~Episode16人間ならざる十人~
「いやァ、全く、この俺がわからないとは勉強不足も甚だしい事この上ないなァ!」
尚も男は、その渋い声で高らかに笑い、数枚のコインをポケットから取り出す。見下す形はそのままに、先ほどと同じように放る。
―――さっきと同じっ!?それならっ!
僕は能力発動と共に現れた銃を手に取り、「設定」を組む。
―――初速457m/s、装填弾数6発、有効射程距離…40m、連射は…可能…、効果は…
……「触れた物体を分子レベルに分解することっ!」
奴が放ったコインはまたも一瞬で巨大化し、僕と優里に襲いかかる。僕は標準をそれらに絞り、引き金を絞った。これまでの修行?らしき物の成果か、銃弾は吸い込まれるように的確に射抜いていく。そして…物体を事実上消滅させる……はずだったの…だが、
「……な、何…!?」
…物体が消滅したのは銃弾が触れた部分のみで、それ以外の大部分の、元はコインの巨大な円盤が僕達の上から襲いかかる。
―――くそっ!設定ミスかッ!
僕がそう確信した時には既に時遅く、目の前には、眩く銀色の、とても無機質なそれがあった。
ズゥゥゥゥゥゥゥン!!!!!!!!
右耳の鼓膜はもう破れているのか、ほとんど聞き取れず、しかも体には鈍く輝く物体があたり、僕は満身創痍そのものだった。戴称は全く動かずそれどころか傷一つなく不敵に笑っていた。僕には、それは同時に嘲笑っているかのように見え、自分でも驚くくらいの怒りを感じていた。反抗心を燃やし、もう一度立ち上がろうとしたところに、戴称は話しかけてくた。
「アッハハハハ!まだ抗うのかァ?元気な事でェ。でもまぁとりあえずはそこに突っ伏して話をしようじゃないか。そこの『風神』に、ついて」
「…お前と話す事なんて何もない」
僕は戴称に向かって全力で睨む。そのあとに、優里の方に顔を向けて、僕は念を押す。
「優里っ!そんな奴のいう事聞くんじゃないぞっ!」
必死な表情とは逆に、飄々とした顔をした戴称はニヤリと口角を上げながら優里に語りかける。
「『風神』ン~。お前は、もうわかってる…よなァ。単刀直入だが、ハッキリ言おう。戻れ、と。逆らえば…ま、どうなるかは、わかるだろ。こんな青2才のガキと『人間ならざる十人2th』の俺との埋めようのないくらいの絶望的な力の差、くらいは、なァ!?」
「…………」
「おいっ!優里!」
―――優里の足は―――――――
―――――――僕の方とは逆の―――――――
――――――――――戴称へと向いていた―――――――。
「優里っ!」
戴称は自分の方へと歩んできた優里の肩に手を置き、そして僕の方を見て、現実をつきつけた。
「『風神』の方がよくわかってるじゃねぇかァ!お前は「力」もないくせによくもまぁ、ここまでいきがっていられるなァ。ま、世の中そんなもンだ。用は済んだ。それじゃあな……って」
戴称はいきなり何かを察知したようで、ゆっくりと、原型をほとんど留めていない、もはや鉄クズ同然の屋上の扉の方を見た。僕もそれに釣られるように視線をそちらに動かすと…
「………み、魅蓮っ!」
そこにはいつものように、だらだらっとしたシワのついた服を着て、それとは不釣り合いすぎる程の美貌を向けている魅蓮がいた。
「4th、お前さんがここにいるとは、なァ」
「…………………………………」
魅蓮は無言で、ゆっくりと、僕の方に足を向けていた。
戴称はそれが何を意味しているのかを察したらしく、そのまま優里の肩を軽く叩き、歩いていった。
「ゆ、優里ぃっ!」
僕が喉が張り裂けそうな程に叫ぶと、優里は、ただ、静かに、少し振り向いて、少しばかりの涙を貯めた微笑で、こう呟いた。
「また、後で…会おう」
と……。
これが口パクであったのか、声がただ単に聞こえなかったのかはわからないが、僕の耳には、間違いなく、優里の声が…再生されて…いた…。
結局、僕は魅蓮に助けられ、その後病院へと連れていかれて、治療を受けた。かなりひどい怪我だったらしいのだが、能力のおかげか、想像以上に治りが早く、早めに退院することになった。ちなみにデパートの方は、しばらくの間、修復作業をするために休業するそうだ。
ガチャリ
僕は静かに玄関を開け、そこに複雑な表情を浮かべている紅葉に向かって、静かに、声をかけた。
「ただいま」
と。当然紅葉は、
「おかえり」
そう答えた。
「僕は、今日、魅蓮に会ってこようと思っているんだけど、紅葉はどうする?」
僕が帰宅後、昼食を紅葉と食べ、その時に事の顛末をすべて伝えた上での言葉だった。
「私も…行く」
紅葉は普段とあまり変わらず、淡々と動く。僕はまだあの時の事がフラッシュバックしてしまい、後悔と無念さが入り乱れ、足取りさえも不確かな様子だった。
「……………」
「………………………」
ビルへ向かう間も会話はほとんどなく、着いてビルを見渡すといつもと変わらない明るさと騒がしさではあったものの、なぜか僕には、とても寂しい物を感じた。カツン、カツンと階段を上がる時の音も、より一層侘しさを増し、静かに響いていった。
「…………」
僕はAGSと書かれた扉を見て、ゆっくりとドアノブを握る。とてもよく冷えたそれ
は僕の手を伝い、ゆっくりと体全体を冷やしていくようだった。
ガチャッ
ゆっくりと扉を開けたその先で僕達を待っていたのは、
「よぉ、煤良木、鮮紅。とりあえずそこ座れ」
珍しく、しっかりとした服を着た魅蓮とテツ先輩だった。
いやぁ、多分1ヶ月くらいの投稿になるのかな?ええとお久しぶりです!このtwitterからきた人だと初めて…ですかね?今回はなかなか書くのに時間がかかってしまいました…、次回は結構早めに出せるといいなぁ!すごく私情になってしまいますが、テストも終わったのでね!頑張っていきたいです!
ええと、毎回?のように言っておりますが、文章で何か不自然な点やよく意味がわからないなどの指摘などは感想でズバズバ言っちゃってください!もちろん普通の感想ももらえるとすごくうれしいです!twitterもやっているのでそちらもよろしければ…。https://twitter.com/#!/SScouran




