こよりシスター
わたしは男が苦手だ。
なにがどう苦手かと問われると答えるのは難しい。生理的に無理だと説明するしかない。だから中学生になると父親や弟でさえ近寄ることが苦痛になった。
家族だし嫌いとか汚いとかではない。とにかく無理なものは無理なのだ。見た目はそこそこなわたし。そのためか男子にもよく告白をされた。
もちろん、すべて断った。イケメンだろうがガチムチだろうが美少年だろうが無理なものは無理だった。
たまに女子から告白された。好みの子とはすべて断らずに付き合った。年上だろうと年下だろうと同い年だろうとお構いなしだった。すべて美味しくいただいた。そのせいか中学ではゴッド・イーターと呼ばれた。
そして気づいたのだ。わたしは真正であることに。
わたしは神人おりがみ。高校一年の女子。今日から高校に通おうと部屋をでると弟と鉢合わせした。
弟は性転換していた。事実、彼の股間にぶらさがっている男の象徴である"マグナム44"が消えていた。わたしの弟は妹になった。
ちなみに無毛だった。
するとこれまでの苦手意識が嘘のように消えた。それどころか胸の奥から愛おしさがあふれ、この子はわたしが世の中にあるすべての穢れから守らなければ・・・とまで思うようになった。
政府の研究では性転換した女性からは特殊なフェロモンが出ているみたいで、近くに寄った女性は虜になってしまうらしい。ぶっちゃければメロメロエロエロになる。
それでもよかった。なぜなら妹は天使。
そしてこの天使を穢してよいのはわたしだけだ。
「ふんふふーん」
「お姉ちゃん、ご機嫌だね」
「そうかしら」
「なんだかとっても嬉しそうだよ」
「いま幸せの絶頂を迎えているからよ」
ここはお風呂。いまボクはお姉ちゃんとお風呂に入っている。全身をくまなく洗われたあと、一緒に湯舟につかるようお願いされたのだ。
「うう・・・・」
「どうしたの、こより」
「背中に・・・なんか柔らかいものが当たってる・・・・」
「ふふっ、当ててんのよ」
「ボクもう出る!!」
「あん」
急に立ち上がったため、お姉ちゃんの顔にお湯がかかってしまった。
「ごめん、お姉ちゃん」
「やだぁ、こよりのが顔にかかっちゃった」
それわざと言ってますよね。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
お風呂からでて自分の部屋に戻る。
明日からボクは政府が指定した都立第三女子中学校に通うことになっている。
元が男ということもあるけれど、性転換者からは特殊なフェロモンが出ているらしい。女の人を誘惑しちゃうフェロモンが。その対策をするためにできるだけ一か所に集める政策と聞いている。
しかし女性が女性をメロメロにしてどうなるのだろう。子供どころか性行為だってできないのに。
神人こより十五歳。
ボクはまだガールズラブの世界を知らなかった。ハッキリいえば甘くみていたのだ。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
深夜一時。
わたしは静かにベッドから起き上がる。そしてドアを開け、となりの妹の部屋にむかう。
ちなみにこの家には防犯に関係のない部屋のドアに鍵がついていない。隠し事をしない教育らしい。
自分が男が苦手と認識したとき、とても不安になったものだ。弟とはいえ男。寝ぼけて部屋に入ってこないともかぎらない。
けれど今はその教育方針に感謝している。だってなんの障害もなく、妹の部屋に夜這いできるのだから。
静かに妹の部屋のドアを開け、わたしは体を滑り込ませた。パタン。
・・・・・・ちゅんちゅん・・・・・・・
「!!!!!!!!!!!!!!」
スマホのアラームが鳴るよりも早く鳥の声で目が覚めた。
なんだか苦しい。まるで柔らかいマシュマロの中に顔を突っ込んで息ができないみたいだ。
ボクは目を覚ました。
お姉ちゃんがボクの隣に寝ていた。そしてボクは姉の豊かな胸に顔をうずめていたのであった。
「お姉ちゃん、なにしてんのさ!」
「あらこより、おはよぅ」
「おはようじゃないよ!なんでボクの部屋にいるのさ」
「姉妹が仲良く寝る。なにも不思議なことじゃないわ」
「普通の姉妹ならそうかもしれないけど」
「あら。わたしたちも普通の姉妹よ」
ダメだ、この人、早くなんとかしないと。
「そうだ。おはようのキスをしないと」
「え」
「いただきまぁす」
「!!」
ボクのファーストキスの相手はお姉ちゃんだった。
はい異世界シニアです。
また後書きで嘘こきました。こよりバスタイムの続きでお姉ちゃんにスポットを当ててみました。
なぜ弟から姉が距離を置いたのか。
なぜ弟が妹になったら距離を縮めてきたのか。
それは真正だから。
もうお姉ちゃんは止まりません。まだまだやらかしてくれるでしょう。
次回こよりトランスレーション。こよりゴートゥスクール。
こいつはすごいぜ。