第二章
―何もかもが暗いから、旅に出ようと思った。何も変わる筈はないけれど、それでも、希望だけは捨てられなかった。希望を抱いても仕方がないと分かってはいても、どうしても捨てることが出来なかった。あの日、あの時から―
千羅はふらりと旅に出た。彼は風の様に気紛れで、つかみ所がなかった。
千羅は行く当てもなく、ただ歩き続けた。少し経つと、一人の少女が水辺で魚を観察しているのが見えてきた。千羅は何故だか分からなかったが、自然と少女の方へと足が進んだ。そのまま千羅は少女の目の前まで行った。
少女は誰かの気配に気がつくと、顔を上げ、
「・・・あら?こんな所に私以外のフレアが来るなんて、珍しいこともあるものね。初めまして!私はこの近くに住んでいる、ことりっていいます。」
千羅は何故か、初めて出会ったその少女に懐かしさを感じた。
咲き誇る桜の下で、こちらを向いて笑っている者がいる。もう随分と昔の記憶だ。笑っている者の顔は、ぼんやりとしか思い出せない。何故今こんな事を思い出すのかと、現の夢を見ながら千羅は思った。ひょっとしたら、ことりという少女に笑っている誰かの面影を感じたからなのかもしれないと千羅は記憶をめぐらせる。
「私は千羅。今住んでいる土地を離れて、旅をしているところだ」
千羅は無表情で言った。彼はあまり表情が変わらない。そのせいで無愛想なのだとよく言われる。しかし、ことりはそんなことは気にも留めなかった。
「千羅って・・・あなた、もしかして<白狐>!?」
「ああ、そうだが?」
千羅はため息混じりに言った。彼がその名を出せば、ほとんどの者は怯え、それ以上何も言う事はなくなった。だから千羅は自己紹介が嫌いだった。しかし、
「うわぁ、すごい!本物初めて見たよ!!旅の途中なんでしょ?よかったら私の家でお茶でも飲んで行かない?」
ことりは嬉しそうに笑ってそう言ったのだ。千羅はそんなことを言われた事がなかったので、驚き、どうしたらいいのか分からなくなった。
「千羅、驚いてる!噂で聞いていたのとは全然違う人だね!まぁ、噂なんて初めから信じてなんかいなかったけど」
そう言ってことりは千羅の腕を掴み、千羅の返事を聞かぬまま、千羅を自分の家まで引っ張って行った。
皆様こんにちは☆第二章で御座います。楽しく読んでいただけたでしょうか??少しでもあ、これ楽しいなと思っていただけたら嬉しいです。次の章も頑張っていきたいと思っておりますので、応援のメッセージなどいただけると本当にありがたいです!では、次の章でお会いしましょう♪