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~Episode11非日常終結~

「あ~あ。やっと出てこれたぁ。さぁ第2ラウンドの始まりだぁッ!」


 姿、性格が豹変した諷刺(ふうし)はそう言って手を前に突き出した。

「『空気の弾丸(エア・ブレット)』」

 ―――ッ!何か来るッ!

 僕が感じた時にはもう手遅れで、腹の辺りを空気の塊がうねりながらめり込んで来る。

「くぅっ、ガハッ」

 僕は先程とは比べ物にならない程の威力の攻撃を受けて、吐血していた。

「くそっ」

 ―――身体強化ッ、さらにプラス800ッ。

 合計1480と、人間では到底ありえない力を出して相手の弾丸を打ち消し、そのまま諷刺に殴りかかる。

「おいおい、結構やるじゃんかよォ。ははっ、せいぜい俺を楽しませろよ」

 諷刺は僕の攻撃など赤子の手を捻るかのように拳を蹴りあげ、そのまま蹴りの連打を食らわせる。

「オラオラオラオラどうしたァ!」

 バキッ!と体中の骨が折れる嫌な音が鳴る。

 ―――ちっ。何なんだよ、こいつは。急に見た目が変わったと思ったら、強くなりやがって。…………やるしかない、か。

 僕は能力発動と共に現れた銃を手にした。見た目は拳銃に近く、銃身が長いその銃を取り出し、一瞬目を閉じて(・ ・ ・ ・ ・)弾を込める。

「ん?どうしたァ。もう降参かァ?その銃はなんだ?能力みたいだがァ?」

「……………教えてやるよ」

「アァ?」

「まず一つ、お前が言ってた肉体の強化。だがこれは、僕の能力の副作用のようなもので、決して『本命』の能力じゃない」

「はァ?だから何なンだよッ」

 僕は微小を浮かべて、銃のトリガーを引く。

「『空気の弾丸(エア・ブレット)』」

 銃口からは、諷刺が一回発動した技がそのまま発射されていた。

「な、何っ!?」

 高圧縮された空気の塊は、驚きを隠せずに目を見開いている諷刺の体へと吸い込まれていく。

「んぅ、このぉクソがぁッ!」

 諷刺は「空気の弾丸(エア・ブレット)」を力づくで破壊し、不敵に笑っていた。

「んン?」

「『空気の弾丸(エア・ブレット)三点連射(スリーバースト)』ッ!」

 僕は、完全にガタがきていてほとんど脳の命令を受け付けないただの肉塊を、意地のみで動かして相手に攻め寄る。

「なッ!後ろ!?」

 諷刺の体に三点のクレーターのようなものが出来、そのまま宙に浮いて柱に激突する。諷刺は三本目の柱を破壊したところでその勢いを止め、ゆっくりとうなだれた。

「僕の本命の能力は――――」

 僕はピクリとも動かない諷刺の体へと、半ば足を引きずりながら近づいた。そして頭へと見下ろす形で銃を突きつける。

「『思考、又は想像物を打ち出す事(・ ・ ・ ・ ・)、ただそのためには、設定(・ ・)を組まなければならない。重量、射程、威力、効果。この能力なら僕の『意識』を打ち込む事も出来る。が、なんでも可能ってわけじゃないんだよ。設定が不完全、又は無理がありすぎる場合は打てない、もしくは暴発する。それに――――」

 僕はゆっくりと指をトリガーにかける。

「この能力には『イメージ』が必須でね、僕には難しいどころじゃないんだよ。だから僕はお前のすでに出来上が(・ ・ ・ ・ )ってる技(・ ・ ・ ・)を利用させてもらったんだよ」

