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2.竜王アダン

 ────どこに、いる。どこに、どこに、どこに。


 どこに、いるんだ。俺の番は。どうしたら見つかる。何を与えれば良い。何を奪えば良い。誰を殺せばいい。何を壊せばいい。


 もうその全てを、やり尽くしたというのに。


 一体、どうしたら手に入る。一体、いつまで──……


 グルル、と喉から低い音が漏れた。他の獣人とは違い、竜人は人と竜の姿の二つを完璧に使い分けることを誇りとしている。

 だから、人の姿で竜の声が喉から出るなどありえない。……王として、あってはならない。


 けれどそんなことを取り繕えるほどの余裕は、もう何百年も前に失っていた。中途半端に鱗に覆われた腕で、ガリ、と床を削る。

 そんなことを繰り返しているせいで、冷たい石に覆われた牢の中は酷い有様だった。けれど──決して、腕に繋がれた鎖を断ち切ることはできない。

 それはかつての己が残した、最後の理性だった。


 獣人の王とは、治政とは別に存在するその国を代表する権威であり、その絶対的な力によって血の気が多い全ての獣人を束ね他国を牽制する、なくてはならない存在。


 この国で王に逆らえるものはなく、獣人の本能がそれを許しはしない。強さこそが全てとされるこの国において、その頂点に君臨する王こそ、今牢に閉じ込められている惨めな男、アダンだった。


 金色の短髪に、宝石を閉じ込めたような碧眼の眉目秀麗な王は、その美しさも然る事ながら理性的で、無闇に獣人に何かを命じることもなく民から慕われていた。──つい数百年ほど前までは。


 けれどそんな、敬われ畏れられるべき存在である王は、今では哀れみを込めてこう呼ばれていた。


 ──……番狂いの哀れな竜王、と。


 獣人には、番、と呼ばれるものが存在する。一目見た瞬間に強く惹かれ合う、本能が認めた特別相性の良い異性。

 番に尽くすことは至上の幸せと言われていて、全ての獣人が己の番に出会う日を夢見ている。


 けれどその中でも──竜人の番は運命の番と呼ばれ、それに対する竜人の執着は異常だった。

 比肩するもののないその強さの代償だと、誰かが囁くほどには。


 かつて、異国の人間の姫を番とした竜人が求婚し、しかし姫に幼い頃から決められた婚約者がいると断られたことがあった。

 獣人の番についてその国が明るくなかったことが、全ての悲劇の原因だった。


 竜人はその姫の婚約者を当たり前のように殺した。そうして、これで己のものになれるだろうと嗤ったのだ。当然国は大混乱となり、姫は訳も分からず泣きながら竜を拒絶した。


 そうか、とその竜はひとつ応えて。


 ──その国は三日で攻め滅ぼされた。姫の行方は、未だ知られていない。


 今となっては眉唾だと言われることもあるが、王でもあり長寿な竜人であるアダンは知っていた。──この話が真実であることを。そうして、その悲惨な最期も。


 竜人は一生に一度、自身の逆鱗を用いて番と寿命を分け合うことができる。けれどそんな大掛かりな儀式が、一方の意思のみでできるはずもなく──連れ去られ閉じ込められ、長い時を経てなお祖国を滅ぼした竜を許すことのなかった姫は、何をされようと、儀式を拒み続けた。

