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ケビンの上司はクトゥルフ級の顎を持っている

ギシギシッ……!

椅子が不気味な音を立てながら、デイヴィンが机から離れた。

その巨体を支えている椅子がいつ崩壊してもおかしくない、とケビンは内心で心配する。

「そろそろ寿命じゃないか、あの椅子……」

ゴソゴソと机の引き出しを漁った末、デイヴィンは一枚の封筒を取り出し、

それをバンッとデスクに叩きつけた。

机が「ドンッ」と揺れた。衝撃だけで書類が何枚かずれ落ちる。

「ほらよ。まとめて全部使っちまうなよ、クソガキ。」

「……」

ケビンは思わず目を回しそうになるのを堪えた。

いつまで経ってもこの男の態度は変わらない。

心の底から、自分のことをろくでもない奴だと思っているらしい。

(俺は、あんな金持ちのバカガキとは違うっての……)

派手なゴミみたいな物に金を注ぎ込むような真似は、ケビンにはできない。

――いや、アニメグッズはちょっと多いかもしれないし、

漫画を600冊も集めたのはさすがにやりすぎだったかも。

でも、少なくともドラッグなんかに手を出してるわけじゃない。

学校にはそういう奴が山ほどいる中、自分はまともな方だ。たぶん。

封筒を手に取ったケビンは、軽く礼を言い、そそくさとその場を後にした。

この世で一番無駄な時間――

それは、デイヴィン・モンストラングの隣にいる時間かもしれない。

あの脂肪が問題なんだ――

いや、脂肪というより、生き物だった。そうとしか思えない。

動くたびに、ブヨブヨと揺れる肉の波。

それがまるで意思を持って蠢いているようで、ケビンはゾッとした。

(あれ絶対、俺を食おうとしてる……)

(クトゥルフ神話に出てくる邪神も真っ青だわ……)

デイヴィンの脂肪には、H・P・ラヴクラフトですら勝てない――

それが、ケビンの正直な感想だった。

ため息交じりに自転車へ向かい、帰ろうとしたその時――

「……ッ」

微かな音が耳に届いた。くぐもっていて、はっきりとは聞こえない。

だが、それでもケビンには分かった。

(……今の声、まさか――)

「……痛がってる動物の声だ!」

目が大きく見開かれる。

ケビンには“弱点”が二つある。

一つは有名で、もう一つはほとんど誰も知らない。

前者は、女子に対する極端な弱さ。

これはクラスメイトどころか、その母親まで知っているレベルで、

友人たちからは日常的にネタにされている。

そしてもう一つ――それは、

「動物」に対する、異常なまでの愛情。

いや、もはや「執着」と言っても差し支えない。

ケビンが動物に目覚めたのは、五歳の時に母親に動物園へ連れて行ってもらったのがきっかけだった。

触れ合いコーナーで、ウサギやヤギと遊んだ彼は、まるで魔法にかかったように夢中になった。

他の子どもたちが噛まれたりして怖がる中、

なぜか動物たちはケビンに懐いていた。

その体験が、彼の中に「動物愛」という名の炎を灯したのだ。

――その執着心は、彼のアニメ好きにも匹敵するレベルだった。


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