第七章
今回ちょっと長めにしてみました〜♪楽しんで頂けると光栄です☆
「う・・・・そ・・・・・・私が、過去から来た・・・・?」
ことりは絶句していた。
「でも、私、ずっと前から貴方のこと、知ってる・・・」
千羅の瞳を、ことりはじっと見つめる。
「瞳の輝きは、何年経っても変わらないね」
そう言ってことりはにっこりと微笑んだ。千羅は目を丸くする。
「ことり、お前、記憶が!?」
千羅の言葉を聞いたことりは、悲しそうな顔をして、首を横に振った。
「ううん。でも、さっきので記憶の一部分が取り戻せたんだ」
「そうか・・・」
『あらぁ〜?こぉんな所で、私がずっと探してた人達に会えるなんてねぇ〜』
突然、空から声が降ってきた。
―ザザザザザ
ふわっ・・・
黒い影が、空から落ちてくる。顔などの細かな容貌は、逆光に照らされて見ることができない。
その影は、華麗に地面に着地した。
『こんにちは。時を、進めに来たわ』
長い髪、澄んだアルトの美しい声で、その影は言った。
まるで、何かの始まりを告げるかのように、含みを帯びた声色で・・・・。
「誰だ!?」
影は静かに歩み寄る。長いストレートの髪が靡き、風のなすがままになっている。
「普通は自分から名乗るものよぉ〜?ま、でも今日のところは別にいいや。私は貴方たちと、同じよ」
「え・・・・どういうこと?」
明らかに不安そうな表情でことりは訊ねた。
「まぁだ分からない?私も貴方達と同じ、『生命の樹』に特別愛された・・・・と呼ばれているのかしら?神子の一人なのよぉ〜」
軽い口調のその口調とは裏腹に、影に目が慣れやっと良く見えるようになった彼女の瞳は全く笑っていない。
燃えるような灼眼が、品定めをするように二人を見る。千羅は特に動じる訳でもなく、ただ静かに注がれる視線を見返していた。
「・・・・・・・・・・っ!!」
ことりが頭を押さえる。
「なっ!!何・・・・コ、レ・・・・!!」
呻き声でことりは言った。灼眼の少女は愉快そうに口端を吊り上げた。
「お前、ことりに何をした!」
千羅が威嚇するように強く言ったが、少女は表情を崩すこともなければ、返答することもない。
「ことり、ことり!!」
「なっ・・・・・・・!!」
ことりが急に静かになった。
奇妙で嫌な沈黙が流れる。灼眼の少女の口元の含み笑いが緊張感を増幅させた。そのせいか千羅は手に汗をかいていた。
「・・・・・あなた、は・・・」
ことりが幽霊でも見るような表情で灼眼の少女を見た。声が微かに震えている。
「あなたは、誰・・・・?」
「ふふっ」
少女は凍った目つきで笑った。そして静かに燃え上がる二つの瞳でことりの瞳の奥を覗き込む。
「貴女の質問にはさっき答えているわ。愚問ねぇ〜。うふふふっ」
酷く虚ろな笑い声が木霊する。ぞっとするような響きで。
「違う!そうじゃない。あなたは、何者・・・・・・?」
少女が口元に浮かべた笑みを崩すことはなく、意味ありげな笑みを浮かべたままで、少女は言った。
「今私は貴女の質問に答えない。ま、せいぜい自分で考えてぇ〜」
特有の軽い口調でそう言うと、少女の声のトーンが少しだけ下がった、ように感じられた。
「貴女は信じてはいない。信じていない者に、真実は見出せない」
千羅は訝しげに眉を寄せ、少女を見た。
「何が言いたい!?」
静かだが厳しい口調で千羅問う。しかし少女はうっすらと楽しそうに微笑んだだけで、その問いに答えようとはしなかった。
「自分で答えを導き出さねばならないことよぉ〜。私が教えてあげる程安い問いじゃないわねぇ〜。うふふっ。さぁて、そろそろお暇致しましょうか。Salut!」
言うが早いか、少女は跳躍すると、一回転して木の枝に飛び乗った。
「待て!!」
千羅も跳躍して近くの枝に飛び移った。
「c'est l'heure !炎王!!」
ことりが呆気にとられている。
「フランス語だな。時間だ、と言った」
ことりに訊ねられる前に、先手を打って千羅が言った。
「へぇー。よく知ってるね」
ことりが暢気なことを言っている間に、突然現れた炎に千羅が襲撃を受けていた。
「チッ!何だコイツは!!」
炎はうねりながら形を作り、炎の狼が現れた。
「気分がいいのか?―・・・」
炎が少女に訊ねるが、肝心な名前の部分が聞き取れない。
「Si, pourquoi pas ?」
炎の狼が笑った。
「そうか。それは良かった」
「くそっ!厄介だな」
歯噛みしている千羅に、ことりは躊躇いなく質問をする。
「せんらー、何て言ってるのー?」
千羅が答える前に、余裕の笑みを浮かべた少女が答えた。
「・・・・・・そうね、悪く無いわ」
そしてにっこりと微笑むと、少女は言った。
「A bientot j'espere! Au revoir」
「・・・・・・・え?」
「くっ!!」
千羅は狼との戦闘に集中していて、会話が耳に届いていない。
「近いうちに、また会いましょう?じゃあね」
皆様こんばんわ〜^^お元気でしょうか?第七章で御座います。今回フランス語が出てきますが、正直結構大変だったりします><フランス語の知識が全然無いので;おかしいところが多々あるかと思いますが、広い目で見てやって下さいまし。