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竜ケ崎剣の力

着替えをするために部室へ行く。

割と古いプレハブの部室だ。

まあ弱小校だしこんなものかなと思いながら部室に入ると竜ケ崎君がいた。

会話がなくて気まずい気がするが勇気を出して部室に入る。


声をかけようかと竜ケ崎君をみると何かニヨニヨしていた。

不気味な感じだ。

怖いなーと思いながらよく見てみるとボールが浮いている。

立てた人差し指のちょっと上にボールが浮いている。

なんの手品だ?

しかもそれを見てニヨニヨいてるって怖い以外の何者でもない。

そっと後ずさる。

その時入り口付近に立てかけてあったバットにぶつかる。

カラン

その音に竜ケ崎君が気づきこちらを見た。

なんかすごく睨まれている気がする。

「見たね・・・今見たよね」

近づきながらこちらにすごい圧をかけてくる。

「なっなにを・・・?なんにも・・・」

「嘘をつくな!!!!」

急に怒鳴ったかと思うと部室内にあるボールが宙に浮きだした。

「秘密を見られた以上ここから生きては出られないよ」

宙に浮かんだボールが次から次へと僕に向かって飛んできた。

なんかヤバイ殺される。

部室の外へ逃げようとしたら何かに足を取られ転んだ。

足元には黒い何かがある。

よく見るとそれは竜ケ崎君の髪の毛、髪の毛がぐんぐん伸び続け部室を埋め尽くす勢い。

ホラーだ。

完全にホラーだ。

這いつくばりながら必死に外へ出ようとする。

「にーげーるーなー」

「うわぁぁぁぁ!!!」

何とか部室から脱出してドアを閉める。

部室の中は増え続ける髪の毛でどんどんいっぱいになっていく。

なんなんだこれは髪の毛でパンパンになっていく部室の窓から竜ケ崎君が顔を出している。

「ひぇぇっ!!」

思わず声が出る。

そのままひっくり返る。

真っ黒な塊の中から顔を出す竜ケ崎君は本気のホラー映像になっている。


「・・・たすけて・・・」

ん?

「たすけてー!」

竜ケ崎君が助けを求めている。

この状況で助けてほしいのは襲われている僕のほうなんだけど・・・。

でも放っておくわけにも行かないのでしぶしぶ髪の毛を切り竜ケ崎君を引っ張り出した。

部室は髪の毛でパンパンなままだ。

「ありがとう助かったよ」

「いったいこの状況は?何さっきのあれは何?ボール浮いてたけど?」

率直に聞いてみる。

「あの・・・誰にも言わないで欲しいんだけど・・・あれは・・・超能力」

超能力?

「僕の能力、野球のボールを操作する超能力」

そういうと自分の体の周りでボールをふわふわと回転させる。

本物・・・?本物か?

「手品じゃなくて・・・?」

「手品じゃない僕はこの力で豪速球を投げ三振の山を築き必ず甲子園に行くんだ」

甲子園に行く・・・意気込みは良いんだけどなんか腑に落ちない。

「超能力で甲子園ってちょっとずるくない・・・?」

「なんで僕の能力なんだからずるくないよ」

「いやでもなんか人と違うって言うか・・・他の人にはないのに・・・」

「何を言っているんだ。大谷翔平を見ろ。努力もしているけどすごい野球の才能を持っているあれは僕にはない才能だ。君の理論で言うと大谷翔平はずるいじゃないか」

「そう言われればそうだけど・・・人の範囲って言うか・・・」

「僕も人の範囲だし才能を余すことなく使って甲子園を目指すだけ」

そういわれればそうかもしれないけど・・・いまいち腑には落ちてない。

「だから僕と一緒に甲子園を目指そう。君にも僕のボールを捕るぐらいの才能はある」

いまいち褒められてはいない・・・。

まあ腑に落ちない部分はあるにせよ大谷翔平理論は確かにと思うところもある。

「わかった。行こう。甲子園に行こう」

がっしりと握手を交わす。

「痛い痛い痛い」

えっ?そんなに強く握ってない。

「非力で鍛えられてない僕はひ弱なんだから優しく握ってよね」

甲子園目指すっとか言っちゃったけど良かったんだろうか不安でいっぱいだ。


「そもそもその髪の毛って・・・?」

「あぁこれ?これは超能力を使うと伸びるんだよね使えば使うほど伸びる」

「野球向いて無くない?坊主維持出来ないじゃん」

本当に向いていないと思う。

試合中に髪が伸びたら異様だし違和感しかない。

「野球しかないんだ」

何かそんな思い入れがあるんだろうか?

「だって野球のボールしか動かせないんだ」

はい?

