side コウキ
初めて、陽人を見つけた時から気づいていた。
「はるちゃん……」
「えっ?」
「あっ、すみません。こちらにサインいただけますか?」
「あっ、はい。今しますね」
今の会社に働く前。
俺は、宅配業者で働いていた。
そこで、陽人に出会ったのだ。
「会社に働きたくないって言ってなかった?」
「働いた方が、より夕貴の役に立てると思うんだよ。どうかな?」
「まあ、確かに。あそこの人達は、私の事を嫌ってるわけだし」
「そうだろ?じゃあ、ちょうどいいんじゃないかな?」
「でも、本当にいいの?自由に働きたいって言ってたのに……。あそこで働いたら、残業だってあるわよ」
「いいの、いいの。夕貴の役に立てるなら」
デタラメな嘘を並べても、はるちゃんの近くに行きたかった。
それが、例え。
夕貴を傷つける未来への道を進んでいたとしても……。
・
・
・
「結婚って、相手は?」
「女の子なんだよ」
「はあ?女?コウキ、お前自分が何者かわかってんのか?」
「わかってるよ。だけどさ、俺達みたいなので結婚してうまくいってる人だっているだろ?」
「あのなーー。思春期のよくわからないのとは違うんだぞ!俺もお前も、もう立派な大人で。どっちが好きか何か火を見るより明らかだろ?なのに、女と結婚するなんて馬鹿な事言うなよ」
高校生の時に交際していた織部保は、俺に呆れた眼差しを向けていた。
「だけど、女性と結婚してうまくいってる人だっているんだよ。俺は、彼女を幸せにしたいんだ」
「コウキ。それは、無理だよ」
「保には、わからないよ。保は、女性を好きになった事がないんだから」
「だったら、勝手にすればいい。だけどな、よく覚えとけ!お前は、絶対にまた男を好きになる。だってお前は、産まれた時からこっち側なんだから」
吐き捨てるように言って保は、帰って行った。
そんなわけない。俺は、ずっとずっと夕貴を愛してる。
結婚して、夕貴との子供をもって、この先もずっと一緒にいるんだ。
あの頃、思っていた気持ちは、嘘じゃなかった。
だけど……。
保に言われた、《《こっち側》》。
俺は、そうだった。
・
・
・
そう気づいたのは、陽人に会ったせいだ。
夕貴の会社の傘下にある会社へと働き始めた俺。
別の会社ではあるものの、陽人の会社と関わりが深く。
働き始めて、数ヵ月後には俺達はすっかり仲良くなっていた。
「栄野田さんって、いつも遅くまで残業してるの?」
「栄野田さんじゃなくていいよ。コウキって呼んで」
「じゃあ、俺も陽人でいいから」
「了解!そうだな。部長が人使い荒いから」
「それわかるわ。俺の所も同じ」
「やっぱり!今時は、そういうの駄目とか言うけどさ。まだ名残、残ってるよな」
「わかる、わかる。そういう昔ながらの体制が嫌だよな」
陽人と仲良くなれて嬉しかった。
あの頃と違って、笑ったり怒ったりできる。
それだけで、よかった。
よかったのに……。
「コウキ、俺、結婚するんだ……」