 竜がどれほど懇願しようと、地に頭を擦り付けて縋り付こうと、とうとう惨めに泣き喚こうとも、決して。


 そうして姫は、人間の基準からしても短い──竜からすれば瞬きの間の人生を終えた。最後まで、竜を許すことはなく。

 そうして竜は番を失ったことに絶望し、気が狂った末に衰弱して死んでしまった。


 愚かなことだと思うだろう──一人の女のために、一国を攻め滅ぼすなど。


 けれどアダンには、竜の気持ちが痛いほどに分かってしまう。己の番が他の男のものになるなど、許せるはずがないのだ。


 例え拒まれようと何をしようと、己の番はこの世にただ一人。それに手を出すというなら、八つ裂きで済めば優しい方だ。

 番を手に入れることを邪魔するものは、全て壊し尽くしてやる。それが例えひとつの国であろうとも。


 アダンはぼんやりと涙を零す番の姿を思い描こうとして──それは、すぐに霧散した。


 なぜなら、アダンには──……思い描ける番が、いないから。


 そう考えた瞬間、気が狂いそうなほどの不快感と絶望が身を焼いた。食いしばった唇に血が滲み、その端から傷が塞がっていく。

 反射的に身を捩ろうとして、ガチャン、と、手枷が大きな音を鳴らした。それが煩わしく、幾度も手枷を打ち鳴らすけれど、それが外れることはない。


 ────何故ならこの手枷は、狂王と成り果てる前の己が、持ちうる限りの力を持って用意したものなのだから。


 獣人の誰しもが、己のただ一人の番に出会うことを夢見ている──そうは言っても、出会えないこともある。

 そういう時普通の獣人であれば生涯を独身で過ごすか、子を望む者は同じく出会えなかったものと番うだけだが、竜人は違う。


 本能に刻まれた番と出会えなかった竜人は、焦がれて焦がれて探し回り、それでも出会えなければ──番に焦がれるあまり、気が狂い国に厄災をもたらす狂獣と化すのだ。

 竜とは獣人の中で最も力の強い種族であり、それも王となれば一人で国ひとつ滅ぼせるほどの力がある。それが我を失い力尽きるまで暴れるとなれば、どれほどの被害が出るのか想像に難くない。


 番と出会えなかった竜人など、長い歴史の中でも数えるほども出ていないはずなのに。

 産まれたときから血眼になって探し続けているアダンの番は、何百年と経った今になっても見つかることはなかった。


 ────あぁ、このまま番が見つからなければ己は狂う。


 番に焦がれて、出会うことを夢に見て、探して探して探し続けて、きっと生涯番に教えることはできないようなことにまで手を染めて、自身が使うことのできる手段全てを使い切り、そうして何百年も経ったあたりでアダンはそう悟った。


 番に出会えないのなら、この国などどうなっても構わないと──捨て鉢にそう思わないでもなかったけれど、番がこの国に縁のある者だったら、きっと悲しませてしまう。それはアダンの本意ではなかった。


 だからアダンは、己の最後の理性でもって、己を閉じ込める檻を作った。

 竜人を留めておける檻と枷など、竜人にしか作ることはできないのだから。


 昔から仕えてくれている側近達は酷く嘆き悲しみ反対したが、自分を己の国を滅ぼす稀代の狂王にさせる気かと問えば、その顔を悲痛に歪めながら頷いてくれた。

 代わりに、番を探す役割を側近達に託した。本当は、番を探す役割を他人に任せるなど冗談ではなかった。己より先に番の姿を目にしたもの全てを殺してやりたいほどに、狂いそうなほどに焦がれているのに。


 けれどそうするより他になく、その日から己は、自分の血を用いて作った檻の中に繋がれた。外すための鍵は、最も信頼する側近に持たせて。


 ──番が見つかるまでの辛抱だ。


 最初は、そう己に言い聞かせていた。側近達は足繁く牢に通った。獣人の国の権威を奮って、国中の──いや、世界中の女性の情報を携えて。

 写真の一つ、持ち物の一つ、香り一つ。番のものであれば、絶対に分かる自信があった。己が狂うほどに求めるものを鼻先に差し出されて、分からないはずがない。


 ……けれど、その中に己の番のものが混ざることはなかった。


 何年、何十年、──何百年経とうとも。


 希望なんてものを僅かにでも抱いていられたのは最初の数十年ほどだけだった。


 歳月が過ぎるにつれ、どんどん己の理性や、今まで培ってきた大切なものが削り取られていくような感覚がした。記憶が曖昧だけれど、手を尽くしてくれている側近達に怒鳴り散らしたような覚えもある。

 けれどその理不尽に怒るでもなく、側近達が悲痛に顔を歪めていたのは、己がみっともなく泣いていたからだろうか。


 とうとう己が自ら檻に入ったことも忘れ、こんなもので繋がれているから番を探しにいけないのだと身も蓋もなく叫び暴れたような記憶も断片的にある。


 ──間違いなく、己は狂っていた。


 それから、一体どれくらい経っただろう。もう、己のもとを訪れる者の名前すら、曖昧になっていた。ただ、今日もその手一杯に持たれた情報の中に、番のものがないことだけは分かって、それが全てだった。


 何か話しかけられているのも、必死な表情をしているのも分かるのに、それに何かを返そうと思うことができない。番が、己の元にいない──それが全てだった。


 あぁ、もうきっと、見付からない。己の元へ、番は現れない。


 すとんと、そう理解してしまった。長い、長い間足掻き続けた末にたどり着いた諦念は、穏やかで、どこまでも底のない──……狂気を通り過ぎた末の、余りにも深い絶望だった。


