第一章
「・・・私相手に雑兵如きをよこすとは・・・。私も随分となめられたものだ」
赤い鮮血が彼の頬から滴り落ちる。彼の強さはもう誰の手にも負えない程になっていた。
「もう誰も私を止めることはできない。せいぜい足掻くがいい」
そう言って恐ろしい表情で笑う彼の瞳の奥には、何故か涙が見え隠れしているようにも見えた。
「だがもし・・・もしも私を止めることができたのならば、私は・・・」
悲しそうな、絶望的な表情で、彼はある筈もないことを呟いた。
ここは太陽と月の間の星、アルタと呼ばれていた。西暦や、今まで辿ってきた歴史は一切不明。誰もが調べようとすらしない。彼等にはそんなことは関係ないのだ。彼等にとって歴史とは、生きていくうえで必要としない、ささいなことだった。この星に住まう生命は、フレアと呼ばれる二足歩行で羽の生えた生き物のみだった。かつては沢山の生命が闊歩し、生命に満ち溢れた美しい星だったと伝説に残されているが、いつの日か、異常なまでに急速に進化した生命のみが生きることが出来る、空虚な星へと変わっていった。
彼の名は千羅といった。人々は彼の白く美しい、狐のような姿から、彼を<白狐>と呼んだ。
―白狐の千羅 アルタを駆ける銀色の風―
千羅はアルタに住まう数千万のフレアの中で、最強と呼ばれ、唯一独立した存在だった。アルタのフレア達はみな、千羅のその異常なまでの強さを疎んだ。彼のその強さは、彼自身が望んだことではなかったのに・・・・
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