表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/17

~Episode10戦闘開始~

「ここは………?」

 僕は魅蓮(みれん)に連れられて前回とは違う山に来ていた。周りには木、木、木。鳥が鳴く声がして、ジャングルとでも表現すべきその場所に、ポツンと一軒、家が建っていた。見上げても視界には深緑ばかりで、青色などは申し訳程度に少し見えるだけだった。

「山だけど?」

 魅蓮は自分で持ってきたトランクを引っ張りながら、建物へと足を運んだ。

「…………い、いや、そうじゃなくて…」

 僕はげんなりした様子で訴えかける。

「……ここ………何………」

 日本にこんな所あったか?アフリカでもないのに…。もしかしてホントに海外に行ったのか?僕は知らぬ間に眠らされてその間に…?

「はぁ~」

 魅蓮は僕の思っていた事を察したらしく、盛大に溜息をついた。

煤良木(すすらぎ)、ここは日本だぞ。時計見てみろ」

 僕は左腕に身に着けている腕時計を見た。時間は事務所を出てから1時間半しか経っておらず、どう考えても日本である事を物語っていた。

「ここはお前の修行をする場所だ。危険な獣はいないし、ここに立派な家があるし、安全かつ好きに暴れる事の出来る最高の場所だ」

 そのまま僕と魅蓮は建物内に入り、一応修行の準備をする。まぁ僕は何も持ってきていないから身一つだけなのだけれど。

 建物は木造で、中にいても木の独特の香りが僕を包む。心なしか体が軽く感じられた。酸素が多いからだろうか。

「ほい、これ昼食。時間無いから早く食べろよ」

 リビングと思わしき場所には魅蓮が座っていて、サンドウィッチが置いてあった。魅蓮はもう食べ始めていて、僕の席を指を指して伝える。

「え~と、とりあえずいただきます」

 僕は目の前のサンドウィッチに手をつける。6種類くらい並べてあって、卵とハムの物やレタスやトマト、それと肉。どれも普通の物より少し大きくてとても1口や2口で食べられなさそうだった。食べている時は無言で、気まずく感じた僕は、1つ食べ終わって2つ目を口に運ぶ時に、魅蓮に話しかけた。

「なぁ、午後から何するん―――――」

「しゃべるな。黙って食え」

 ………………無下にされた。


 数分後、魅蓮は食べ終わり僕はまだ2個くらい残っていた。だが。

「早く食え」

「いえ、あの、これじゃ余計に」

「余計に?」

「なんでもないです…」

 魅蓮は僕の左横に立って、僕とサンドウィッチを凝視していた。近い上にこの上なく怖い。当然、咀嚼回数も格段に増える。

「もういいっ」

 魅蓮は我慢できなくなったようで、僕のサンドウィッチを二つ丸ごと手にして、あろう事か僕の口に押し込んできた。

「んっ」

「ほら、さっさと食えっ」

「ん~~~~~」

 女の人に食べさせてもらうシチュエーション。普通「はい、あーん」みたいな男子なら憧れの、伝説でもある最高のイベントのはず。それがなぜ、こうなった。

「うっ。…………っゲホッ、ゲホッ」

 当然サンドウィッチは僕の喉につまるわけで。

「食い終わったら修行だ。ほら行くぞ」

 僕は一緒に置いてあった牛乳で流し込むと、急いで外に出て行った。







 僕は1週間ひたすら修行した。この話は長くなるので、機会があればまた今度語ろうと思う。結局僕は1週間後、つまりは5月16日。朝3時半に起きて諷刺が言った例の廃ビルへと向かった。僕が山にこもっていた1週間、諷刺は本当に手を出さなかったらしく、碧先輩曰く、「平和そのものだったわ」だったらしい。約束をしっかり守るところから、卑怯な事は好まない真っ直ぐな人間なのか、ケガのせいで手が出せなかっただけなのか、どちらなのか迷っているところがあった。

 僕は廃ビルに着くと、腰に付いている銃をとった。これは魅蓮からもらったもので右手にはM1911コルト・ガバメント、左手にはGP100。装弾数は7+1発と6+1発と決して多くは無いのだけれど、魅蓮曰く「まだ銃に慣れてないんだから、まぁこの3つが無難だろ」らしい。ちなみに3つ目はSIG SAUER P226で予備として腰の後ろに刺してある。

 僕は相手に気付かれないように静かに一部屋ずつ確認していく。よくあるドラマみたいな感じだ。足でドアを蹴り開け、2つの銃口を前に向けて入る。

「…一階にはいないのか」

 この廃ビルは外から確認するに5階建てのようで、戦う事以前に奴を見つける事も出来てなかった。一階の全ての部屋を確認するのは想像以上に苦労し、つい数日前まで超平凡の普通極まりない生活を送っていた僕にとって、銃を常に構えながら集中を切らさずにいるというのは、それだけでとてつもない重労働だった。さらに少しずつ時間の感覚が鈍くなり、廃ビルに到着してから何分経ったかもこの時の僕にはわからなかった。


 人の気配………………?


