こよりコスプレイヤー
「パール姉さん」
「ダイヤ」
「「愛してる」」
わたしたちは姉妹。宝石が好きだった母親のアメジストが付けてくれた名だ。ある日、母が殺された。犯人はわからない。
わたしたちは母を殺した犯人を見つけて復讐する。そのためにこの聖乙女女学院に入学した。頼れるのはお互いの愛情と美貌のみ。
「姉さん、大丈夫」
「ダイヤ。少し疲れたわ」
「少し寝たら」
「あなたもよ」
「もう。そう言っていつも寝ないじゃない」
「えいっ」
「きゃっ」
「ダイヤ。かわいい子」
「パール姉さん」
「「好きよ。愛してる」」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
よっしゃ。後はエロエロでグチャグチャなシーンに突入して終わり!!
わたしは野獣先輩。漫画家だ。本名は百合崎白百合。正式なペンネームは野獣☆白百合。
夏コミで頒布する「百合の子」のアナザーストーリーを描いている。これもまた同士に売れるだろう。
今年も壁サークルか。売り子も手配しないとな。趣味と実益を兼ねているし、どうせなら売り子さんもコスプレイヤーを雇うか。
金ならある。赤字になってもかまわない。かわいいコスプレイヤーに囲まれたい。そしてあわよくば仲良くなりたい。喰いまくりたい。
いまその最先端にいるのが神人こよりくん。妹の恋人だ。モデルで見せてもらったあの裸が忘れられない。シミひとつない肌。色素が薄く穢されていない蕾。なによりも無毛なのがいい。
あの無毛が気に入ってダイヤも無毛設定にしたくらいだ。この夏でこよりくんを墜とす。せめて距離を縮めたい。そのためならいくら金を使っても惜しくない。
「百合ぃ」
「なぁにお姉ちゃん」
「こよりくんにバイトのオファーして」
「裸じゃないよね」
「ないない。夏コミのコスプレ売り子だから健全健全」
「わかった」
「一日五万円。衣装もこちらで用意する」
「伝えるね」
「あと・・姉のおりがみさんにもオファーして」
「え」
「大丈夫。わたしが間に座るから」
「う、うん」
ティーン向けファッション雑誌"ポップティーン"を見た。百合の子でパールをコスプレできるのはおりがみさんだけだ。そしてダイヤもこよりくんにしか任せられない。
こよりくんを愛するおりがみさんは真正だ。わたしも真正だからわかる。しかも二人は百合の世界では有名人。きっと夏コミの話題をさらう。
まあ妹はやりにくいよね。こよりくんが性転換した日、姉のおりがみさんにこよりと別れるように説得されたらしい。
一度は別れた二人だけど、お互いの気持ちが変わらないことを知り密かに復縁した。だから百合はおりがみさんに会いたくないのだ。気まずいのだ。
女と女の恋愛に未来はない。でもさ、何が幸せかなんて本人が決めることじゃん。
わたしは百合崎白百合。いまは妹の恋人に恋する乙女。
部屋に戻ってこよりくんにライムを送る。すぐに「OK」の返事が来た。お姉さんのおりがみさんもこよりくんとセットならと了解してくれた。
ポコン
こよりくんから新たなライムが届く。こよりハーレムに変化があった場合、必ず報告するように躾けておいた成果がさっそく出た。
今度は金髪碧眼のアメリカギャルか。なんだこのおっぱいロケットは。機械獣でも攻撃するのだろうか。
ポコン
追伸で彼女は全中でこよりくんと決勝戦を戦ったクリス・ガーランドくんと知る。元男性か。仕方ない、これはノーカンにしてあげよう。
ポコン
このまえの全中女子東京予選大会の写真も届く。優勝したわたしの周りにこよりハーレムのみんなが集合していた。みんな楽しそう。そして、みんな恋敵。
「正妻はわたし。負けないんだから」
それにしてもみんなかわいい。大会には出ていなかった子も粒ぞろいだ。
・おさげ眼鏡
・日本人形
・縦ロールお嬢様
・モブ三人組
そして金髪碧眼アメリカンのクリスさん。あれ?どこかで見たメンバーではないか。これ。
慌てて姉の作品「百合の子」を読み返す。ドンピシャだった。主役の二人は神人姉妹で間違いない。あとはサブキャラが必要だ。
ダイヤを慕う生徒は姉を除いて八名。モブ三名もここでは省く。
・クラスメイトのサファイア
・日本人形の珊瑚
・図書委員の翡翠
・テニス部部長で縦ロールお嬢様ガーネット
・金髪アメリカンおっぱいお化けのオパール
お姉ちゃん、オパールの名前を適当に付けたわね。おっぱいでオパールなんて。
でも間違いない。これなら百合の子を完全再現できる。百合はスマホを持って階下に駆け下りる。
ドタドタドタドタ
「お姉ちゃん!」
「なんだい慌てて」
「夏コミのお手伝いは最大で何人まで必要なの」
「十人くらいかなあ」
決まった。
「これ見て!!」
「この前の試合の写真か」
「そしてこの金髪おっぱいも見て」
「!!」
姉の目が輝く。クリエイターの光だ。
「ふふふふふふ」
「わかってくれたかな」
「ああ文句無しで全員採用だ」
「連絡しておくね」
「制服の採寸もお願いするよ。もちろん百合はサファイアだ」
「うん、お姉ちゃん。ありがとう!」
百合はウキウキしていた。おりがみさんのことは少し気が重いけれど、こよりくんを好きな女の子たちと仲良くなりたい。
敵に塩を送る行為かもしれない。けれど戦うのなら真正面から正々堂々と叩き潰す。
それがこよりハーレムメンバーからは"般若"と呼ばれる自分の戦い方だから。
はい異世界シニアです。
こちらの世界でも夏コミです。百合の子のコスプレになります。
夏コミは一話で終わらせるつもりでした。メンバーが増えたのでそれはもったいないと考え直しました。次回は採寸とメンバー顔合わせ。
次回こよりトランスレーション。こよりゲットトゥギャザー
戦場がショウを呼ぶ。




