眠たい彼女の生き方!
ーとある静かな住宅街の中の、小さな家。
「おい、いいかげん起きろよ美奈姉」
詰襟を着た少年がベッドの布団にくるまっている姉、石動美奈から、毛布をひきはがす。
「ん~、あとちょっと・・・」
布団をはがされた美奈は可愛く寒そうに身震いすると、ひきはがされた布団の代わりに近くにあったタオルケットを身にまとう。
「『あとちょっと』?そういう言い訳を使って何回遅刻寸前の時間で俺を巻き込んで家を出てると思ってんの!?」
「いや、今度は大丈夫だから~・・・。ホラ、私加速装置をつけてもらったの、夢で」
「夢の話じゃねーか!」
弟は寝ぼけまくっている姉に律儀にツッコむ。意外と姉想いだ。
「ったく、さっさと起きろよ。何故かお前が起きないと俺が親父にローリングソバット極められるんだよ」
「それは、アレだよ。俊への愛の鞭だよ」
「いや、愛の鞭の割には純然たる殺意的なものも混じっていたが・・・?」
俊は昨日、元プロレスラーの父に食らったブレーンバスターの凄まじい落下速度とその美しいフォームを思い出しながら変な汗を垂らす。ちなみに大体のお父さんは息子より娘のほうが可愛かったりするのだ。
「さぁ、起きろよ。もう十分だろ?」
俊がタオルケットをひっぺがしにかかると、美奈は子供のおもちゃの取り合いのようにそれを掴んで離さない。
「だーめ、私は今から旅行にでかけるのっ」
「嘘付け、夢の中の話だろ?つか今から学校だろうが!」
「いや、ちゃんと行くもの。フワフワした世界に」
「やっぱ夢の中じゃねーか!」
俊が律儀にツッコんでいる隙に美奈はタオルケットを巧妙に取り返して体にくるむ。
「あ、こら!起きろよ美奈姉!」
「ん~むにゃむにゃ・・・、もう食べられないよ・・・」
「寝るの早っ!そして寝言はテンプレート!?」
あまりの美奈の(無駄な)睡眠スキルに実の弟も驚く。
「う~、こうなったら・・・!」
策に窮した挙句、俊は最終手段にでる。
「あ、そういや昨日買っておいたケーキってまだ冷蔵庫にあったよな?」
「おはよう、俊君」
寝ることの次に甘いものが大好きな姉の性格を知り尽くした、弟の戦略勝ちである。
「さぁ、さっさと下に降りようぜ」
「うん、着替えていくから待ってて」
「おう」と言って部屋を出ようとした俊は振り向きざまに忠告する。
「・・・寝るなよ?」
「・・・・・・大丈夫だよ?」
「いや、すんげー自身無さそうに答えないでくれるかな!?」
朝っぱらからシャウトする弟を「大丈夫、大丈夫」となだめすかして美奈は俊を下に降りさせた。
ー五分後。
「・・・美奈姉、遅いな」
すでに朝食を平らげた俊が一向に足音のしない階段のほうを覗き込む。
「また、寝やがったな・・・!!」
あまりの往生際の悪さに歯軋りしながら俊が階段を上がっていく。
「美奈姉、さっさと降りて来・・・!」
その廊下で俊が見たものは、廊下にうつぶせで倒れている美奈の制服姿。
「美奈姉・・・、どうしたんだよっ!?」
気が動転した俊が慌てて姉を抱き上げる。
「ZZZ,ZZZ(寝息)」
「・・・・・・(沈黙)」
がすっ(俊が美奈の頭をたたく音)
「痛っ・・・!、・・・・・・ZZZ(また寝息)」
「いや、起きろよぉぉぉ!?」
「むにゃむにゃ・・・、もう食べられないよ・・・(寝言)」
俊の叫びが静かな住宅街に響き渡る中、こうして石動姉弟は今日も遅刻するのであった。
どうも、初投稿です☆
初投稿なのに時間がなかったために少し仕上げが・・・(汗
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