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旅立ち

出鼻を挫かれた一同。


村の守衛、レイヴにみっちりと座学を叩き込まれヘロヘロになってその日の長い夜をやり過ごした。


6人はそれぞれのフィールドスキルが卓越していたため、村外で活躍できる英雄になる者として有望視されていた。その為、村ではかなり甘やかされて育った節があり、一般常識ですら疎い連中であった。


「おい、レイヴ叔父さんの奴、明日もみっちり座学だって息巻いてたぞ…。」


クレイグは机に突っ伏しぐったりした様子で訴えた。


「嫌だ!待ってられない、皆!ここから逃げよう!」

ロイは机をバン!と叩いて立ち上がった。


「だけどよぉ。俺ちょっと怖くなっちまったぞ。あんなの見せられて。」

ゾンビ達の恐ろしさを今までしっかり理解して居なかったトッドは筋肉質な両肩に手を宛ててブルッと震えた。


それを見たリックはトッドの脳天に平手を見舞いした。

「お前の夢は日本でメイドゾンビを見ることだろ。あんな普通のゾンビで恐れ慄いてどうする。」


「あ、確かにだ!」トッドはリックの言葉で一瞬で立ち直る。


「兎に角!こっから逃げ出すのは賛成だ!でも、どうやって逃げ出すよ?扉には常に守衛が居るんだぞ。」様子を観ていたグースは間合いを見て意見する。


それを聞いてハルが呟いた。

「あ、そう言えば、今日はレイヴおじちゃんが守衛なんだよね?レイヴおじちゃんって、日が昇る前にいっつも守衛扉の上に昇って朝日を観るのが日課なんだよねー。僕、毎朝村の周りをランニングしてるから知ってるよぉ。」


「それだーーっ!!」

その場に居た全員は顔を合わせて叫んだ。


ーーーーーー


その日の早朝。


「おい。みろよ。叔父さんの奴。マジで守衛室から離れてやがる!」

クレイグは扉の上で伸びをしている自分の叔父を指さした。


「よし!チャンスだ!僕が守衛室のスイッチを押すから皆はスタンバイしていてくれ!」

ロイは皆に先に行くように指示する。


「了解!」


扉の上で呑気に準備体操をしているレイヴを見据えてゆっくりと守衛室に向かうロイ。


ガチャンッ!突然大きな金属音が鳴り響く。


「なっ!あっ!おまえら!」


「やべっ、やっちゃった。」グースの大きなカバンからフライパンが一つ転がった。


ロイは急いで扉のスイッチに手をかける。


「こらー!お前ら本気なんだろうな!?」血相を変えたレイヴが扉の上から飛び降りて来た。


「うっ、うわー逃げろー!」ロイを除いた全員は扉の外に急いで逃げ出すことが出来た。


「クレイグ!戻って来い!本当に死ぬぞ!」レイヴは飛び降て一旦扉に向かったが直ぐに踵を返して守衛室に戻った。


「クソっ!扉を閉めなければ!」


「レイヴさん!ごめんなさい!!」


守衛室に戻るレイヴと守衛室から逃げ出すロイがすれ違う。


「待て!ロイ!コイツをクレイグに渡してくれ。」


レイヴはフライパンを投げて渡して言った。

「コレはアイツの親父の形見だ。あの子にこれを置いて行かせるな。もう少し時間があったはずなんだがこんな事になるなんてな。…ロイ。お前も、強く生きろ。すまない。」


ロイはフライパンをパシリと受け取って扉まで一目散に走ると扉の前で心配そうにしていた仲間と合流する事ができた。


「ロイ!遅いよぉ!ボクらだけじゃこの旅は何にも意味がないただの放浪になるんだからぁ!」ハルは泣きながらロイに駆け寄った。


「心配かけた!ごめん。そんでホラ!コレ!」


ロイはレイヴから受け取ったフライパンをクレイグに渡す。


「…あ、あぁ。ありがとう。グース。持っていてくれ。」「おぉ。落としてスマン…。」


レイヴは閉まる扉から彼らを見つめ、その鬼の表情の中に悲哀を潜め彼らを見送った。


村から逃げ切った一同は徐々に昇る朝日にこれから起きる災難を知る由もなくお互いに喜び抱き合いながら村を後にするのであった。

















グースとクレイグ

レイヴの悲哀の底に

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