だからお前は一生童貞なんだよ!
「悪い、エリック。なんか今日はゲームやる気分じゃないんだよな……」
ケビンがため息まじりにそう呟くと、隣にいた親友は、呆れたように首を振った。
「まさかとは思うけどさ……またあのキツネのこと気にしてんのか?」
「……」
「まったく、ケビン、お前は親友だけど――その動物バカっぷりはマジでヤバい。
だからリンジーにも相手にされないんだよ!」
「――ッ!!」
ケビンの顔がみるみるうちに真っ赤になった。
リンジー・ダイアン。
彼が中学のころからずっと片想いしている女の子で、付き合いとしてはエリックよりも長い。
昔は普通に友達だった――「女子=チ○コが付いてない男子」って認識してた時代までは。
だが、ある日突然気づいてしまった。
女子って、男子とは全然違う生き物なんだって――。
それ以来、知らない女子と話すだけで口ごもるようになり、
リンジーに至っては、会話しようとするだけで鼻血出すか、気絶するか、もしくはその両方だった。
「つーかさ、動物好きってのと、リンジーとどうこうなるって話、関係なくね?」
必死に赤くなった顔を隠すため、ケビンはしかめっ面を作ってみる。
……が、うまくいかなかった。
仕方なく、ゲーム画面に意識を戻す。
ゾンビの頭でも吹き飛ばしてれば、エリックもこの話題をやめてくれるかもしれない――
――そう思ったのが、間違いだった。
「全部だよ、全部!!」
エリックがほとんど叫ぶような声で言った瞬間、ケビンはビクッと肩をすくめた。
そのタイミングで画面内のケビンのキャラが、チェーンソーを持ったゾンビに真っ二つにされるという悲劇が起きた。
「……マジかよ」
スプラッターな演出と共に画面がリトライ画面へ。
ケビンはため息をつきながらカードをスロットに差し込み、ゲームを再スタート。
ゾンビどもへの報復戦が幕を開けた。
だが、その間もエリックの口は止まらなかった。
さっきまで「お前、集中しろよ!」とか言ってたくせに、今じゃ自分がゾンビに襲われてもおかまいなし。
……ダブスタにもほどがあるだろ、おい。
「わかんねぇの? お前、動物にばっかり夢中になってるから、リンジーに告白する勇気も出せないんだよ!」
「それって別に関係なくない?」
ケビンは眉間にしわを寄せ、ゾンビの頭を一撃で吹き飛ばしながらボヤいた。
「つーかさ、俺、いつも動物にハマってるわけじゃねーし。最後に家に動物連れて帰ったのなんて――中二の時が最後だぞ?」
「じゃあ、なんで未だにリンジーをデートに誘えないわけ?」
「……うぐっ」
鋭い一言が突き刺さる。
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