 僕は3階に上ったところで、一旦立ち止まった。3階は1フロア全ての壁がぶち抜いてあって、よく言えば見渡しが良く、悪く言えば隠れるところが柱以外に存在していなかった。

「遅かったではないか」

 聞き覚えのある声。姿ははっきりと確認できないが、いる事はわかった。もう逃げる事は出来ない。そう自分に言い聞かして、僕は銃を構えながら少しずつ目の前の闇へと足を踏み込んだ。

「では、約束通り決着をつけようか」

「あぁ。でもその前に聞きたい事がある」

 僕は最初に襲われた時から抱いていた疑問をぶつける。

「なんだ?」

「お前はなんで戦うんだ?」

「は?何を言っている」

 風刺(ふうし)は鼻で笑っていた。

「そんなもの任務があるからに決まっているだろう。人を殺せ、人を攫え、私は依頼であれば何でもやる」

「自分の意思は無いのか」

「無いな。そんな物はとうに捨てた。それに私はこの生き方しかできないからな」

 諷刺の最後の言葉はとてもか細く、消えいってしまいそうだった。

「捨てた?じゃあこの決闘はなんだ。意思など無いのなら、僕とした約束など守らずに襲撃すればいいじゃないか。それはお前の意思で『卑怯』とか『嫌』だと思ったからじゃないのか?」


「うるさいッ!」


 僕の声を遮るように叫ぶ。その言葉には今までのような冷徹なような、冷静であるような声ではなく、静まり返っていたビルの中ではより大きく聞こえた。

「……これ以上の会話は無駄だ。行くぞ」

 諷刺はそう言い切った直後、コンクリートが抉られる程強く地面を蹴り直進して来る。僕は反射的にコルト・ガバメントとGP100の銃口を向けて対応し、銃弾を3、4発浴びせた。………はずだった。

「ふっ」

 銃弾は諷刺が手を前に出した途端に動きを止め、その場で勢いを止めた。一方諷刺自体のスピードは全く変わらずそのまま僕に突っ込んでくる。

 …この状況、前の時と同じ。舐めているのか?

 諷刺はこの前の僕と同じように拳を振り上げた。だが銃を持っている僕はその拳を止める事は出来ないので、わざと掠めるように避けて至近距離で発砲する。

「だから無駄だと言っているっ」

 弾丸は相手にあたる寸前に止まり空気中に浮いていた。続けて諷刺は僕の腹に蹴りを加える。

「ううっ」

 僕はコンクリの壁に打ち付けられてそのまま壁に倒れる。

 ―――人間ってこんなに飛ぶのかよ。

 内心そんな事を思いながら、ゆっくりと立ち上がり、今度は天井に標準を定め発砲する。全弾打ち切ったところで、思惑通り天井の一部が壊れて諷刺の上に落下した。

「だから無駄だと言っているだろう」

 諷刺が手を上に挙げたかと思うと、コンクリの塊は諷刺の体を避ける(・ ・ ・ ・ ・)ように落下していった。同時に粉塵が巻き上がり、僕は慣れない手つきだが、急いで弾を込めて発砲し、ビルの柱に体を潜めた。

「能力数値は変わらず、か」

 僕はさっき近づいた時に測定した数値を確認していた。その時、同時に身体能力数値も確認して僕は驚愕していた。腕時計型の測定器のパネルには平均613、問題の足の所は793と表示されていた。

