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こよりラスト

物語には始まりがあれば終わりもある。


それがボクにとっては今日だったというわけだ。


ボクは神人かみとこより。中学三年生になった日に性転換症候群トランスレーションなる奇病にかかり、女性化した。


この病気は元に戻った性転換者トランスレーターがいなかった。だからボクも男として生きていくことを半ば諦めていた。


終わりは突然にやってきた。


伊豆で部活の合宿をした二日目の朝。ボクとクリスは原因不明の高熱をだして、救急車で近くの病院に搬送された。


翌日、目を覚ますと男性に戻っていた。もちろん二人ともだ。媚薬効果のある誘惑フェロモンも、ハンドパワーも消えていた。


こよりラスト



「ミーは横須賀のスクールに戻りマース!!」


ガチムチ大人反則野郎の体に戻ったクリス・ガーランドが父親の運転する軍用車に乗り込む。


「ミンナ!シーユーアゲイン!!」

「クリスくん、またね!!」

「コヨーリ!全高でアオウ!!」

「会いたくないっーの」


全高ぜんこうとは全国高等学校拳法大会の略。ボクらは来年、高校生になる。


みると見送りにきていた主将やA子とB子、ねがいちゃん、短冊ちゃん、織姫ちゃんまで泣いていた。


騒がしかったけど、アイツがいたからボクも寂しくなかった。その点では感謝もしている。


かくいうボクも男に戻ったのだから、もう第三女子中学校にはいられない。すぐに元の地域の中学に転校しなければならない。恋人の百合ちゃんのいるところに戻るのだ。


「こより様」

「こより様」


七夕短冊たなばたたんざくちゃんと帝織姫みかどおりひめちゃんのお嬢様ズが寄ってきた。二人は本当の親友になっていた。なんだか自分のことのように嬉しい。


「二人ともお世話になったね。本当にありがとう」

「お別れではありませんわ!」

「わたし、追いかけますから」

「うん。待ってる」


涙をこらえて立ち去る織姫ちゃんと短冊ちゃん。とくに短冊ちゃんは本当に強くなった。あの様子だと明日には二人ともボクの中学に転校してくるだろうなあ。


「こよりくん」


転校初日にトイレでイジメから助けた笹飾ささかざりねがいちゃんがやってくる。抱きつくと同時にキスされた。


「わたしの本当のファーストキスよ」

「いいの。ボクで」

「うん。あなたにもらってほしい」

「ありがとう。嬉しいよ」

「さようなら。わたしの初恋さん」

「うん」


ボクはねがいちゃんの姿が消えるまで見送った。


「「「こよりさん!!!」」」

騒がしいのがやってきたぞ。

「なんだよお前らか」

「冷たいっす!」

「さんざんオモチャにしといて!」

「もう普通の男じゃ満足できない体になったっすよ!責任とってください!!」

「人聞きの悪いことを言うな!」

「百合さんと仲良くしてください」

「「「好きでした!!!」」」

「ああ、また大会で応援してくれよ」

「「「もろちん!」」」


やめろ。誤植だと思われるだろうが。


さて帰るか。


お姉ちゃんの神人おりがみといえば、ボクが男に戻ったとたんに興味がなくなったらしい。もう手も繋げないのは少し寂しくもある。


校門前に猛牛社の白い悪魔バルバトスが止まっていた。恋人の百合ちゃんのお姉さんの白百合しらゆりさんだ。


「やあ、こよりくん」

「先生。これまでありがとうございました」

「わたしは何もしていないよ」

「送るよ」

「ありがとうございます!」


ガロロロロロロ


「明日から寂しくなるな」

「夢みたいな日々でした」

「百合と別れなくていい。わたしとも付き合ってくれないだろうか」

「先生。ボク男ですよ」

「ああ、わかってる。それでも好きだ」

「ごめんなさい。ボクは百合ちゃんと生きます」

「決めていたんだね」

「はい」

「わかった。忘れてくれ」

「本当にありがとうございました」


十分もしないうちにボクの自宅に到着する。


「また遊びにおいで」

「はい!送ってくださってありがとうございます!!」


バタン。


ガロロロロロロ


「泣くな」

「ハッピーエンドじゃないか」

「野獣先生はガチレズなんだぞ」

「でも愛していたよ。こよりくん」


百合崎百合崎ゆりざきしらゆり。初めて好きになった異性は妹の恋人だった。


「おかえりなさい」


自宅で百合ちゃんが待っていた。


「ただいま百合ちゃん」

「お姉ちゃんに送ってもらったんだね」

「うん。お礼をしなきゃね」

「そんなのいらないよ」


ボクの元気がないことがわかったのだろう。


「お別れって寂しいね」

「うん」

「わたしは離れないから」

「ボクも離さないよ」

「嬉しい」


抱き合ってキスをする。ボクが男に戻って百合ちゃんとする初めてのキスだった。


「ねがいちゃんの匂いがする」

「え」

「さっそく浮気かしら」

「違うよ」


せいっ


次の瞬間、ボクはベッドに投げ飛ばされる。


「もぅ。こよりくんは仕方ないなぁ」

「ごめんね」

「上書きしちゃうから。いただきまぁす」


ボクは百合ちゃんと長いキスをした。


ズキッ


あれれ、なんだか体が痛いんだけど。まさかね。


【完】



はい異世界シニアです。


突然ですが、こよりトランスレーション最終回となります。


もともとラストは元に戻ると決めていました。そして百合ちゃんと結ばれることも。


処女作「サイドジョブ」の世界では結ばれなかった、こよりと百合が結ばれる話を書きたかったので作者としては紛れもなくハッピーエンドです。


個人的にえちえちに途中から振りすぎたと反省しております。


女になっても男の心を忘れずに助けた女性をメロメロにするこよりをイメージしていたのに、最後の方では総受け体質の優柔不断くんぽくなってしまったことは反省点としてあげておきましょう。


どうもわたしはこよりや百合ちゃんを気に入ってるみたいです。もしかしたら、また別の世界で二人に会えるかもしれません。


まだ次回作は考えておりませんが、やはり恋愛のドタバタになるのかな、とか思っています。


短い間ですが、お付き合いいただきまことにありがとうございました。


またどこかでお会いしましょう。

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