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女尊男卑法  作者: 音根ch
8/10

漆、幸せに包まれ

長らくお待たせ致しました。


え?

待ってないって?



そう、ですか。

はい、はい。

「私、私ね、あなた..いえ、准一。私、准一の事が好きなの!!!!」



「いいよ、桜。俺もお前の事好きだから。」








「えへへっ」


顔がにやける。

ニヤニヤ、ニヤニヤ。


「俺もお前の事好きだから。だってぇ!」


「…桜、あんた頭大丈夫?私、いい病院知ってるからさ、紹介してあげるよ?」


むっ、失礼だな。

この幸せに包まれている私に失礼な態度をとるこの子の名前は水城 千夏(みずき ちな)

頭良いとか可愛いとか紹介しがいのある子だけど、今はそんなことどうでもいい。前に遠坂君が千夏は68で決定だなって呟いてたけど、何の数字だったのかな。それはともかく…


なんて言ったって、私は『リア充』ってやつになったんだから!


「桜さーん。聞こえてますかー?むっとしたと思ったら今度は急ににやけるし、何があったんだー?」


あぁ、静かにして。

私は今、今後の予定について考えてるんだから。

メールアドレスは渡したから、その時に色々と話そうかな。

夜が待ち遠しいよー!


「…ねえ、これって新手いじめ?それとも放置プレイの一環なの?一言くらい反応してくれてもいいじゃない。」


「あれ、千夏いたの?てっきりもうどこかに行ったのかと思った。」


「その扱い酷くない?」


むすっとしているつもりなんだろうけど、可愛いから怒ってるようには全く見えない。3ヶ月近く一緒にいる私だからこそ分かる怒ってる表情。

なんて、脚色すると千夏の株価が急上昇。気になっているあの人のハートも一撃☆


「さ、ささ桜!なんであいつのこと知ってるの!?私、桜に言ったっけ!?」


おとと、つい口に出しちゃってたみたい。

それにしても、あいつって誰だろ?


「千夏、あいつって誰のこと言ってるの?」


「え?隆宏のことじゃないの?」


「隆宏って、遠坂君のこと?」


「え?あ、その、違うの?」


適当に心の中で呟いただけのつもりだったんだけど。

千夏の物言いから、これは…!!!!


「さっ、桜!忘れて!今すぐさっきまでのこと忘れて!」


「そっか、千夏って遠坂君のこと好きなんだね。」


「あぅあぅ…」


おお、見事に茹でタコだ。

まぁ、うすうす気付いてはいたんだけどね。

乙女オーラを醸し出してたし。

でも、千夏って素直じゃないからねー、ツンデレキャラさんだよ。


「桜、その、隆宏のやつには言わないでね?」


愛いやつだなあ。この顔で遠坂君の前に行けば一発で落ちるだろうに。


「分かってるよ。遠坂君にはもちろんの事、誰にも言わないよ。」


「ありがとさくらぁ~」


「ひゃあっ、だ、抱き付いて来ないでよ!」


「あぅ、ごめんなさい。」


女の子って柔らかいよね!

でも、その、准一の方が暖かいっていうか、落ち着くっていうかぁ…//


「南谷に水城。君達は二人してなにニヤニヤしてるんだ。」


「あ、相沢さん。」


「さん付けだなんてやめてくれ。呼び捨てでいい。」


「えーと、じゃあ葵さん?」


「さん付けしないでくれと言ったのに。」


「葵さん、それでどうしたんですか?」


「あぁ、南谷の方に聞きたいことがあったのだが、二人してにやけているものだから少し引いてしまってな。」


「引かれるほどにやけてたの、私達…」


私に、聞きたいこと?

