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おっぱい窒息死!?

ケビンにとって、月曜日が待ち遠しいなんて、これまで一度もなかった。

普通なら、月曜日なんて最悪だ。学校が始まるからだ。

高校生男子にとって、月曜=地獄の始まりなのだ。

――だが今週に限っては、むしろ早く来てくれと思った。

なぜなら、この週末は――

完全なる悪夢だったからである。

もちろん、ケビンにとってだけの話だが。

リリアンの方はというと、土曜日の朝からずっとご機嫌で、目を輝かせながらニコニコしていた。

いや、よく考えたら、先週ずっとそんな感じだった気もする。

ケビンの記憶の中で、彼女が落ち込んだ姿なんて一度も見たことがない。

土曜日の事件――つまり、ランジェリー大惨事――のあと、

ケビンが下着屋で気絶したという信じられない事態にもかかわらず、

リリアンは何事もなかったかのように、彼を家まで連れ帰った。

……どうやって?

ケビンは聞かなかった。

聞いたら負けだと本能が告げていた。

その方法を知ってしまったら、この世界の物理法則や常識、果てはマルチバースの存在まで疑う羽目になると直感したのだ。

――数時間後。

彼が再び目を覚ました時、そこは自分のベッドの上だった。

そして――彼の頭は、リリアンのふともも枕の上に。

リリアンの細くて白い指が、優しく彼の髪を撫でていた。

……正直、ちょっと気持ちよかった。いや、かなり。

でも恥ずかしさの方が勝っていた。

しかし、それ以上に大変だったのは――

彼が目を覚ましたことに気づいたリリアンが、突如、彼をモンスター級のハグで締め付けてきたことだった。

彼女の胸に、思いっきり顔をうずめられて――

窒息しかけたのだ。

柔らかく、暖かく、そして……呼吸ができない。

それはまさに、

「おっぱい窒息死」

という名の地獄である。

――聞いたことあるだろう?

思春期男子なら誰もが一度は憧れる、理想的な最期。

だが現実は違った。

息ができないのは、普通に苦しい。

「っ……ぐ、ぐるじぃ……!!」

ケビンの脳が酸欠で警告を発する前に、

頭の中にはあのランジェリー姿のリリアンがフラッシュバックしていた。

結果、彼は――

再び、気絶。

そして、再び、夢の中へとダイブ。

――それだけでは終わらない。

その後、再び目を覚まし、

再び胸で窒息させられ、

三度目の気絶を経験。

(……そろそろ救急車呼ぶべきかもしれん)

三度目にしてようやく、ケビンは自力で意識を保つことができた。

……が、その瞬間、猛烈な後悔が押し寄せてきた。

(いや、むしろもう一回気絶しときゃよかった)

リリアンの笑顔が眩しすぎて、目を合わせられない。

彼女は、何も悪気がない無邪気さで、彼の理性を破壊してくるのだ。

しかし、悪夢はそれだけでは終わらなかった。

――翌日、日曜日の朝。

ケビンは新聞配達に遅れそうになった。

もちろん、原因はあのキツネ娘である。

何度「自分の部屋(という名の俺の部屋)で寝ろ」と言っても、

彼女は毎晩、こっそりソファーにやってきて――

彼の隣に潜り込むのだ。

最初は「仕方ないなぁ」で済ませていたが、

最近は完全に日課と化していた。

(……もう自分のベッドで寝た方がよくね?)

ケビンは真剣にそう考え始めていた。

相変わらず彼の生活は、リリアンという名の嵐に振り回され続けている。

……うん、無理ゲー。

仮に信じてもらえたとしても、それはそれで問題だ。

最悪の場合、政府に通報されて、リリアンが秘密研究施設に拉致られる未来だってある。

そんなアメリカ映画みたいな展開、ケビン的には冗談じゃない。

正直、リリアンにはいろいろと迷惑もかけられているけど――

だからといって、そんな非人道的な扱いを受けていいとは思わない。

それに、最大の問題はリリアン本人の言動だ。

彼女、**「常識」って言葉を知らないのか?**と思うほどぶっ飛んでいる。

初対面の時点で「あなたがわたしのつがいよ♡」と宣言し、

最近では堂々と「そろそろ、もっと身体的な交わりを試してみたい」とか言い出す始末。

(もちろん、ケビンの方ではまだその“関係”すら始まってない)

さらには――

裸族か!?ってレベルで、服を着ない。

基本的に、ケビンのTシャツ1枚のみという状態で家の中をうろついている。

そして問題は――

それ以外、なにも着ていない。

つまり、ノーパン。ノーブラ。

どうやら彼女は、「パンツ?ブラ?なにそれおいしいの?」という思想の持ち主らしい。

それなのに、今では何着か服を持っているというのに――

なぜか全然着たがらない。

(……服に親でも殺されたのか?)

と疑いたくなるレベルである。

そして極めつけは――

**「人前で平気でランジェリーショップに引きずり込んできたこと」**だ。

しかも、店内でえっちな寝間着を堂々と試着してポーズをキメてくるという暴挙までやらかした。

あれは――正直、拷問だった。

いや、あの店にいた時点でケビンの理性はとっくに死んでいた。

そんな彼女が友達の前でなにを言い出すかわかったもんじゃない。

むしろ、なにを言ってもおかしくないのがリリアンである。

そしてそのせいで、ケビンの命はガチで危うい。

……というか、最近気づいたんだけど――

頻繁に気絶してるの、絶対体に悪いよな?

なので、ケビンは考えた。

選択肢は二つ――

リリアンを上手く騙して、ゲーセンに一人で行く



最初から行かない



ケビンは嘘が苦手だ。

どう考えても、リリアンを騙すのは無理。

仮に騙せたとしても、彼女は絶対ついてくるに決まってる。

「用事があるの? じゃあ、一緒に行こう♡」

ってなる未来が余裕で想像できる。

あの子、一秒でも離れるのを損失と考えてる節があるからな。

というわけで、ケビンは諦めた。

エリックから電話がかかってきたときも、**「腹痛で外出無理」**というありがちな言い訳でごまかした。

多少のからかいを受けたが、

「じゃあ来週な」と言ってくれたエリックには感謝している。

リリアンには、**「誰からの電話?」**と聞かれたが――

「あ、そうだ!Xboxやろうぜ!」

と話題をすり替えたら、あっさり釣れた。

彼女、ゲーム大好きなんだよな。

というか、彼と一緒ならなんでも楽しいらしい。

補足しておくと、リリアン――

ゾンビゲー最強。

ヘッドショット、近接無双、アイテム回収も完璧。

もしかして前世は軍人だったのでは?と思うほどの手際の良さだ。

というわけで、日曜日は家でリリアンとゲーム三昧。

まあ……悪くなかった。

彼女が**「ズボンを脱がそうとしてこなければ」**、

一緒にいるのもそれなりに楽しい。

でも、問題はその脱がし率の高さである。

どんなゲーム中でも、チャンスがあれば誘惑してくるのだから、

こっちの集中力は半分削られている。

ただ、リリアンが本気でゲームに熱中している時だけは例外。

ゾンビを撃つ、剣で敵を斬る、障害物をよけながらレースをする――

そういう時は、ケビンを誘惑する暇がないらしく、

安心してプレイできた。

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