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こよりゴートゥースクール

本当に女の子になっちゃったんだなあ。


鏡の前にセーラー服の美少女がいた。


ボクは神人かみとこより。新学期初日に男から女に性転換症候群トランスレーションした中学三年生。


おかげで翌日から政府指定の都立第三女子中学校に転校を余儀なくされてしまった。


去年まで第三女子中学に通っていたお姉ちゃんの制服や下着、靴をお下がりしてもらい、家の経済的負担を抑えられたのはラッキーだった。


お姉ちゃんといえば朝のことを思い出して顔が熱くなる。


深夜ボクの部屋に忍び込んだ姉。あろうことか寝ぼけてボクのファーストキスを奪ったのだ。


家族であること。姉妹であること。寝ぼけて本人が覚えていないことからノーカンとすることにした。


だってボクは昨日まで男だよ。なんでファーストキスが家族で実の姉なのさ。事故にしても悲しすぎる。ノーカンノーカン。


けれどやらかしたほうはよくても、やられたほうはたまらない。だってあの唇の感触がいまでも忘れられない。なんだかお腹の奥がキュンキュンしちゃっていた。


コンコン


「こより。そろそろ行くわよ」

「はぁい」


カチャ


「おはよう、お姉ちゃん」

「おはよう。あら襟がずれているわよ」


姉が体を寄せ襟を直してくれる。ふわり。いい香りがした。


ちゅっ


姉の体がボクから離れるとき、右の頬に姉の唇が触れた気がした。


「!!」

「さあ急ぎなさい」

「う、うん」


きっと偶然だろう。姉の態度は何もかわらない。  


「母さん!行ってきます!!」


すべて計算ずくだ。


わたしは悪い顔をしていた。まったく我が妹ながらちょろい。アニメでいえばチョロインだ。


朝のキスもさきほどの頬へのキスもすべて本気でやっている。寝ぼけてもいないし偶然でもない。


すべて必然なのだ。


あなたなら自分のすべてを捧げてでも守りたい大切な人がいたらどうする。わたしにはいる。妹は天使だ。わたしが守る。


そして、わたしがとす。


わたしは神人かみとおりがみ。都立第三女子高等学校の一年生。性転換者トランスレーターこよりの姉になる。


中学では告白してきた好みの女子をすべて喰ってしまったため、女子のあいだでは神喰い(ゴッド・イーター)と呼ばれるほどのガチレズだ。


そんなわたしが唯一ひとり選んだのが妹のこより。


ああ堪らない。こよりが隣りにいるだけでドキドキキュンキュンジュンジュンしちゃう。油断するとすぐに下着が汚れてしまう。


でも焦っては駄目おりがみ。時間はたっぷりある。念のために弟だったときの彼女もすでに排除した。


これから毎日少しずつ堕としていけばいい。なんて幸せなのだろう。


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


ガタンゴトンガタンゴトン


「お姉ちゃん」

「なぁに」

「もう手を離してよぅ」


姉は家を出てから手を離してくれない。しかも指をえろく絡めた恋人繋ぎで。


「駄目よ。迷子になっちゃうじゃない」

「ボク中学三年生だよぅ」

「いけません。姉としてのこれは仕事です」

「うううぅ」


まったくおバカさんね。そんな仕事あるわけないじゃない。これはわたしだけの役得なんだから。


黒髪清楚系な姉と芸能人アイドルレベルな妹が手を繋いで歩く。注目されないほうがおかしい。ボクたち姉妹は完全に注目されていた。


「う・・美しい」

「ここが天国か」

「てぇてぇ」


ヒソヒソ話が聞こえる。恥ずかしいよぅ。そもそも満員電車のハズなのにボクたちの周囲は空間ができていた。


お姉ちゃんから男は寄らば斬るオーラが出まくってる。少しでも触れれば即痴漢扱いされそうだ。そりゃあ寄らないよね。


ふーん。朝の通勤快速ってこんな感じなんだ。だって一昨日までは歩いて通学してたから。


珍しいのでついキョロキョロしてしまう。


「ん」


ボクたち姉妹の反対側のドア付近。ボクと同じ制服の女の子がいた。どうも様子がおかしい。顔を真っ赤にして泣きそうだ。


「やめて・・やめてください」


声にならない声で助けを求めている。彼女の後ろを見る。会社員と思われる紺色のスーツを着た男の手が彼女のスカートの中に伸びていた。


カッとなった。


「お姉ちゃん」

「なぁに」

「手を離して」


妹の声色が変わる。なんだこの子は。わたしが知っているこよりじゃない。感じるオーラはまるで男そのものだ。思わず手を離してしまった。


「ありがとう。行ってくる」


こよりはツカツカと反対側のドアに歩き出す。すぐに紺色のスーツを着た会社員の手を掴む。


瞬間、その手を捻った。男はたまらずへたり込む。


「ぐあああああっ」

「なにしてるのかな、お兄さん」

「痛い痛い痛い!!キミ何をするんだ!!」

「へぇ痛いんだ」

「痴漢されてる女の子の心はもっと痛いんだよ!」


グキリ。肩の関節の外れた音がした。痴漢していた男はあまりの激痛で気絶していた。


「キミ大丈夫かい」

「は・・い。ありがとうございます」

「よかった。これからは気をつけてね」


あの痴漢は次の駅で警察に突き出そう。その前に肩関節を元に戻しておかなきゃ。過剰防衛になってしまう。


ゴキリ


はい、これで痴漢の肩は元通り。処置をすませると、ボクはくるりと振り返ってお姉ちゃんのところに戻る。


そしてお姉ちゃんに手を差し出す。


「はいお姉ちゃん。迷子になりそうなボクをよろしくね」

「え・・ええ」


あー、朝からなんだか良いことをした。


はい異世界シニアです。


もう気づいている方もいるかもしれませんが、この作品はわたしの処女作「サイドジョブ」のスピンオフ物となります。


けれどキャラクターの性格は少し違っています。


こよりは総受け。

百合はノーマル。

姉はオールレンジ攻撃ができるガチレズ。

母は普通の人。

お兄ちゃんは存在しません。


本当はサイドジョブの性格そのままを移植するつもりでした。ところがいざ作品を書き始めるとまたキャラクターたちが勝手に動き出しました。


いまは自由に動かしてみようと思います。


それでは次回こよりトランスレーション。こよりバトル・オブ・トイレ。


性転換者の修羅場が見れるぞ。


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