なんだろ、心当たりあり過ぎてどれか分からないよ。

とりあえず、この候補の中で有力なものを選抜するとしたら、遅刻したことについてかな。

なんかすでに次が4時限目だし。

葵さんは、学級委員長だから先生に報告する義務があるとかないとか。


「まぁまぁ、千夏がにやけてたのは置いといて、葵さん私に聞きたいことって?」


「にやけてたのは桜もだよ!というか、桜はなんでにやけてたの?」


「千夏こそ、何でにやけてたのかな~?」


いちいち反応してくれるなぁ、千夏は。

せっかく収まってきたのに、もう真っ赤だよ。

確かに遠坂君は格好良いけど、性格がちょっとね。

黙ってればモテるっていう部類だよ。

それに比べて准一は、喋っても、黙ってても格好良いからなぁ//


あ、准一と目があった!

すぐ、離されちゃった。照れてるのかな?


「あ~、君達、そろそろ本題に入ってもいいかな?」


「あ、すいません。というか、私もですか?」


「いや、これといって用はないのだが、私の一存で退いてもらうほど重要な話しでもない。少々上目線かもしれないが、いてもいなくてもいいという状態だ。」


「…なんか葵さんって思ってたよりも毒舌なんですね。」


「ん?そうか。気分を害したのであれば謝ろう。以後気をつけることにする。」


「い、いやいや。そんな気にしなくても。…というか桜!そろそろ帰ってきなさい!」


あう!

あぁ~、もっと准一見てたかったのに~

やっぱり、交際前後だと外見もなんとなく違ったように見えるね。


キーンコーンカーンコーン…


「む、なってしまったようだ。仕方ないか。南谷、また後で改める事にしよう。」


「あ、はい。それじゃあ後で。」


「それじゃ、私も戻るわ。」


「うん。分かった。」


葵さんと千夏は自席に戻って行った。

私はというと、相変わらず視線が外せずにいた。



















「南谷、念の為に聞く。変なことはしでかしてないな?」


「もちろんしてません。」


放課後、葵さんが私の席に来るなり質問をしてきた。

昼休みに大々的に宣言したために一応という意味で問われてるのかな。

キ、キキキスはし、したけども、変な事なんてしてない。未遂ではある気もするけど。

でも、大変だった。

昼休みが終わるまでは質問の嵐。

いつから!?とか、どうして!?とか狙ってたのに!とか。


最後の発言は、見逃せないです。

特定し次第逮捕します。


なんとか、チャイムがなるまでもったけど、授業中も紙が回ってきたりした。

質問が主だったけどね。


今日は、5時間授業だったから帰る支度をしてるところに葵さん登場。

今に至るというわけ。


「そう、だな。流石に授業をサボって…なんてことはないはずだな。それじゃあ、本題にも繋がるのだが、どうしてまた遅刻なんて?」


「それは、その、今日、告白したから、です。」


あ、明らかに怪訝そうな顔です。

う~、普通に告白したならそこまで遅くはならないだろうって言いたそうな顔してます。


「そうか。まぁ、いい。告白してて遅刻したということだな?」


あれ、葵さんって意外といい人?


「はい。恥ずかしながらそうです//」


「うん。しかし、どう報告したものか。」


あうっ

ど、どうしよ?

まさか、遅刻した理由が保健室で男子生徒とにゃんにゃんしてたからです!なんて言えないし。

いや、でも悪いものじゃなかったしな~

准一って結構シャイだったという新しい発見も出来たし!


なんて、現実逃避してる場合じゃないね。

やっぱり、スタンダードに仮病?

あ、それなら、登校中に足を捻って、それを看病しててもらったっていうことにしよう。それなら、准一も遅刻した理由も出来るしほとんど実話だし完璧!


「ということにしましょう!」


「え?あ、うん。いやいや、何が?」


あれ、葵さんって意外に天然?



















