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~Episode8,5 諷刺優里~

 これは、僕の知らない諷刺優里(ふうしゆうり)の物語である。


『今は「どっち(・・・)」だ?』


 電話の向こうでは渋い声の男が彼女に問いかけていた。

「…私だ」

 彼女は凛として問いに答える。

『…「私」ね、わかった。まぁ俺としても今はそちら(・・・)の方がいい。あいつだと気性が荒くて話がやりにくいからな』

「………………………………………」

 彼女は黙って相手の話を流す。やがて、相手があきれた風に笑い、口を開く。

『ははっ。どうした。返事がないぞ?「風神」』

 相手は完全に彼女をからかっており、「風神」という前に少し溜めを作ってその言葉を強調する。

「……………用が無いなら切るぞ」

『まぁ待て、用ならある。…任務だ。お前の好きな対人間のな』

 彼女は相手が目の前にいるわけでもないのに、少し俯いて唇を噛む。ほどなくして赤く生暖かい液体が顔を伝う。鉄の味がいっぱいに広がった口で彼女は静かに答える。

「内容は?」

『今回は「人攫い」だそうだ。目標は鮮紅紅葉(せんこうくれは)。依頼主さんはそいつの力を欲しがってるみたいだな』

「状態は?」

『死んでなければどうでもいいらしい。ただまぁ、できるだけ五体満足で、という感じだ。相手は結構なやり手だから難しいかもしれないがな』

「問題は無い。用件はそれだけか」

『心配はしていないさ。「風神」だからな。だが』

 電話先の相手は今までの陽気な態度とはうって変わって、脅すような口調になる。

『もしも負けるような事があったらその時は』

「……………………自害しろ」

 彼女は相手の言葉に合わせて平然と言い切る。その眼には「死」への恐怖や不安などのマイナスな感情は全く無く、あるのはただ「任務」だった。

『そうだ。俺らに弱い奴は必要ないからな。もし失敗して戻ってみろ。俺がお前をしっかりと殺してやる』

「失敗はしない」

 相手はまた元の陽気な口調に戻り、任務の話を再開する。

『せいぜい頑張れよ。期限は今から3週間だ。いい報告を待ってるぞ』

 彼女は最後の言葉を聞き終えたら、返事もせず携帯の電源を切って資料を探り始めた。





「あれが鮮紅紅葉か。一緒にいるのは誰だ?」

 彼女はASGの事務所があるビルの近くのビルの屋上にいた。

「資料には無いが、ターゲットと共に行動している以上、能力者の可能性があるな。と、なればあいつが本当に鮮紅紅葉かどうか確認すると同時に一緒にいる奴が能力者かどうか確認しないといけないな」

 彼女は鮮紅達が事務所からある程度離れた事を確認すると、人ごみに紛れながら近づいていった。姿が確認されないギリギリのラインまで近づいたら声を拡散するように言った。


「お前、ソート・リンク使いだろ」


 と。





「あの反応、一緒にいた奴は大した事ないみたいだな。あと鮮紅紅葉も能力者と確認できたし、あの程度なら問題はなさそうだ」

 彼女は山に来ていた。なにせ人を「殺す」のではなく、「攫う」からである。殺すだけならば一瞬で済むが攫うとなると殺すより時間がかかるし、他の人間がいない方が楽だからである。

「あいつは煤良木集(すすらぎしゅう)というのか」

 彼女はPCでハッキングをかけて個人情報を閲覧していた。

「予想通りならば、明日、煤良木集はあの『人間ならざる十人イクスシェプショナリィ・テンス』の一人、『業火神』こと魅蓮香(みれんこう)の所へ行くだろう。そうすれば、あとはターゲットを叩くだけ…」

 しかし、次の日の朝、彼女にとって不測の事態が起こる。

「まさか、一緒に事務所に向かうとはな…」

 PCは起動中でこの薄暗い中でも煌々とその存在が輝いている。ふと何か考え付いたように彼女は画面に目をやる。

「この手があったか…」

 彼女はPCを使い、鮮紅に魅蓮に成りすまして、メールを送った。


[私は今、山に来ている。用があるならそこに来てくれ。場所は頂上付近にある少しひらけた所だ。行けばわかる。]


 送り終わって、襲撃の支度をし始めようとすると、彼女の状態が急変した。

「うっ、う、ううう、う………。ま、まだ、で、出て来る、な…。ま、まだ…」

 蹲って悶えているように見えたかと思うと、急にスッと立ち上がり、首を鳴らした。

 その姿は先程の人物とはうって変わって銀髪が短くなって雰囲気も全く違っていた。

「あ~、久しぶりに出てこれた。まったくもう一人の俺はちまちましてんなぁ。早く殺っちまえばいいのに」

 彼女と思わしき人物は、そのまま鮮紅に伝えた偽の合流地点へと足を運んだ。





 鮮紅達との戦闘後、彼女は元の感じに戻り、適当な廃ビルに入って反省と今後について考えていた。

「あそこで、あいつが出てくるとは……。私も少なからずケガもしてしまったし、数日は休まないといけないな…。残された時間は17日間。相手の連中にも気づかれたから手は出しにくくなってしまったな」

 彼女は壊れた窓から顔を出した。冷たい風が彼女の銀髪をなびかせる。やがて決心したように突如体を翻すと、そのまま廃ビルを出て、若干速歩きともいえる速度でスタスタと歩いて行った。


  ――――とある市内の病院へと。

どうでしょうか?

…というのも今回は普段と違って「集視点」じゃないんです。だって集は知らない事ですから。

今回はいつもより時間をあまりかけてないので文がおかしいところも多々あると思いますが、楽しんでいただけると幸いです!!

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