 僕は能力を少し解き、無理な身体能力の向上をやめて、元に戻す。

「お前の負けだろ。さぁ、もう紅葉を襲撃しないと誓ってもらおうか」

「んくくっ。はははははははァッ!誰が誓うかバァカ!ご高説ありがとうございますぅ。そんなところでさっさと死ねヤァァァア!」

 急に動き出した諷刺は、飛び上がって、飛び膝蹴りを食らわせようとする。当然避けられる速度ではないのだが、僕は当たる前に、静かにトリガーを引いた。

「この七日で覚えたたった一つの技、だ。僕にはこれが限界だった。きっと聞いた事があるだろ。フレミングを使ったあれ、だよ」

「『超電磁砲圧縮光線束(レールガン・バンドル)』」

 僕が放った物は、辺り一面を暖かい色で包み、静かに薄れ、軌道上の物の存在を全て掻き消していた。当然諷刺にも当たり、諷刺は呻き声を上げて静かに倒れた。そして少しずつ、煤の少しついた、それでもなお人々を魅了させるような銀髪が伸びていっていた。

「う、ううっ。痛ッ!……………わ、私、は、ま、負け、はぁっ、負け、た、のか…………?」

「……………………あぁ」

 諷刺の静かな問いに、僕は結果のみを伝える。

「ふっ。ははっ。そうか………………。私は負けた、のか…………」

「…………あぁ」

 再度返答する。なぜかその時諷刺は軽く笑っていて、まるで何かのしがらみから解放された奴隷のようだった。

「殺せ」

「は?」

 僕は突然の申し出に驚いていた。というよりベタじゃね?などと不思議に思っていた。後から考えてみると、僕って驚くとこ違うくない?などと自分でも思う。

 ―――いや待てよ。ここは……………………。

 僕は面白い考えが浮かび、銃口を再び諷刺に向けた。

「わかった」

 できるだけ声音で、冷徹な感じで…………。と僕は意識する。すると。

「っ!」

 諷刺にとって、僕の行動は予想外の事らしく、驚いていた。その後諷刺はぎゅっと目を瞑り、体を小刻みにしていた。

 ―――こいつ、本当に「風神」か?

 震えている諷刺は、本当に子猫みたいで、この光景をみたらどうみても僕が悪く、そして誰にでも罪悪感を覚えさせられそうな顔だった。

 だが、僕はそのままトリガーを引いた。


  パァァンッ!


 乾いた音がビル中に響いた。けれども悲鳴は全くなく、ましてやただの肉片となったものなど一人もいなかった。

「え………………………………………?」

 僕はキョトンとした顔の諷刺に向かって、微笑む。

「これで『風神』は死んだ。お前はただの『諷刺優里』だ。少しおかしいかもだけど、お前は『素』に戻れたんじゃないのか?少なくとも僕はそう思うな。だか…ら…さ………………?」

 僕は体、特に脳に負担がかかり過ぎていて、後から聞いた話によると生きていたのは運がよく、しかも動けたとなると、もうそれは奇跡なんだそうだ。そんなわけで、この時、僕は安心したのも束の間、意識を失い、ぶっ倒れたのであった。







「またここかよ………………」

 戦いから三日後、僕はまたも白い天井を見上げる事となっていた。当然紅葉(くれは)は退院、現在は家にいる。

「すぅ……すぅ…………」

「ん?」

 僕が不思議な寝息に反応して、体を起こすと、うたた寝をしている諷刺の姿があった。

「ええぇっ!」

 僕が驚きを隠せずに、声を上げると同時に、病室のドアが開いた。

「病院ではお静かに、だぞ」

 魅蓮(みれん)はゆっくりと歩き、僕のベッドの前に立った。

「あ、あの、み、魅蓮……これ、は?」

 僕は諷刺を指さして事の顛末の説明を求める。

「諷刺優里、我がASGの新メンバーだ。お前ん家で住むことになったから」



「えぇーーーーーーーーーーー!!!」



 ―――僕の日常はまた忙しく、嵐が吹き荒れそうだ。

 こうして僕の最初の戦いは幕を閉じたのであった。

終わった~~~~~。

疲れるけど、超楽しい~~~><。

遅れてすみません。やっぱりバトルはなかなか難しい。ワンパターンになる可能性もあるし。

しばらくは戦いもないかもです。けっこう神経使ったし………………。

次は少し早くだせるかもです!

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