 ゆっくりと、思考が回復していく。どうして己がこの檻に繋がれているのかも、目の前の側近がどうして泣いているのかも、全て分かる。──……分かってしまう。


「──……爺」


 目の前の、──数百年も前に檻の鍵を託した、最も信頼する側近に声を掛ける。声を出すのは久し振りで、喉に張り付くような感覚がした。

 酷くやつれたように見える、子供の頃から見知った爺は、弾かれたように顔を上げて──それから、絶望の表情で涙を浮かべた。


 そうだ、爺は昔から、己をよく理解してくれていた。自嘲の笑みが漏れた。

 爺は手に持っていたもの全てを取り落とし、それから肩を震わせながら床に頭を擦り付けた。


「ッ陛下、どうかお待ちください……ッッもう少しすればきっと、……きっと……ッ!!!」


「……もう、疲れた。鍵を外してほしい──これ以上の、生き地獄は、耐えられない。……もう、どうか、楽に」


「…………ッッ」


 押し殺したような嗚咽が聞こえて、けれどそれにすらもう、心が動かなかった。ただぼんやりと、来世では番に逢うことができるだろうかと、そんなことを考えるばかりで。

 己は、国を滅ぼす狂気の王を通り過ぎて、とっくに壊れてしまっていたのだと、気が付いた。嗚咽を零す爺を無感動に眺めていると、やがて爺が、ゆっくりと顔を上げて。


 涙の痕で、その顔は酷いものだった。少し老けただろうか。──檻に入ってからも、顔は見続けていたはずなのに。


「……──どうか、……どうか、ここでは、ご容赦ください。このような、寂れた牢でなど──貴方様は、私の、私達の主君です。この国の、王なのです。ですから、……」


 爺は、そこで唇を噛み締めて、顔を伏せた。


「──今夜、部屋を整えて……杯を、用意いたします。長年仕えた臣下の、最後の願いでございます。どうか……ッ」


「……わかった」


 小さく呟いた返事に、爺は体を震わせながら、深く、深く頭を下げた。本当に、臣下のことを思い受けた申し出であれば良かった。

 けれど己の心にあったのは、遅かれ早かれ同じことだし、邪魔をされたら面倒だと、それぐらいのものだった。非情な主に長年仕えたものだ。

 ……次は、もっと、まともな者に仕えたらいい。



 迎えに来た爺に鍵を外されたのは、その日の夜のことだった。鍵を差し込めば簡単に床に落ちた手枷を、暫くぼんやりと見詰めていた。


 己を縛っていたものは、こんなにも軽かっただろうか。





 静かに、王宮の廊下を歩く。主がいなくとも美しく保たれているのは、きっといつ戻ってきてもいいようにと、願掛けのようなものだったのだろうが──絢爛な装飾品も、磨き抜かれた廊下も、最早意味をなさない。


 爺に身支度を整えられてから、ただの一度も誰とも会ってはいないけれど、竜人の耳は鋭く、あちこちから聞こえる啜り泣きを拾っていた。

 もうどれほどまともに会話すら成り立っていなかったか分からないのに、己は随分慕われていたらしい。しかしそれも、まるで他人事のようだった。


 もうここで過ごした時間がどれほど前かも分からないけれど、己の寝室くらいは覚えている。竜人に警備上の心配など無用だからと、無条件に一番気に入った部屋を選んだのが遠い記憶のようだった。

 己を引き留めるものは何もなく、歩みが迷うこともない。そこにはきっと──美しく整えられた寝台と、軽い食事。


 ……それから、毒杯が、用意されているのだろう。


 迷いはない。そんな心は、既に擦り切れてしまっている。己はもう、生きて動く死体のようなものだった。


 ──けれど、せめて。


 言葉を交わしたいなどと、贅沢なことは言わない。一目、見ることが叶えばと、そんな血反吐を吐くほどに願ったことも、今更思ったりはしない。


 ──ただ、己の番が。どんな色を持つのかだけでも、知りたかった。


 じわりと既に破片となった心から滲み出した、情けない未練に自嘲の笑みが漏れた。ああ、きっと己の生に、意味などなかった。番の姿形さえ、その色さえ思い浮かべることのできない己など。

 その無力さを、噛み締めるだけの歳月だった。だけどどうか、どうか──来世では。


 寝室の、ドアノブを回した。もう数瞬で、己の生は幕を閉じる。それに動くことのない心に、己は心底疲れていたのだと漸く実感した。

 ──早く、この地獄を終わらせてしまおう。


 無感動にそう思い、そして軽く、扉を押した瞬間だった。



 ──……ぶわりと、今までに知っているどんな香りよりも良い匂いが脳髄に広がった。



 思わず、目を見開いた。頭よりも先に、飢えて飢えて渇望して、とうとう壊れてしまったはずの己の本能が、叫んでいた。


 ────これは。この、感覚は。


 にわかに逸りだした心臓の音に、うるさいと怒鳴りつけたい気分だった。少しでも音を立てたら、逃げてしまうかもしれない。……逃げる? 何が?