「い、一緒に帰ろ?」


あう、緊張して声が裏返ったかもしれないよ。


登校はいつも一緒に来ていた。でも、下校は一度も一緒にしたことはない。

何故かと言うと、それは私の夢に起因する。

女の子なら一度は白馬に乗った王子様を夢見るように、私にも憧れに近い夢があった。


『好きな人と手を繋いで登下校を共にする。』


こんなこと、恥ずかしくて誰にも言った事はない。

白馬に乗った王子様より断然庶民的で夢がない。でも、それが私の憧れであり、夢であった。

そんな普通の幸せを望んでいるからかもしれない。


私は、幸せに大小はあると思っている。

幸せに大きいも小さいも無い。小さな幸せも大きな幸せも幸せは幸せだ。

なんて、そんなことを言う人もいるじゃないかな。でも、私はそうは思わない。

その言い方だとまるで大きな不幸も小さな不幸も同じ不幸である。と、言っているような気がするから。

幸せなら、大小関係なしに嬉しいもの。不幸なら大小関係なしに悲しいもの。

これに、納得がいかないのだと思う。

例えば、皆の好きなショートケーキ。

大きなショートケーキと小さなショートケーキ、どっちが欲しい?

両方とも結局はショートケーキなんだから、結局はもらえたら嬉しいものなんだから、どちらでもいい?


少し、暴論だったかな。でも、感覚として私が考えている事はこう。

ないよりは小さくても仕方ない。なんていうのは謙虚。

どうせなら大きい方がいい。なんていうのは素直。

どちらとも、小心者、傲慢と言い換える事もできるけど。


でも、それでも、好きで小さい方を選ぶ人もいる。私はこの部類に入ると思う。

遠慮してるわけでも、欲がないわけでもない。

小さい方が嬉しい。


私みたいな人はきっと珍しい。そして、過去に何かを抱えてる。

小さい方が嬉しいと感じる理由となる過去が。



まぁ、そんなこんなで私の夢は白馬の王子様ではなく普通に庶民的な登下校である訳でして。

夢への第一歩として准一にお誘いをかけている訳なのです。


鐘を何度も響かせているかのような心臓のうるささに嫌気よりも幸福を感じながら、尚且つ不安を感じながら彼の返答を待つ。


勝算は、あった。

下駄箱のある玄関で誘ったのだから、断りはしないだろうって。

汚い?ふんっ、何とでも言いやがれです!

私の夢を叶えるためには努力は惜しまないのです。

……でも、迷惑そうにしてたら、一人で帰ります。



「よし、それじゃ一緒に帰るか!今日は、特別な日だからな!」


ニカッと笑う准一。

鼓動が早くなるとおもっていたけど、ぎゃく。止まった。


あくまで、そう感じただけだけど。

それでも、確かに鼓動が感じられなくなった。さっきまであれほどうるさかったのに。


他に、集中していたからかな。

准一から、目が離せなかったからかな。



靴を履き替える准一に声を掛けられて我に返る。

一緒に、一緒に帰る。

それだけじゃない、私には使命及び夢がある。手を繋ぐという一世一代の大勝負がっ!



















帰り道、准一の声は左耳から入って右耳へ通り抜けて行く。

その間、頭には何も入ってこない。

機能停止したと思ってた心臓もまた早鐘を鳴らし始める。

准一の声が聞こえる度に相槌をうつ。

そして、頭の中に響くのはうるさいだけの太鼓の音色と、手を繋がなければという義務感の叫び。

本当に叫び。もはや絶叫。


だからなのか、手が無意識に動く。

気が付く度に引っ込めるけど、また動く。

手を繋ごうという義務感がそうさせているに違いない。


……繋ぎたい。

准一の手は大きくてゴツゴツしているのかな。それとも、柔らかいのかな。



うわ、流石に引く。

自分の思考回路が恨めしい。クエン酸回路と交換してください。



なんて考えているうちに、また手が無意識に動く。

引っ込めようと手に力を加えると同時に、私の耳と頭が准一の声をキャッチした。「今度、一緒に探してやるよ。お前の手袋。」と。


何を言ってるのか、わからない。

この時期に手袋をつけている子なんてバカもいいところ。

よほど自分の手が他人に見られたくない人じゃないとつけやしない。

なのに、何故…?


