第三回 柴昧、湯盈らに金を貸すこと (逃亡編③)
これは複数の歴史小説を読んでそれをもとに考えた作品ですが、決して史実ではありません。混合なさらないでください。また同じく登場人物においても実在の人物ではありません。(モデルとなる人物はいる場合がございます。)
また、これを書くもとになった小説とは別物であり、それが考えるもとになっているのであって決して二次創作物ではありません。
日本人と中国人の言葉が通じる、という独自の設定をご理解ください。
湯盈一行は北に向かった。柴昧に会うためだ。
しかし、ここで大きな問題が浮かび上がってきた。
「おい湯盈、このまま北上すれば金国の領土に入っちまうぜ!まあ斡綴(オット:金国の総帥)の首を取るいい機会だがな。」と牛邦が言ったのだ。
「牛邦、冗談はよせ。」
そういいながらも湯盈は焦った。冗談ではすまない話だからだ。自分たちは漢民族だ。金国内に入ったのが見つかれば、捕らえられるかもしれない。
湯盈は不安になり尋ねた。「呼延将軍、柴昧殿の家はどの辺りですか?」
「国境の近くだ。」と呼延恒。
湯盈は驚いた。「ええっ!それならなぜ早く言ってくれないのですか?」
「すまんすまん。しかし、あなたたちは逃げている身だろ?なら、宋にいるも金にいるも同じじゃないか!それに捕まっても身分を伏せ、『宋国の庶民』を演じればどうにかなるさ。」
と呼延恒は言ったが、湯盈にはまだ疑問がある。呼延恒は宋の将軍なのだ。
「あなたは官軍の将ではありませんか!」
しかし、「そんなものこうしてやればいいさ。」といって呼延恒は官軍の服を脱ぎ捨ててしまった。
「ああっ!」湯盈は叫んだが、呼延恒が納得しているのでなんとも言えない。
こうして問題は解決し北に向かい、ついに柴昧の家に着いた。
そして家の中に通され柴昧に会うと、親しい呼延恒が事情を話し、最後に「日本へ渡るのに必要な分の金を貸していただきたい。」と頼んだ。もともと気前の良い柴昧は快く貸してくれたが一行は重大な勘違いに気づかなかった。呼延恒の頼み方がまずかったためにまた一行は悩む羽目になる。
しかしこの時は柴昧に
「私たちと行動を共にしませんか?」とだけ問い
「そんな気持ちがあるなら官職を捨てたりしない。」といわれると、そのまま柴昧の家を出てしまった。
その後、一行は「仲間は多いほうが良い。北に行けば文景湖などに昔の高恵山の仲間がいるかもしれない。」という呼延恒の意見を取り入れ、さらに北へと向かった。
次はどんな困難が湯盈たちを待ち受けるのか?新たな問題とは何なのか?それは次回のお楽しみ。