 ──……己の、番が。


 無意識に息を殺していた本能に理性が追いついた途端、ぶわりと汗が噴き出す感覚がした。ともすれば震えそうな手で、そっと、そっと、扉を押し開けていく。きっと今、己は酷い顔をしているに違いない。


 ちらちらと視界の端が光って、瞳孔が開いていることを知った。それすら煩わしくて仕方が無かった。意識は全て、扉一枚隔てた部屋の中へ向いている。


 本能は、間違いないと言っている。けれど理性があり得ないと言っていた。だって、ここは己の、王宮の最高位の寝室で──誰も、居るはずはないのに。


 期待して、裏切られるのが恐ろしかった。もう、何もかも諦めて永遠の眠りにつこうとしている自分に、中途半端な希望を与えないでほしかった。

 けれど、それでも、諦めたと物分かりの良いことを言っても、本当はそんなこと、できるはずのないものが──気が遠くなるほどの時間の中、狂うほどに求め続けたものが、ここに、あるのだとしたら。


 ゆっくりと、己の込める力に従って、扉が開いていく。月明かりが差し込む部屋で、ふわりと、天蓋のカーテンが揺れて──夜の闇に包まれるその部屋の中に、人影はなかった。


 ──そう、人の影は。


 視線が、吸い寄せられる。目が奪われるというのがどういうことか、己は長い生で初めて身をもって知った。


 ──ふわりと夜風に揺れる天蓋のカーテンの下。己のために完璧に整えられた白い寝台。その上に、ちいさく丸い、黒い影があった。


 シーツに埋もれるようにして──柔らかそうな毛に包まれた横腹を上下させながら、艶やかな真っ黒な毛の子猫が、己を温めるようにちいさく丸まり、ぷうぷうと寝息を立てていた。

 時折、もにゃもにゃと口元やつま先が動いて、恐ろしいものなど何もないように、平和な顔をして。


 その姿を目にした瞬間、ぶわりと、涙が溢れた。


 どうしてここにいるのか、とか。獣人ですらない、ただの黒猫であるだとか──全部全部、どうでもよかった。


 番──番だ、俺の、番だ。やっと、やっと……やっと。


 気が狂い、壊れるほどに求め続け、とうとう手に入ることはなく、今日全て、終わりを告げるはずだった。けれど、番が、己の番が、目の前にいる。

 もしこれが、死に際に己が見ている都合の良い夢ならば、それでいい。


 一生覚めないでいてくれるならば、それだけで、もう──己が生きてきた意味はあった。


 ふらり、と、一歩、何を考える間もなく足を踏み出していた。夢でもいいと言いながら、夢ではないと確かめたかった。

 その間も煩わしい水分は止まることがなく、ぼたぼたと床を濡らしていく。視界が歪むのが鬱陶しくて、しかし拭う時間すら惜しかった。

 一歩、前へ踏み出すたびに、番の姿が鮮明になっていく。


 とうとう眼前まで、月明かりに照らされた番の姿が迫ったとき、己の手が酷く震えた。──これで、もしも触れることができなかったら。狂った自分が生み出した、都合の良い幻覚だったら。

 ふらりと宙へ浮いた手が、それ以上前へと進むことを躊躇うように震えた。


 けれど──それでも、触れたい。触れたくて仕方が無い。そのぬくもりを確かめたい。


 番に触れることを、一体今まで幾度夢想してきただろう。一体どれほど、願っただろう。

 何を犠牲にしてもいいと願い、そしてとうとう、叶うことはなかったのだと……そう思っていた。けれど、今、もしも──叶えられるのだとしたら。


 震える手を、そっと、そっと、シーツに埋まる子猫に伸ばす。ふわ、と指先が僅かに柔らかな体に触れ、弾かれたように指を引いた。

 余りに柔らかくて、繊細で、ちいさくて──壊してしまいそうで。


 爪が、鱗が、出ていないか。子猫にとっては有害な己の血がどこかに付いてはいないか。傷つけてしまわないか。

 夢うつつな心地のまま、何度も何度も確認して──それからもう一度、そっと震える指先で、子猫に触れた。


 とくん、と、指先にちいさくて、速い鼓動を感じて。ふわふわで、あたたかくて、幸せを固めたみたいな感触がして──生きているのだ、と実感して。


 性懲りもなく、涙が出た。それどころか、とうとう堪えきれずに、情けない嗚咽さえ漏れた。


「──やっと……やっと会えた、俺の、番──……ッ」


 これは、夢ではない。己が作り出した、都合の良い幻覚でもない。


 ──会えたのだ。己は本当に、番に出会うことができたのだ。数え切れない歳月の地獄の果てに、漸く、本当に、漸く。


 番の持つ色だけでも知りたいと夢想した、数瞬前の己に知らず胸の内で答えを呟いた。──俺の番は、何にも染まらない、この世の何よりも美しい純黒を持っている、と。


 指先を子猫に触れさせたまま、シーツに頭を押しつけるようにして嗚咽を零した。


 幸福に涙するのは、長い人生の中で初めてのことだった。

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