個与えられても街の何処に何があるか迄は細かく把握できないし、把握できたとしてもそれを取りに行くのに時間掛かるみたいな感じか」


「そうそう、良く解ってるじゃない。取りあえずは初級を地道に勉強していけば、不老不死ぐらいは実現できるからそれからのんびり進めるのも一つの方法よね」


「なるほど…… って初級マスターで不老不死実現できちゃうの?」


「うん、不老不死自体はそんなに難しいものじゃないし、150年も勉強すれば理解できると思うよ」


「150年…… そういや神たまは3宇宙時間研究してたっけ言ってたっけ」


「本物の神様とのコンタクトの合間にも勉強し続けてるから、100宇宙時間以上だね」


「なるほど…… もしかして世界構築読本クラスは読むだけで宇宙時間単位が過ぎるとか?」


「正解。恐らくこの宇宙は消滅しないようにグランドマスターが固定化するだろうけど、普通なら読み終える前に宇宙が消滅しちゃう。霊学上級解説本も殆ど同じ物だと思って良いと思う。中級マスターでも数百億年単位だと思う」


「何その無理ゲー」


「グランドマスターも多分其処までは期待してないと思う。感覚的には宝くじを記念に一枚買って当たったら良いなぁって感じかも」


「なるほど、それくらい遠い世界って事か」


「そうそう、だからあんまり気負わずに自分のしたいように生きるのが正解だと思うよ」


「ふむ…… 自分のしたい様にか。活動拠点を開拓星に移すのも面白そうだな。

 開拓星ではinfinityの機能を制限されるって事だけど、リルたんとかの扱いはどうなるの?」


「私は基本そのままだよ。実体化してくれないと戦闘とかには参加できないけどね。


 開拓星で制限されるのは生活補助機能と飛行機能、リプリケート機能ぐらいかな?

 文書作成の印刷におけるリプリケートも禁止になるから、文書を作る場合は紙を補給するタイプの昔ながらのプリンターも必要かな?」


「ふむふむ…… 所で俺の現時点の獲得ポイントってどれ位あんの?」


「個人ポイントが6342ポイント。評価ポイントが3221ポイントになってる。ちなみに一般的な理系の大卒で個人ポイントが4000ポイントぐらいだからかなり高い方だよ。いろいろなの専門知識も多いしね」


「社会人になった後の勉強も加味されてるって事か。評価ポイントが思ったよりあるのはネットで記事を書いてるからか?」


「うん、お兄ちゃんの記事はそれなりの支持率があるからそれが評価ポイントに反映されて居るみたい」


「なるほど。

 ふむ…… ちょっと本格的に開拓星への移住を考えてみよう」


「じゃあガイドブック取り寄せてみる? 一万円払うのもアリだけど、何度も読むものじゃないし万が一消えても良いように評価ポイントで引き替えで良いと思うよ」


「いや、評価ポイントは万一のために使わない方針で行く。現金一括払いで頼む」


「はーい、んじゃ一万円引き落とし処理するね」


 よし、んじゃ早速ガイドブックを読んでみますかね。

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