「半年でこんなに変わるものなのかよっ」

 僕は相手の場所を確認し、次の柱に移る際に発砲し続ける。立て続けに発砲し、その後銃を腰に戻し、一気に相手に突っ込んでいった。

 諷刺は例の通りに弾丸を止め、僕に対抗するかのように突っ込んできた。

 ―――能力発動『思考弾丸(ソート・ブレット)』ッ

 僕の目は漆黒から透き通るような綺麗な蒼色に変わる。一気に突っ込むスピードを跳ね上げてそれに怯んだ諷刺に一発お見舞いする。

「ぐうっ」

 諷刺は声を上げて吹っ飛ぶ。

 …こっちから突っ込んだスピードにプラスで相手が突っ込んできたスピード分が上乗せされてる。これならっ。

 諷刺はゆっくりと起き上がり、呼吸を整わせた後に口を開き始める。

「まさかここまで能力を使えているとはな、驚いたぞ。それは強化系か?身体能力が上がっているようだが」

「どうだかなっ」

 止まっている諷刺に向かって、さらに追い打ちをかけようと蹴りを食らわせようとする。

「ま、答えないのであればこちらから確認するまでだ」

 蹴りは弾丸同様止められて、その瞬間何か(・・)が足に突き刺さる。

「ぐっ、まだまだぁ!」

 能力をフルに使って、全力で足に力を込める。すると、完全に止められていた足は少しずつ動き始め、途中からは蹴りのスピードを取戻し、そのまま諷刺の頭を蹴り飛ばした。

 その瞬間わずかな風を感じて、僕は諷刺の能力についてある考えが浮かぶ。

「はぁっ、はぁっ」

 僕は全身の痛みに耐えながら、測定器を自分にあててパネルを確認する。

「全身数値+400、平均680。やっぱ無理があるか……」

 元々体力の無い僕は、魅蓮の修行によって人並みの体力は付いたものの、強化するのには体に負荷がかかりすぎていて、修行でも+250が体がついていけるギリギリのラインで相手の能力を振り切るためとはいえ、+400は正直いつ体が動かなくなってもおかしくないレベルだった。

「はぁっ。お前の能力がわかった。強化といっても皮膚とかの強化の防御系では無く、筋肉に働く攻撃系の強化か」

「だったらなんだよっ」

 僕は拳をもう一度握り、攻撃の準備をする。

「せっかくだ。私の能力も教えてやろう。私の能力は『|風の女神《wind Goddess》』。名の通り風、いや空気を操る能力だ。主に空気を固めているのだ。だからこんな風に剣を作り出す事もできる」

 諷刺は手を前に出すと、何か、いや空気の剣(エア・ソード)とでも呼ぶべきものが握られていた。

「どういうつもりだ」

「ん?」

 諷刺は空気の剣(エア・ソード)を握ったまま、僕の言葉に耳を傾ける。

「こんな事してもお前に何の得がある?むしろお前にはリスクしかないだろ。何が目的なんだ」

「考えすぎだ。ただそちらの方が平等だと思っただけだ」

 諷刺は少し思わせぶりな表情をとり、そのまま斬りかかってくる。

「まだ他にもあるようだがなぁっ!」

「ちッ」

 僕は避けられないとふんで、GP100を投げて相手の剣に当てる。その後にコルト・ガバメントを投げ、相手の視線を奪った所にSIG SAUER P226を腰から抜いて相手の腹に向かって発砲する。強化しているので、弾丸は狙った所に寸分違わずに飛んでいき、相手の体まで届いた。

「ううっ」

 すると、諷刺は呻き声を上げながら倒れた。

 ―――おかしい。弾丸は当たったが、ここまで痛むか?

 僕が疑問を抱いていると、諷刺は叫び始めた。

「ううっ、ううう。ううわあああああァァァアァぁぁァァァァァアあああぁぁぁあぁァぁァァぁぁああぁァァぁぁああぁァぁァアアぁぁァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアァァァァァァァァァァァァァァァ!あ、あぁ、うぐっ、出て、来るな、お前、なんかっ、出て来…………る……………な……………………………………」

 ガクッとでも表現するかのように、糸が切れた人形かのように動かなくなったかと思ったら、急に彼女の髪が短くなり、ロングからショートに変わり終えたら何事も無かったかのように立ち上がった。

 彼女は首を鳴らし、口角を笑うとは言えないくらい上げ、口をゆっくりと開けた。

「あ~あ。やっと出てこれたぁ。さぁ第2ラウンドの始まりだぁッ!」

一言、遅くなりました。今回はそれだけです。本当に本当に申し訳ございませんでした。能力名とか、いろいろな事に悩んでいたら(主人公の事)時間が想像以上にかかってしまい遅くなってしまいました。できてそのまま投稿しているのでおかしいところもあると思いますが、そこは静かに目をつぶっていただくか教えて頂けると非常にありがたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