私の中である仮説ができた。

手を繋ぎたい

→手が無意識に動く

→准一が勘違い

→手袋をなくしたと思う

→探してあげよう



多分、いや、十中八九この仮説通りだと思う。


私、そんなドジっ子に見られてるのかな。


そわそわしてるのがばれた恥ずかしさとドジっ子扱いされた怒りでつい手をあげてしまいました。てへっ


「桜、悪かった。充分反省したよ。」


キラッと歯が光を反射して光っていた。ように見えた。

正直なところ、格好良過ぎる。

もう、格好良過ぎる。


大事な事なので二回言いました。


いやしかし、色を使って私を騙そうだなんて100光年早いわ。


はいそこ、光年は距離だから時間じゃないとか言わないの。

わ、わざとなんだから!


「手、冷たいんだろ?」


え?

えええ?

冷たくありませんけど。

末端冷え性とかだった気もするけど、この時期は冷たくな「ほらっ、これで多少は暖かくなるだろ?」


ギュッと、手を繋がれる。




………


………………


…………………………





ん?

これ、あれ、それ、どれ?




ここからの記憶は残ってない。

ただ、朧げに覚えている事は、『暖かい』これだけだった。



















時刻は午後8時。

つい先ほど、夢の中から帰ってきた。

いや、夢じゃなかったかもしれない。

むしろ、夢の方が良かった。

やっぱり、現実の方がいいかな。


混迷。


とりあえず、准一と一緒に帰った後の記憶が途切れていて、今気が付いたと。

ちなみに、見渡す限りここは私の家のベッドの上。

夢ではないと思うんだけどな。


動転してた間に何か変な事をやらかしてないかな。


テレビすらついていない静寂。


せめて何をしていたかのヒントくらいはないかと台所に向かうと、自分が食べたと思われる夕食のお皿が自分で洗ったと思われる状態で置かれていた。


自分でも何を言っているのかよく分からない。

記憶に全く残っていないけど、お腹は満たされているから、きっと自分で食べたものだと思う。


手持ち無沙汰になったので、自室に戻って宿題を済ませることにした。

その間、准一からのメールが来る事を期待しながら。



宿題が、あっという間に片付いたところで午後9時半。

未だに、メールが来る事はない。



午後11時。

録画していた音楽番組を見ながら時間を潰しているも、一向に来る気配がない。

なんとなく、心配もし始める。


0時。

日付を跨いだ。

何かあったのかと真剣に心配してしまう。

帰ってすぐ寝ちゃったのかな?と、希望的観測出来る範囲を私の許容量がオーバーしている。

記憶がままならないので、相乗効果としてさらに心配になってしまう。

あと、30分のうちにメールが来なければ、家に行こうかな。でも、こんな時間だし、天気も荒れてるし。


んー、どうしたらいいんだろう。


付き合った初日から重たい女なんてレッテル貼られるかな。うざいとか思われるかな。


考えれば考えるほど、混乱するのが分かったので、思考を停止。

結論、難しいことは知らないぜ!本能の赴くままにしようぜ!




いえーい!

准一の家に行くぜ!


傘一本を手に、外に出ると、一瞬にして傘が吹き飛んだ。




落ち着こう。


危うく、本来の目的すらも忘れるところだった。

一体、私の本能とはなんだったのか。


准一の安否を確認しに行く。

これが、私の目的。

余計なお世話かもしれないけど、後々後悔するような羽目になるくらいなら、マシだと思う。


それに、准一はきっと分かってくれる。自分で考えたって、准一がどう思うかなんて分からないもの。信じるしかない、よね?



確か、去年の修学旅行に行く時に買った雨合羽が私の部屋にあったはず。

それを取りに行って、家を後にした。




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