表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/25

竜ケ崎剣

もう野球はやめた。

それが両親との約束

高校生活は勉強に専念する。

その為に野球の強豪校じゃなくて進学校を受験した。

そしてこの春から新生活が始まる。


青華高等学校せいかこうとうがっこうの校門をくぐる。

今日から青華校生となる。

勉強はもちろんの事これからは恋も頑張ろう。

今まで坊主頭だったけどこれからはぐんぐん髪の毛も伸ばせる。

今は伸びかけだけど、そりゃもう長髪にするつもりだ。

だって恋がしたいから・・・。

そう両親からは勉学に集中って言われているけど一番したいのは恋。

もちろん勉強もするけどしたいのは恋。

頑張って彼女作るぞ!

そんなことを考えながら校門をくぐる。

「ねぇちょっと君!新澤翔真君だよね?」

女子の声で呼び止められてドキッとしながら声のする方を見る。

そこには髪の長い女性が立っていた。

うちの学校の制服を着ている。

超美人だ。

高校生活が始まっていきなりこんな美人に話しかけられるなんて今までのむさくるしい野球部生活とは全然違う。

女子はツカツカと近づいてくる。

そして僕の目の前に来た。

近い・・・近すぎて緊張する。

「ねぇあなた岩泉中学でエースだった新澤君よね?なんで髪の毛伸ばしてるの?」

さらにグイっと迫ってくる。

緊張で言葉がうまく出ない。

「あ・・・いや・・・野球は・・・辞めた・・・っていうか・・・」

「なんで辞めちゃうの?」

顔が近い・・・鼻息が荒くなっていることに気づかれないだろうか?

ドキドキが止まらない。

「・・・いや勉強に・・・専念・・・」

「えーっ?野球やろうよ!」

近すぎて鼓動が伝わりそう。

「私野球部のマネージャーしてるの、あなたと一緒に野球がしたいわ」

ぐいぐい距離を縮めてくる。

もう触れてしまいそうな距離。

お父さん、お母さん、ごめん!!

「や・・・やります。野球やります」

色気にやられたわけじゃない。

やっぱり野球がやりたかったんだ。

そう自分に言い聞かせた。

「じゃあこれ入部届」

出された用紙に名前を書いた。

「ありがとう、私は姉川美香今日からよろしくね」

そういうと姉川さんは去って行った。

なんか高校生活は楽しくなりそうだ。



そして浮かれたまま放課後。

野球部のグランドに行く。

僕がいた中学校のような立派なグランドじゃない。

狭くてボロボロのグランド。

まあ甲子園目指すわけではないし楽しくやるならこれぐらいで良いのかもしれない。

僕以外に5人の新入部員がいた。

なぜか全員もじもじしていた。

「あっみんな来てくれたのね」

姉川さんの声だ。

新入部員全員がより一層もじもじして顔が赤くなった。

こいつら完全に姉川さんに誘われて入部したのか・・・?

でも僕が特別・・・だと思いたい。

「あぁやっぱりいいわね。これだけ坊主が並ぶと、野球部ってそこが素敵よね」

坊主が並ぶ・・・?

「おいおいお前の坊主コレクションの為の新入部員じゃねぇぞ」

ちょっと威厳がありそうな上級生が来た。

「えー?坊主眺めるしか楽しいことないのにー」

坊主を眺める・・・?

「お前らが新入部員か?俺は主将の柿崎太陽だ!よろしく!こいつはマネージャーで坊主頭マニアだ。坊主並べて眺めるのが好きな変態だ」

坊主頭マニア・・・?

「あの僕に声かけたのって・・・?」

「もちろん坊主頭だからよ。ちょっと伸び始めて長髪になってきてるから切ったほうが良いわよ」

長髪・・・?これが・・・?まだ1cmにもなっていないというのに・・・って言うか坊主だから・・・?僕の入部の意味って坊主だから?

急に野球をやる気が減っていく。


「すいません遅くなりました」

ボソッとしたか細い声が聞こえ、すらっと背が高くひょろっとした男子がグランドに入ってくる。

髪が異常に長い。

長く伸びた髪はちょっと地面に引きずるぐらい長い。

「お前は?」

「今日から入部する竜ヶ崎剣です」

りゅうがせきけん・・・なんか名前はカッコいいな。

見た目は不気味だけど・・・。

「お前なんでそんなに髪が長い野球部と言えば坊主だろ」

「坊主じゃないと駄目ですか?」

「当たり前だ!」

竜ヶ崎はおもむろにバリカンを取り出し髪の毛を刈り始めた。

そして坊主になった。

「じゃあこれで」

突然の出来事に全員唖然とする。

っていうかちょっと引く。

こんな空気になるぐらいなら坊主じゃなくてもいいと思う。


「まっまあ、とりあえずお前ら経験者だな?自己紹介とポジション言ってくれ」

1番むこうの坊主から自己紹介が始まった。

「上川誠太郎、ポジションはセンター肩の強さには自信があります」

そして自己紹介は進み僕の番。

「新澤翔真です。ポジションはピッチャーです」

そして最後は髪の長い謎のこいつ。

「竜ヶ崎剣です野球経験はありませんがポジションはピッチャーでお願いします」

はい?経験がないのにピッチャー?

