こよりスクールトリップ
こより様と修学旅行。
二泊三日の奈良・京都の旅。クラスのみんなは性転換者のこより様と同じ班になることを露骨に嫌がった。
だからわたしは立候補した。わたしがあの方に助けられたように、わたしもあの方のお力になりたかったから。
わたしは七夕短冊。この旅行でこより様との距離をもっと縮めたいと考えている恋する乙女。
なんだけど。
「こよりちゃんチョコ食べる。はい、あーん」
「こよりさん富士山っすよ!」
「こよりさんお茶どうすか!」
「こよりさんお菓子どうぞ!」
「ねがいちゃん、ありがと。むぐむぐ」
「あと土下座三人衆うるさい」
「「「イエス!マム!!」」」
ここは東海道新幹線の車内。
三年一組ではこより様と同じ班になりたいクラスメイトがわたししかいなかった。同じ班になるということは寝室も同じということ。
体は女でも元男性では不安になる気持ちはなんとなくわかる。それについては個人の考え方だから。
そこで三年の全クラスから志願者を募ることになった。
その結果がこれだ。
こより様にイジメから助けられた笹飾ねがいさん。あとは笹飾さんをイジメていた拳法部の主将と部員A子B子。なんと四人も集まった。
結果的に合計六人の班ができた。それにしてもメンバーが濃い。そのうえ全員がいろんな意味でこより様にメロメロだ。
まったく。誘惑フェロモンなんかなくても転校初日で五人もの女の子を虜にするなんて。
なんて素敵な人なのだろう。
「まあ仕方ないよね」
一日目の修学旅行が終わる。騒がしいながらも楽しいグループ活動だった。奈良の鹿もかわいかった。みんなで清水寺にも行ったし金閣寺も見た。
宿に到着。大宴会場で食べる夕食も美味しかった。あとはお風呂に入って寝るだけ。
そこで性転換者のボクだけ貸切風呂を与えられた。まあ元男性だから気持ちはわかる。ボクも女子に裸をみられるのは恥ずかしいし。
あと怖いのは媚薬効果のある誘惑フェロモン。お風呂でみんなメロメロのエロエロになったら大変だ。
カポーン
だから一人で貸切風呂を堪能していた。
カチャリ
え。この時間はボクだけしか入ってこないハズ。
「やっぱりここにいた」
「ねがいちゃん!?」
「失礼いたします」
「短冊ちゃん!?」
「「「チーッス!!!」」」
「土下座三人衆!?」
なんとグループの女の子がみんな貸切風呂に集まった。もちろんみんな体にバスタオルを巻いていたから健全だよ。それに女同士だから問題もおこらない・・はず。
「こっちのほうが楽しいもの」
「お背中をお流しいたします」
「「「どこまでもお供します!」」」
「みんな」
なんだか嬉しくなる。別に女の子と入浴できるのが嬉しいとかじゃないんだからね。
「でも狭い密室だから危ないよ。いくら換気扇が回っていたとしても」
「あなた、わたしに変なことをするの」
「し、しないよ」
「なら問題ないじゃない」
「してもいいっすよ!」
「しないよ!!」
短冊ちゃんが洗い場で体を洗っているボクの後ろに膝をつく。
「こより様、お背中をお流しします」
「うん、ありがとう」
コシコシコシコシコシ
「いかがですか」
「気持ちいいよ」
「今度はボクが洗ったげるよ」
「え」
「あ、ボクなんかじゃ嫌だよね」
「ちがいます!そんな意味じゃありません」
想いを寄せるこより様に体を洗ってもらえる。恥ずかしいけれど、こんなに嬉しいチャンスはそうそうない。洗っていただこう。洗っていただくしかない。
わたしたち女同士ですし。
短冊ちゃんは覚悟を決めたようだ。バスタオルを外し、体の前で持つ。
「お願いいたします」
「う、うん」
小さな背中だ。シミひとつないきれいな肌。これは姉さん式入浴法の出番だな。
「人の肌はタオルでゴシゴシこすらなくても手で優しく洗うだけでいいんだって」
「あ、それ聞いたことある」
「これは姉さんから教えてもらった洗い方なんだ」
こよりは石鹸を手で泡立てる。そして短冊の背中、首、腕を手のひらで包み込むように洗い出す。
もちろん前の方は自分で洗ってもらう。ボクが洗うのは首、背中、腕だけだ。
「ひぁ」「あ」「ん」
短冊ちゃんの口から甘い声が漏れる。どうやら気持ちはいいようだ。ボクもお姉ちゃんに洗ってもらって気持ちよかったからね。
「だめ」「もぅ」「うっ」
短冊ちゃんの体がビクンとはねる。そしてくたんとへたり込んでしまった。いったい何が起こった。
「ハァハァハァ・・大丈夫です。こより様ありがとうございました」
「じゃあ次はわたしもお願い!」
「はぁい」
ねがいちゃんも同じように洗い出す。
「え」「うそ」「これなに」「や」「あ」
ねがいちゃんも数分でくたってしまった。ただ背中を洗っただけなのに。
ゴクリ。湯船につかる土下座三人衆が唾をのみ込む音がした。
「こよりさん!わたしたちもオナシャス!」
「じゃあ三人いっぺんに洗ったげる」
「ひ」「これ」「すご」「や」「ん」「っ」
三人衆もほぼ同時にヘタったしまった。一体どうしたんだろう。
「あ、わたしたち先に出るわね」
「こより様、お先に失礼いたします」
「「「ごゆっくり!!」」」
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
部屋に戻った短冊、ねがい、三人衆は緊急会議を開いた。
議題はこよりの手について。彼の手は触れた女を強制的に天国へ導く力があるようだ。
ねがいと短冊はこよりと手を繋いだことがある。その時はとても幸せな気分になった。
その気持ちよさが背中や首では何十倍にも増幅されたのだ。もしも胸なんかに触られたら。考えるだけで恐ろしい。
「あれは女にとって凶器よ」
「やはり性転換者の能力なのでしょうか」
「気持ちよすぎる」
「あの手でもしも前を洗われたら」
「試してみたいすね」
ねがいは時計を見る。もうすぐ就寝時間。わたしたち全員の体に火をつけた張本人も風呂から戻って来る。
長い夜になりそうね。とても長い。
はい異世界シニアです。
今回はギリギリを攻めてみました。いかがでしたでしょうか。
実は修学旅行の英語を調べたところ「スクールトリップ」をみつけました。 トリップには旅行に行くという意味もありますが、転ぶ、麻薬で幻覚状態になるという意味もありました。
媚薬効果のある誘惑フェロモン設定が活かせるかもしれない。そしてその場所はお風呂と寝る部屋しかありません。
今回は後書きから書いています。一体本編はどうなったのか。楽しみでもあり不安でもあります。
やりたいからやった。後悔なんてあるわけがない。
さてお風呂ときたら後は寝るだけ。
次回こよりトランスレーション。こよりスリーピング。
月に代わってお仕置きよ。