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まさかの急展開(プロット・ツイスト)

リリアンとのベンチでのひと騒動の後、練習は意外と順調――いや、“比較的”順調に進んだ。

とはいえ、リリアンの存在そのものがまだちょっとした問題を引き起こしていた。

特に男子連中。彼女の美貌を見てはフリーズしてしまう者が続出。まったく、目を覚ませ。

もちろん、エリックは問題児その1だったが、それはリリアンが登場した瞬間から予想できたこと。

ケヴィンとしては「やっぱりな」って感じで、そこまで気にはしていなかった。

双子コンビ? あれはもう論外。

コーチ・デレテインの担当だ。

あいつらの喧嘩に巻き込まれるなんて、冗談じゃない。

「次の大会で、どっちが速いかハッキリさせるしかないな」

ケヴィンはライバルを睨みながら口を開いた。

100mと200m、どちらのタイムもほぼ互角。

ケヴィンは200mでリードし、ケイシーは100mで先を取った。

その結果、どっちが上か判断つかず。

「そうだな……」

ケイシーの目が鋭く光る。

もしこれがアニメだったら、二人の間に火花がバチバチッと走っていただろう。

……けれど、ここは現実。なので火花など飛ばない。

目力だけでの勝負だ。

「次は本気で来いよ、スウィフト。じゃないと、ぶっちぎってやるからな」

「それはこっちのセリフだ」

ケヴィンも負けじと返す。

「今からもうちょっと練習しておけよ? 新人に負けたら恥だぜ?」

「ふんっ!」

言葉での火花が飛び交う中――

「愛しの人♡」

リリアンがやってきて、二人の視線バトルは強制終了。

リリアンは笑顔でケヴィンに水のボトルを差し出していた。

さっきまでは持ってなかったはず。

……またあの“異次元収納”ってやつか?

「これ、あなたのために持ってきたの。すごく頑張ってたから♡」

「えっ……あ、ありがとう」

ケヴィンの顔からは一気に殺気が消え、ただの男子高校生モードに突入。

その隙をついて、ケイシーは最後の睨みを残しつつ静かに退場していった。

「どういたしまして♡」

リリアンが愛おしそうに微笑む中、ケヴィンは顔が赤くなるのを隠すために水を一気飲み。

飲み干すと、そそくさとリリアンと一緒に帰ろうとする。

が、そこに奴が現れた。

「おお、わが麗しき巨乳の女神よ……」

エリック爆誕。

どこから出てきた!?

まさに“瞬間移動”レベルの登場。

彼はリリアンの左手を握り、もう片方の手でその指を優雅に撫でながら――

「この雄大なバズンガ(※おっぱいの意)で、どうかロッカールームまでご一緒していただけますか?」

「……ムリ」

リリアンの顔がクシャッと歪み、手を引っこ抜いてケヴィンの腕にしがみつく。

ケヴィンは(またか)とため息をつき、エリックはその場で膝から崩れ落ちる。

「私が一緒に歩くのは“愛しの人”だけだから♡」

「くっ……ケヴィンのやつぅぅぅ!!」

ケヴィンはリリアンの腕を取って歩き出した。

そのすぐ後ろには、背中から殺気のような視線を送ってくるエリック。

……正直、あの睨みはあまり好きじゃない。

今日一日で何度も視線を感じているせいか、さすがにウンザリしていた。

しかもその視線が、友達からのものだとなおさら嫌な気分になる。

ロッカールームまでは特にトラブルもなく到着――まあ、視線以外は、だが。

「ここで待ってるね♡」

リリアンは優しく微笑み、次の瞬間には鼻をクンクンと動かした。

「あなた、シャワー浴びたほうがいいわ」

「そりゃそうだろ。さっきまでずっと走ってたんだから、汗だくだよ」

「知ってるわよ」

リリアンは眉をしかめて言う。

「だからこそ、まだ襲ってないだけなんだから」

「ひぃっ!?」

「汗をかくのは、二人で激しく交わった時だけにしてちょうだい」

「ひぃぃぃっ!?」

「さあ、早く汗を流してきて。帰ったら、繁殖の練習を始めましょう?」

「ウワァァァァァーーーン!!」

……後ろから地獄のような叫びが響いた。

エリックだろう。音量とトーンでだいたい分かる。

ケヴィンは振り返りもしなかった。

「そういうこと言うのやめてくれ!」

小声で、けれど鋭く抗議する。

「うふふふふ♡」

「その笑い方もやめろ!」

「落ち着いて、“愛しの人”♡」

リリアンは優しく彼の腕を撫でる。

「冗談よ、冗談。ただ、おうちに帰ってあなたに夕飯作って、それから“バイオ・ザ・レジデンス”を一緒にプレイしたいだけよ」

「“バイオハザード”な。それに、プレイヤーズハンドブックもダンジョンマスターズガイドも覚えてるくせに、なんでゲームタイトルは間違えるんだよ……」

ケヴィンはため息をつきながら、シャワーへ向かった。

リリアンが近くにいないにも関わらず、ロッカールームに入った瞬間から冷たい視線が集中する。

ええい、あのキツネめ……いないだけで問題を起こしやがる。

上級生にボコられるんじゃないかと少し心配していたが、

幸いにも実際に手を出してくる者はいなかった。

視線だけで済んだのはラッキーと思うべきだろう。

唯一気になったのは――

エリックが完全に無視してきたこと。

まあ、あいつの性格上、明日にはケロッと戻ってるだろうけど。

着替えを終えたケヴィンは、膝下まであるベージュのショートパンツにバンドTシャツ(黒)というラフな服装でロッカールームを後にする。

すると、リリアンはちゃんとドアのすぐ外で待っていた。

言った通り、ピッタリの場所で。

ケヴィンの姿を見つけた瞬間、リリアンの瞳が百万ワットの輝きを放った。

そしてそのまま――秒で彼の腕にしがみつく。

……ケヴィンは、なんとか溜息を飲み込んだ。

廊下を歩き出すと、周囲の男子たちから殺気立った嫉妬のオーラが飛んできた。

誰もが彼を羨望の眼差しで見ている。

が、ケヴィンは思う。

――お前ら、分かってねぇな。

リリアンは確かに美人だし、可愛い。けど――

くっつきすぎなんだよ!!

どれだけ視線を集めようが、腕を抱きしめられ続けながら歩くこの羞恥プレイには慣れそうにない。

だが、彼はまだ知らなかった。

――リリアンの“愛が重い”問題とは別に、

狐妖怪キツネの彼女と関わることによって引き起こされる【新たな問題】が、

この数秒後、彼の身に降りかかろうとしていることを。

「スウィフトッッ!!」

怒号と共にケヴィンの背筋が凍る。

振り返ったその先には――

モジャモジャの体毛と、常軌を逸した筋肉を備えた巨体。

クリス・フライシャーの姿があった。

その顔には、まさに“怒り”という名の文字が刻まれていた。

しかもただの怒りではない。憎悪と殺意が込められた表情で、

彼はケヴィンとリリアンを睨みつけていた。

(な、なんでリリアンまで睨んでんだ!?)

わけもわからず硬直するケヴィン。

「俺は前にも言ったよな……関わる相手は選べって!」

クリスの声が地鳴りのように響く。

「だが聞かなかったな!? だったら――痛い目に遭ってもらうぜ!!」

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