なんでピッチャー希望なんだろうか?

疑問はいっぱいある。

「よしっお前らの実力を見るお前ら2人は投げてみろ!」

まずは僕がマウンドに立つ。

まあ今までもエースとしてやってきたので投げるのは得意だ。

1球、2球、3球と投げ込んでいく。

その様子を見ている先輩たちからもどよめきが起きる。

一応甲子園常連校からも声がかかるくらいには野球をしていたのでそれなりの球は投げられていると思う。

「よし交代しろ!」

次は竜ケ崎君の投球、どんな感じの投球をするんだろうか?

興味津々で見る。

竜ケ崎君がマウンドに立ち投球モーションに入る。

左投げか・・・。

竜ケ崎君が大きく振りかぶり左足を上げる・・・左足?

逆じゃない?

変なフォームになっている。

ひどいフォーム、これでよくピッチャーを希望出来たものだ。

そしてぎこちなく投げる。

手から放たれたボールはゆっくりと弧を描く。

すごく遅い・・・と思った次の瞬間。

ビュッ!!!!

ボールが急加速してものすごいスピードで飛んでいく。

ドォォンと言う大きな音とともにキャッチャーを貫き吹き飛ばす。

血を流しながら倒れるキャッチャー・・・死んだ?

何?ボールのスピードがおかしいスローボールから急加速した。

途中からボール見えなかった。

って言うかキャッチャーを一撃で殺す威力!死んだかどうかは分からないけど・・・。

「もうちょっと投げたい・・・きみキャッチャーやってよ」

竜ケ崎君が僕を指さしながら言う。

えっ僕?僕?あのボールを取れと?無理無理そこで血を流しながら倒れているキャッチャーと同じ運命をたどることになると思うんだけど。

「よし新澤!キャッチャーやってやれ」

えー無理ーっていうか倒れてるキャッチャーの救助とかしてほったらかしになってるけど・・・。


しぶしぶマスクをかぶり座る。

超怖い。

やっぱり野球やめとけばよかった。

野球しないって約束を破った僕への天罰なのかもしれない。

お父さん、お母さんごめんなさい。

僕は深く反省する。

「ミット動かさないで」

僕の反省の声とかも届かない感じだね。

淡々と投げる体勢に入る竜ヶ崎君、変な投球フォームからの剛速球!!

ものすごい衝撃が体を貫く。

あぁ死んだ・・・彼女欲しかったな。

目を開ける。

目の前にはグランドが見える。

あの世にも野球のグランドってあるんだ。

いや?マウンドには竜ヶ崎君がいる。

これは現実?僕はまだ生きている。

よく見るとキャッチャーミットにボールがある。

「どっ捕れた!捕れましたよ!」

ボールを持ってすごくアピールする。

「よくやった!2人目の犠牲者が出ると思ったていたが助かった!」

柿崎主将がとんでもない事をさらっと言う。

「もう1球ミット動かさないで」

えっまだ投げるの?

「無理無理ちょっと待って!」

竜ヶ崎君が投げる。

顔の横を何か鋭いものが通り抜ける。

頬がちょっと切れる。

ドンッ!

そっと後ろを振り返る。

壁にボールがめり込んでいる。

「あっごめんコントロールミスった」

ミスって・・・死ぬところだった。

「殺す気かお前!!」

怒って竜が先に詰め寄る。

そこで違和感を感じる。

違和感・・・髪の毛が伸びてるさっき坊主にしたはずの髪の毛がもう肩まで伸びている。

怖っ!!

ちょっと恐怖で後ずさる。

「りゅっ竜ケ崎君・・・髪の毛・・・」

「あぁこれ?僕伸びるの早いんだ・・・特に野球をすると・・・」

何それ早すぎだし野球をすると伸びるのが早いってなんだよ。

ボールの投げ方も気持悪いし髪の毛が伸びるの異常に早いのも気持ちが悪い。

こんなやつと野球?やっぱり野球やめとけばよかった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