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エリックという不憫な男

ケビンの指が、自動的に赤いプラスチックの銃のトリガーを引いた。

画面の中では、ゾンビたちがゴア表現全開で吹き飛んでいく。

肉片が飛び散り、バイオレンスな演出が繰り返される。

だが――ケビンの心はそこにあらず。

指は反射で動いているが、心も思考もまるで乗っていなかった。

いつもなら、ゾンビの頭を吹き飛ばすたびにスカッとするのに、

今はまったく気が晴れない。

原因はもちろん――あのキツネだ。

(なんなんだろうな、あの子……)

回復能力が常識外れなのは明らかだった。

でも、それ以上に――なにか「言葉にできない違和感」があった。

(絶対に、まだ何か隠してる。

 俺の人生どころか、世界の在り方すら変わってしまうような……そんな秘密が……!)

(……いや、考えすぎかもしれないけど)

パラノイア的な思考が止まらない自分に苦笑しつつ、トリガーを引き続ける。

「おい、なんだよそれ!」

突然、怒鳴り声が耳元で炸裂した。

反射的に顔を向けると、すぐ隣にある茶色の瞳と目が合った。

ジト目。明らかなイラつき。耐えてる感。

「ちゃんとプレイしろっての。

 この一分間で何回死にかけたと思ってんだよ?

 毎回お前のケツを救うの、俺なんだけど?」

エリック・コロンペールは、ケビンの親友だった。

二人は小学校の頃に出会い、なぜか馬が合って、

それ以来、いつも一緒にいるようになった。

――少なくとも、エリックが「女性という存在の魅力」に目覚めるまでは。

その話は……また別の機会にしよう。

エリックは短く切り揃えられた茶色い髪に、黒に近い瞳を持つ少年だった。

高校二年にしてはやたらと背が高く、ケビンより頭一つ半ほども高い。

しかもガリガリに細い。ケビンが「スリム」なら、エリックは「枝」。

手足は長く、足もでかく、全体的にサルっぽい見た目をしていた。

二人とも高校の陸上部に所属しており、

ケビンは短距離専門、エリックは長距離のスペシャリストだった。

――そしてエリックは、ケビンが今までに出会った中で、

間違いなく、断トツで一番の変態だった。

いや、むしろ“変態王”とでも呼ぶべきかもしれない。

彼は自分が“スーパー変態”であることを誇りに思っており、

恥ずかしげもなく公言してはばからない。

聞いてもいないのに「俺は変態だ!」と声高に叫ぶのが日常茶飯事だった。

まったくもってどうしようもない奴だった。

ケビン個人としては、エリックが大好きなアニメキャラ――

『シノビ・ナツモ』に出てくる、ナツモの師匠・ジャビダイアを真似してるんじゃないかと思っている。

なにせ、あのジャビダイアはアニメ史上最大の変態。

当然のように、エリックもその系譜を辿った……のだとしたら、まぁ納得はできる。

もっとも、それはあくまでケビンの仮説でしかないが。

エリックの社交的かつド変態な性格は、

彼とケビンの最大の違いだった。

ケビンは内気で、女の子とまともに話すこともできず、

下手をすると卒倒しかねないレベル。

対するエリックは、女の子を見つけると、

しっぽを追いかける犬のように突っ込んでいく――

……ただし、下心全開で。

しかも、その努力(?)が実ることは一度もない。

まぁ、あれだけ露骨な変態っぷりを見せられて、

付き合ってくれる女の子なんて、まずいない。

そもそも、学期が始まってからだけでも数回、女子更衣室を覗こうとして捕まってるんだからな。

ケビンは内心、「なんでまだ退学になってないんだ?」と驚いていた。

……でもまあ、エリックの父親が校長だからな。納得。


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