うめき声の枕(ザ・モーニング・ピロー)
翌朝、ケヴィンが半分寝ぼけた状態から、ようやく「ちょっとだけ目が覚めた」レベルに達するまでには、やたらと時間がかかった。
……まあ、よく考えれば無理もない。
昨日は衝撃の連続だった。
キツネが実在していると知っただけでなく、自分が助けた小さな子ギツネが実はそのキツネだったのだ。
しかも、そのキツネ――リリアン――は、立派な狐耳と二本の尻尾を持った女の子として現れていた。
ベッドのそばの窓から差し込む朝日が部屋を明るくしていく中、ケヴィンは何度か瞬きをして、頭の中のもやを晴らそうとした。
とはいえ、それは簡単なことではなかった。
昨夜の衝撃が原因の一部であるのは間違いないが――
今朝の異様な眠気には、もう一つ理由があった。
ベッドが、異常に気持ち良かったのだ。
まるで極上の羽毛布団に包まれているかのような暖かさと安らぎ――
いや、単なる心地よさではない。
目を閉じれば、すぐにでも夢の中に落ちていけそうな、圧倒的な眠気が彼を包んでいた。
だけど、そこには一つだけ気になる点があった。
この感覚は、いつものベッドの感触とは明らかに違っていた。
確かに、彼のベッドは元からそこそこ快適だった。だが――ここまで極楽だったことはない。
目は重く、まぶたは落ちそう。
それどころか、身体全体がずしりと重く、まるで何かが上に乗っているかのような感覚さえあった。
その“重さ”の正体は、自分の上に乗っている枕のせいかもしれなかった。
その枕はとても温かくて、ケヴィンは思わずギュッと抱きしめ、再び夢の世界へ旅立とうとした。
そのとき――枕が、うめいた。
ケヴィンの目が、パチリと見開かれる。
まるで稲妻が湖に落ちたかのような衝撃が、神経の隅々にまで走り抜けた。
体が硬直し、まったく動けなくなる。
「今のは…気のせいだ。夢だ…絶対に夢だ……」
そう思いたかった。心の底から思いたかった。
だが、どうしても気になってしまう。
彼は恐る恐る目を開いた。
最初に目に飛び込んできたのは――髪の毛。
大量の、美しい赤髪だった。
その長い髪は彼の胸の上とベッドに広がり、朝日を受けてまるで紅蓮の炎のように輝いていた。
次に視界に入ったのは、白くなめらかな素肌。
髪の隙間から覗く、肩のラインがはっきりと見える。
顔は見えなかった。
なぜなら、それは彼の胸にすり寄るようにして埋まっていたからだ。
でも、女性の身体が自分の上に乗っていることは、肌の感覚で完全に理解できた。
柔らかな息が彼の胸に当たるたびに、背筋にゾクゾクとした震えが走る。
肌には鳥肌が浮かんでいた。
そして、ケヴィンは――
叫んだ。
それは、部屋中に響き渡るほどの大声だった。
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