こよりスポーツフェスティバル
「今年は三年一組の優勝で決まりだろう」
「あのメンバーですからね」
「おかげで生徒のやる気は絶賛急降下中です」
ここは都立第三女子中学校の生徒会室。生徒会長ふくめて全員がある問題に頭を抱えていた。
それは体育祭。そしてある問題とは三年一組にすべて集中していた。神人こよりを含む「こよりハーレム」である。
ふつう、どんなイベントでも選手がうまくバラける。バラけなければバラけさせる。そのため、一クラスが一人勝ちなんてことはまず起きない。
ところが今年は予想以上に転校生が多く、過剰な戦力がすべて三年一組に偏ってしまった。
・性転換者の神人こより
・同じく性転換者のクリス・ガーランド
・神戸から転校してきた帝織姫
三名が三名とも皇流拳法の全国トップだった。おかげで三年の他クラスからも苦情がでていた。
ガンダムでいえばジムやボールがビグザム、エルメス、ノイエ・ジールに立ち向かう絶望的な状況だ。
「「「どうしよう」」」
「わたしが三年一組を潰してみせましょう」
「あなたは!?」
「わたしは人呼んでこよりハーレムバスター」
「おお、あなたが」
「わたしにすべて任せてください」
「「「よろしくお願いします!!」」」
まさかこんな計画が裏で進行しているとは夢にも思わないこよりとハーレムメンバーだった。
「それでは借り物競争スタートです!」
おかしい。絶対におかしい。この借り物競争の"お題"を考えた奴を一時間ほど説教したい。
三年一組の神人こよりは疲弊していた。疲れ切っていた。
なんと借り物競争のお題がすべて「好きな人」だった。七枚あるお題のうち一枚ならいい。七枚あるすべてが「好きな人」だったのだ。
それが一年生、二年生、三年生すべてだったからたまらない。
一年生と二年生はこんな感じ。
「神人先輩!お願いします!!」
「わたしが先だったじゃない!」
「先輩、ずっと好きでした!!」
「ちょっ、引っ張らないでえええええええ!!」
三年生はもっと悲惨だった。
「こよりちゃん!早く!!」
「こより様!わたくしと!!」
「こよりさん、ハンドパワー喰らわしてえええええ!!」
「裂けちゃう!引っ張らないでえええ!!」
これはチャンスとどさくさに告白する生徒まで現れたのだ。おかげでこよりは借り物競争中、一秒も休むことができなかった。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
次は仮装リレー競走だ。五人の選手が仮装してリレーをする。そして一位のクラスがポイントをもらえる形式だ。
仮装する衣装は、不正がないように体育祭実行委員会が決定する。
「えっと、これを着るんですか」
「はい。くじ引きで決まりましたので」
「はぁ」
体育祭実行委員の生徒がうちのクラスに衣装をもってきた。
着ぐるみだった。
おい誰だ。この衣装を考えた奴は。着ぐるみはそもそも走るために作られていない。ちなみに他のクラスはメイド服やアニメのキャラクターという普通の洋服ばかり。
とうぜんボクたち三年一組はドンケツだった。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
楽しい体育祭もいよいよ最後の競技となる。全校生徒が参加する騎馬戦だ。
四人一組でチームを組む。騎馬に乗る大将が頭のリボンを奪られるか、騎馬が崩れて大将が地面に足をついても負けとなる。
最後に残った騎馬の数が多いほうが勝利というシンプルなゲームだ。さらにこの騎馬戦にさえ勝てば、こよりたち三年一組の優勝が決まる。
「よし勝つぞ」
「トーゼンデース」
「こより様に勝利を!」
ボクたち拳法部三人は大将でなく騎馬の先頭に立つ。大将がいくら強くても騎馬を倒されたら終わり。ならば先頭でボクたち三人が敵の騎馬を潰す。
ボクのチームは先頭がボク。大将を七夕短冊ちゃん。残るはモブ。
クリスのチームは先頭がクリス。大将以下すべてモブ。
帝織姫ちゃんのチームは先頭が織姫ちゃん。残るはすべてモブ。
「勝てる。これなら勝てる」
「こより様に勝利を」
「ありがとう短冊ちゃん」
「いいえ夫婦ですもの」
「違うよね」
ピーーーーーーーーーーーーーーッ
競技開始の笛が鳴る。足の速い織姫ちゃん、重量級のクリス、しんがりをボクが務める。
「ジェット・ストリーム・アタッキング!!」
敵軍のモブ騎馬たちをガンガン力任せに倒しいく。大将のリボンなんて狙わない。騎馬はすべて潰す。
「おお!スゴイ、スゴイ。三年一組の黒い三悪魔が敵軍を蹴散らしていく」
「そういえば今回、新企画として他校からゲストをお呼びしています」
「そうなんですか」
「ええ。皇流拳法の女子都大会で優勝した百合崎百合さんです」
その名を聞いてボクは絶望した。しかし目の前に拳法部の主将とA子・B子チームの騎馬をみつけた織姫ちゃんは止まらなかった。
「般若、なんのそのですわ!!」
「駄目だ。織姫ちゃん、むやみに突っ込むな!!」
スパーーーーーーーーン
先頭の百合ちゃんの鮮やかな足払いが決まる。織姫ちゃんは盛大にこけていた。もちろん騎馬も道連れにして。
「織姫ちゃん。般若って誰のこと」
「あ、いえ。誰のことでもありませんわ」
「だよねえ。それって悪口よ」
「当たり前ですわ。わたくし悪口なんて言いませんもの」
敵軍の大将は拳法部主将。その騎馬は先頭に百合ちゃん。左右にA子とB子を配置していた。まさしく最強最悪だ。
「ユリサン・・・ヤルデース」
「駄目だクリス。距離をとれ!」
「あら。全国二位がずいぶん臆病だこと」
「カッチーン」
「だからこよりくんに負けるのよ。アナタ」
「ガッデム!!」
「行くなクリス!!」
ドスッ
鈍い音がした。真正面から突っ込んだクリスの腹に百合ちゃんの中段蹴りがめり込んでいた。クリスの馬鹿野郎、無茶しやがって。カウンターだから威力は倍以上だぞ。
そのまま崩れ落ちるクリスとモブ騎馬たち。残るはボクだけになってしまった。
「こより様、逃げましょう」
「短冊ちゃん」
「あの人には勝てません。このままわたしと世界の果てまで逃げましょう」
「スケール違ってきちゃってるよ。それ駆け落ちだよね」
「あらあら・・・目の前でイチャコラして」
やばい。百合ちゃんが怒っている。目が笑っていない。
「あのですね、百合ちゃん」
「こよりくん。帰ったらお仕置きフルコースね」
「ははは」
こうなったらヤケだ。玉砕覚悟で百合ちゃんに特攻する。
スパーーーーーーーーーーン。
気がついたらボクは転がされていた。なんて鮮やかな足払いだろう。こうしてボクたち三年一組は体育祭で優勝どころかビリッケツを味わうことになった。
「なんで百合ちゃんがここに」
「実行委員に知り合いがいてね。こよりちゃんたちが強すぎるから潰してくれってお願いされたの」
「そこまでやるか」
でも、学校が違う百合ちゃんと体育祭を楽しめたことは一生の思い出になった。
はい異世界シニアです。
今回は体育祭でした。あとはどんなイベントがあるでしょう。
海とかアルバイトとかも面白いかもしれません。
次回こよりトランスレーション。こより〇〇(仮)。
異世界シニア、お呼びとあれば即参上。




