王太子視点
「うわ。モウア伯爵夫人とその子供達の魔道写真、笑顔が気持悪いな」
「これ、マックス・・・」
我が友、近衛騎士団長の子息、マックスは直感で物を言う。
私はこの国の王太子ビルデガングである。
生まれる王子の養育係の選考書を見ている。
モウア伯爵夫人は子育て名人だそうだ。
「何だか、子供特有の残酷さ。虫を踏み潰す時の笑顔に似ているぜ。ビル、こいつは辞めた方が良いぜ。俺はイタズラしたら爺ちゃんに拳骨を喰らったぜ」
「・・・うむ。そうか・・そう言えば、私も拳骨を喰らったな。懐かしい」
「ゴホン!」
「あっ、爺ちゃん」
咳をするのはマックスの祖父にして、私の爺やだったガーランド卿だ。
爺やに生まれてくる王子の養育係を頼もうとしたが、膝を悪くして後身に譲ると言っている。
細身だが、声が大きい。
「うむ。殿下はぁああは愛が深いですな」
そうだ。私はアリシアを愛している。
理屈じゃない。
生まれてくる我が子に最高の養育係をつけたいのはエゴだろうか?
「あなた、この選考書には、前妻の子エルダは、夫人を嫌って外国で贅沢に暮らしているですって、そんな書き方をする方は嫌だわ」
「アリシア、大丈夫か?」
「ええ、大丈夫よ」
それから、いろいろな人物を選考するが何かが足りない。
だが、貴族院の養子縁組の書類を決裁しているときに、とんでもない告発文書が届けられた。
「虐待だと?エルダ嬢?そうかモウア伯爵家か?やはりマックスの直感は正しかったか」
我国では子供は保護をする傾向がある。
子供は女神様からの贈り物。
戦時の時に人口を保つ
など理由はある。
法令で12歳未満の見習い・就業は禁止、見習いでも給与の保障、長時間労働の禁止などある。
結論は、すぐに決まった。
「平民騎士に恩赦を実行する!」
養育係になってもらうのだ。
しかし、意外にもガーランド卿が反対をした。
「陛下、エドの上官の命令の不服従は確かです。これを許すと悪しき先例になります」
「うむ・・・」
古今東西このような問題がある。
ある国に暴君がいた。臣下の妻を召し出し。王宮の上から弓を射て平民を殺す残虐な王がいた。
しかし、王位継承権2番目の王族は聡明であった。
義憤に駆られた騎士が王を弑した。。
2番目の王族が王位についた。
・・・その後、即位した王は騎士を処刑した。泣きながらだ。
また、ある国では同じ理由で近衛騎士団が王を弑した。
近衛騎士団は武勲を讃えられたが、その後、近衛騎士団は王位をいのままに操り。
地方軍が近衛騎士団を討伐するまで混乱が続いた。
「殿下、この場合、エドは処刑が相応しいかと思いますぞぉお」
フフフフ、面白い。
「つまらぬ。それはおかしな話だ。騎士の訓令に『弱きを助け強きをくじけ』とあるではないか?主君の愚かな命令で幼子が虐待をされてるのを見過ごしたら、騎士ではないな?」
「ご名答です」
答えは決まっている。
「ガーランド卿、実際に処刑の寸前までしろ。そこで見苦しい行動をしたら、・・・そのまま処刑、名誉ある元騎士に殊勲だ。
しかし、もし、そのまま死を受け入れたら烈士として遇しよう。恩赦だ」
「さすがです。それが良いでしょうなぁああー」
ガーランド卿に執行人の役をやってもらった。
陰から見ていたが、エドは伯爵を睨み付けている。
そうか、これは善の心からか発しているのか。素朴な感情だ。
【おおおおおお・・・・・・・・・・であるが、本日、王太子妃殿下が出産された記念の日なので、恩赦ぁああああああ】
本当は数日前だ。でなければ心配でここまでこれない。
腹は決まった。
モウア伯爵家は使用人ともども処分し後世の模範にする。
モウア伯爵家を呼び出した。家族ともども王都に処刑の見物に来ていた。
まだ、処分されるとは思っていない。
「殿下、妻を養育係にして下さい」
「陛下、この4人の子供達を育てた実績をご覧下さいませ」
養育係になり美味い汁を吸うつもりか。
「あ、赤ちゃん!」
すると、1人の子供が妻に飛び込んで来た。
「ぶねえな。おい!」
「ヒィ、なんで」
マックスが止めた。
赤子を抱いている夫人に走ってくるなど言語道断。
「ビル、どうやら、子供たちには罪がないと思っていたが、矯正が必要だな」
「そんな。何故?」
「エルダ嬢の虐待の調べはついている。今、屋敷に帰っても騎士団が占拠し、取り調べをしている」
「ヒィ、そんな。あれはただの・・・・遊びですわ。それにエルダも悪いですわ」
「王子、エルダはお父様とお母様の真実の愛を邪魔した女の娘です!」
「そうです。お父様、お母様を罰しないで」
子供達が庇う。なら、試す。
「アリー、下がりなさい」
「あなた・・・はい」
妻を下がらせた醜い物を見せたくは無い。子供達にささやいた。
「ようし、子供達よ。父、母を取り替えよう。高位貴族の養子になれる機会をあげよう。君たちは子供だ。悪くない。反省をしたらのなら養子になれるぞ。父母を取り替えたい子はいるか」
すると、しばらくして全員が手をあげた。
「お父様・・・がやれって言ったから」
「お母様も止めないから」
「うん。ムチも買ってくれたから・・・」
吐き気を催す邪悪だ。
「分かった。子供達を連れていけ。矯正院にな。そこで頑張れば高位貴族の養子になれるかもしれないぞ」
「「「そんなー!」」」
うなだれているモウア伯爵夫妻に。
「落胆するとはお前達も子供達を可愛いと思っていたのだな」
と声をかけた。ほんの少しエルダ嬢を愛したら違っただろうに。
「そんな馬鹿な」
「私を裏切ったの・・」
「もう、良い。連れて行け」
「畏まりました」
裁判の上、伯爵は重労役所、夫人は北の修道院になるであろう。
もう、二度とこんな試しはしたくない。
王宮で戯れる2人を見てそう思う。
「エドは言ったわ。愛しているって」
「え、それは愛される存在・・・・」
「皆に愛されなくても良いわ・・・あなただけ」
「それは・・・あ、殿下!」
「うむ。エルダ嬢は貴族学園で優秀な成績と聞いているぞ。王宮に勤めたいなら来るが良い。アリーの女官にでもしよう」
「はい、殿下、喜んで」
優雅にカテーシをするエルダ嬢に虐待の面影はない。
この美しい2人を眺めていたい。
それは妻も同じだ。陰で侯爵家に取りなしをしていた。
「エドよ、後2年半でエルダ嬢は卒業だ。それまでに心を決めるように」
「え、はい・・・」
毎日が愉快で仕方ない。
最後までお読み頂き有難うございました。




