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こよりハウスデート

「きれい・・・」


自分よりも美しく気高い生物をはじめてみた気がした。


わたしは帝織姫みかどおりひめ。神戸聖女学院の中学三年生で拳法部主将。外見は縦ロールの悪役令嬢だけど、少しプライドが高いだけの純情箱入り娘だ。


そこポンコツとか言わない。


あの日、わたしは運命の出会いをした。すめらぎ流拳法・全国中学生大会の会場だ。今年もあっさり万年二位の都立第三中学校拳法部の主将を負かし、女子で全国一位になった。


あの粗暴女。力任せに突っ込んでくるばかりで動きが単調すぎる。いつもカウンター一発で畳に沈んだ。


ふと隣の会場をみるとちょうど男子の決勝戦が始まるところだった。一人は金髪の長身で大男。外国人であることは一目でわかった。体がとにかく大きい。あれでは対戦相手も苦労するだろう。


てか、あの体格で中学生なの。完全に大人でしょう。反則負けにしてもよいレベルよ。


もう一人は小柄な男の子。ああ、これはダメだ。完全に力負けする。皇流拳法は確かに力を重視しない。だからといって力量や体格に差がありすぎれば勝てないのも道理だった。


たとえばアナタはファーストガンダムでサイコガンダム・マークツーに勝てるだろうか。パイロットがアムロやカミーユ、ジュドーなら話は別よ。コウ・ウラキだったらおそらく無理だ。


試合がはじまる。かわいそうなあの子。憐憫れんびんの心で試合を観戦したが、すぐにわたしが間違っていたことを知る。


強い。あの子は強い。


自分の倍はありそうな大男の攻撃を苦もなくさばいている。なによりもフットワークが軽い。大男は彼をとらえきれない。


そして焦った大男の右蹴りをいなした彼はすれ違いざまにボディブローを喰らわした。巨体が倒れた。


そのとき彼を心から応援していた自分に気づいた。


もしかしたらあれがわたしの初恋。いや一目ボレだったのかもしれない。

「おじゃましまーす」

「こよりくん、いらっしゃい」


ここは百合崎百合ゆりざきゆりちゃんのお家。ボク神人かみとこよりは彼女である百合ちゃんのおうちにお邪魔していた。


「ごめんね。こよりくんに来てもらって」

「いいよ。ボクんちだと百合ちゃん居にくいでしょ」


ボクが性転換症候群トランスレーションで男性から女性化したその日。百合ちゃんは見舞いにきた大学病院で性転換したボクと会っている。


そのとき姉からボクとは未来がないから別れるよう説得された。一度はボクとの未来を諦めた百合ちゃんだったけれど、お互いの気持ちが変わっていないことに気づいて復縁した。


このことはまだお母さんにもお姉ちゃんにも話していない。なによりもお姉ちゃんが面白く思わないらしい。そうだよね、女と女の恋愛なんて未来ないもんね。


なんだか巨大なブーメランを姉が投げている気がするぞ。


カチャ


玄関にあがろうとしたとき、奥のリビングから百合ちゃんのお姉さんがでてきた。


「やあ、こよりくん。お久しぶり」

白百合しらゆりさん、お久しぶりです」

「それにしても本当に可愛くなったね」

「おかげさまで・・・」

「安心しなさい。百合との仲に文句はない。むしろ応援する」

「え」

「わたしは女と女の恋愛こそ至上だと思っているのさ!!」

「ちょっとお姉ちゃん」

「ああ、すまんすまん。こよりくん、ごゆっくり」

「ありがとうございます」

「なんなら泊まっていけばいい」

「もうお姉ちゃんたら!!」


百合ちゃんのお姉さんの白百合さんは漫画家だ。どうやらガールズラブの漫画では有名な先生らしい。たしかペンネームは野獣やじゅう白百合しらゆり。読者からは野獣先輩とあがめられているとのこと。


月刊誌G・Ladyジー・レディで「百合の子」を連載中。アニメ化もされている。印税は億を超え、玄関には世界300台限定の跳ねフェラーチが止まっていた。


「ごめんね、こよりくん。あがって」

「うん。お邪魔しまーす」


■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■


カチャリ


「さあ入って」

「うん」


パタン。女の子の部屋だ。なんだかいい匂いがする。先に入った百合ちゃんが振り返ると抱きついてきた。


「こよりくん、会いたかった」

「ボクもだよ、百合ちゃん」


ちゅっ


ボクたちはセカンドキスをした。ただ唇と唇を軽くあわせるだけのフレンチキスだけど、中学生のボクたちにはこれが精いっぱい。


「はい修学旅行のお土産。生八つ橋だけどいい」

「ありがとう。嬉しい」


百合ちゃんはかわいい。幼馴染だから遠慮もいらない。気を使わない相手って大切だよね。


お互い話すことはたくさんあった。ボクがいなくなった学校のこと。修学旅行のこと。話しても話しても尽きることはなかった。


ふと気になることがあった。これは百合ちゃんにも確認しておいたほうがいい。性転換した人間に特有の媚薬効果がある誘惑フェロモン、そしてハンドパワーのことだ。


「百合ちゃんはボクといて、誘惑されないの」

「だってこよりくん、何も変わってないじゃない」

「そんなものかな」

「だって幼馴染だもん。家族や兄弟に興奮しないでしょ」

「そうだね」


なんか百合ちゃんの言葉がうちのお姉ちゃんの頭に刺さったぞ。


「あと確認したいことがあって」

「なぁに」

「腕を触ってもいいかな」

「おかしなこよりくん。いつも道場で触ってるじゃない」


ペタペタ・・・ニギニギ・・・


「ふふふ、くすぐったいよ」

「だよねえ、これが普通の反応だよね」

「なにかあったの」

「それが修学旅行のお風呂で女の子の体を洗ったら、みんな倒れちゃってさ」

「ふーん・・・・」


ヤバい。百合ちゃんから黒いオーラがでた。これはハイパー化。


「ちょっと。それ詳しく聞かせてもらおうかな」

「あ、ごめん。百合ちゃん。ほんとごめん」

「女同士だからお風呂はわかるの。でもなんで体を洗っただけで倒れちゃうのかなあ」

「それが性転換した副作用みたいでね」

「今、こよりハーレムには何人いるのかな」

「・・・いません」

「それ嘘だよね」

「ごめんなさい。五人います」


百合ちゃんの顔が般若になった。


せいっ


ボクは次の瞬間。ベッドに投げ飛ばされていた。百合ちゃんがボクの上に馬乗りになる。やばい。これは彼女の勝ちパターンだ。もがいても逃げられない。完全にマウントをとられた。


「少しお仕置きが必要みたいね」

「百合ちゃん。許して」

「大丈夫よ。顔は殴らないから」

「ひいいいい」


ドスンバタンガタンドスドスドス


リビングにいる白百合は上の百合の部屋から聞こえてくるけたたましい音を聞いた。


「若い子の逢瀬おうせは激しいな」


わたしも混ぜてくれればいいのに。少し残念な顔をする野獣先輩だった。


はい異世界シニアです。


お待たせしました野獣先輩の登場です。こちらの世界ではガールズラブの大先生になっております。


そして百合ちゃんも黒くなりました。嫉妬の炎にメラメラと灼かれてしまいます。


次回こよりトランスレーション。こよりクラブリーダー。


この次も、サービス、サービスゥ!!


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