「僕の力は野球のボールを自在に操る能力しかも硬球限定それ以外のものは全く動かない」

限られすぎている。

野球する選択肢しか与えられてない。

しかも高校生になってから・・・。

「そうか・・・」

「そうなんだ!だから僕はこの能力を使って甲子園に行く!」

キリッと宣言されたけどこっちの気持ちは複雑だ。

ずるいといえばずるいし限定されすぎてて可哀想と言えば可哀想だしそもそも髪の毛伸びるっ所にハードルの高さを感じるしどうしてあげるべきかと言うかどうもしないし関わりたくないというのが本音だったりする。

とは言えやると言ってしまった手前甲子園目指してみるんだけどまずは髪の毛が伸びる問題を何とかしたいといけない。

まずは主将に相談してみよう。

「なに?相談?」

相変わらずの威圧感、苦手だ。

「坊主についてなんですけど・・・」

「なに?坊主廃止だと!なにを言ってる野球と坊主はイコールだろ!同義語!坊主なくして野球は成立しない」

「本当よなんてこと言うのよせっかくの坊主頭牧場がなくなってしまうじゃない」

姉川さんも参戦してきた。

これはだめだ。

この人たちは坊主頭に取りつかれている。

坊主の病だ。

あきらめよう。

こうなったら監督に直談判するしかない。

監督はあったことがない。

「柿崎主将そういえば監督ってどこにいるんですか?」

「監督?ずっといるぞあそこのベンチに」

ベンチによぼよぼのおじいさんが座っている。

「監督!!坊主廃止したいんですけど!!そうすれば甲子園に行けます!絶対的エースがいます」

早速直談判してみる。

反応がない。

「監督・・・?」

「坊主以外の選択肢があるのか・・・だって野球部だぞ・・・まあいい甲子園に行けるっていうならそれを証明して見せろ、俺を打ち取ってみろ!」

監督を・・・・・このよぼよぼの老人を打ち取れと・・・いける!行ける気しかしない。

「やります!!竜ケ崎君!」

「わかった」

ちょっと髪の毛が伸びかけの竜ケ崎君がマウンドに上がろうとする。

「まてまだ勝負に勝ってない坊主にしてからマウンドに上がれ」

めんどくさっとは思ったけどどうせすぐに伸びるしまあいいかとも思う。

竜ヶ崎君は潔くあっさりと坊主にする。

まあすぐ伸びるんだから当然だろう。

バッターボックスに監督が立つ。

竜ヶ崎君の超豪速球が監督の前を鋭く通り抜けていく。

監督はバットを振らない。

3球何事もなく終わる。

監督?

「監督・・・勝負・・」

監督は気絶していた。

圧倒的な速さにびっくりしすぎて気絶したようだ。

おしっこも漏らしているし・・・。

さあ、監督は打ち取った。

長髪の許可は得た。

得たのか?殺しかけただけのような気もするが・・・。


「柿崎主将!監督の許可は取りました。竜ヶ崎君の髪の毛もこんなに伸びてますし頭髪は今日から自由でお願いします」

腕を組み考え込む柿崎主将。

「好きにしろ俺は坊主道を貫く」

坊主道・・・なにそれ?

わからないけど許可が出た。

「柿崎主将・・・素敵♡」

マネージャーの姉川さんがうっとりした顔で柿崎主将を見ている。

何ぃぃぃぃ!こいつ・・坊主市場を独占して姉川さんを独り占めする気か・・・。

まずい・・・長髪の許可は取ったけど、ここは僕も坊主を維持するべきか・・・主将に女子マネを独占させないために!


「あの野球部ってここですよね」

ええ野球場がありますから・・・学校の野球場に来て野球部かここかどうか聞くってどうなんだろうアホなのかな・・・等と思いながら振り返る。

そこにはショートカットのかわいい女子、明らかにかわいい圧倒的にかわいい。

なんかキラキラして見える。

「ここです!ここが野球部です!」

すごくキリっと答える。

「あの・・・私、佐原さくらっていいます。野球部のマネージャーになりたいんですけど」

「歓迎します。マネージャーの席空いてます。今日からお願いします」

監督も主将も差し置いて許可をした。

だって絶対に吐いて欲しい。

「まあマネージャーはもう1人欲しいと思っていたところだ」

主将もOKなようだ。

「あなた・・・まさか坊主好き・・・私と一緒にコレクションする?そして一緒に坊主鑑賞会?素敵よね」

姉川さんが変なことを言い出した。

「違います!野球が好きだから野球部のマネージャーがしたいんです。むしろ坊主は嫌いです。野球部も坊主辞めたらいいのにって思ってます」

「なんて事を言うの?あの良さがわからないなんて?趣味が悪いわね」

「坊主なんて禿げといっしょよ」

「違うわよ。坊主には髪の毛があるんだから!」

2人の坊主論争は白熱していく・・・。




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