特殊能力保持者《エリート》で暗殺者兄妹とAll《政府機関》の闘争物語
世の中は変わった。
普通の人間と違った能力を持つ者が増えた。
それは若者が過半数を占めるが、中には後天的に能力を発現する者も居る。
何かしらの能力を持って生まれた者、又持った者は【特殊能力保持者】と呼ばれている.......が───
政府はそれ等の存在をよく思わなかった。
ある者は何者かに殺され、ある者は弾圧を恐れて日本を脱出。
中には死を恐れて逆に政府の言いなりになる者もいるらしい。
かつてのユダヤ人大虐殺の様な出来事が起こっていた。
それがつい数年前の話。今じゃ特殊能力保持者の数は全盛期よりかなり減ってしまって、かつて1万も居た筈が、今や16人程ととんでもない数となってしまった。
政府は【人間的格差の生まれる人間は始末する】などと堂々と宣言していた。
狂ってしまったのは政府だけでなく、国民までがそれらに賛成している。
特殊能力保持者の出生率はなぜ故か下降し続けている.....それはホントに下降しているのか...それとも政府機関がそれ等の事実を隠しているのか.......
これは、そんな性悪な政府と戦う物語。
特殊能力保持者が政府と戦う物語。
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【20--年9月1日 神奈川県横浜市西区】
「......この聖書?とか言うのは.....信じれば救われるって根拠、どこにあるんだ~?
神だとか地獄だとか....さっぱりだぜ......」
『さぁどうかな。世間は私達の存在を【神の子】又は【悪魔の子】と二極化した認識らしい。崇めたり蔑んだりと忙しい連中だよホント。』
<氷都 美夜。25歳。暗殺組織の諜報員且つ暗殺者。「能力:必中」>
組織の構成員から貰ったキリスト教の聖書を読んでる最中なんだが、1ページ目から読んで今15ページ。
"何を言ってんのかさっぱり分からない"
「ん~.....この聖書、誰かに上げよう。捨てたり燃やしたりするのは何だかすっごく良くない気がするしな」
『んじゃ私と仲のいい人に渡しとくよ。』
<空。美夜の相方。17歳。肩書きは同じ。『能力:予知能力』>
「喉乾いたな.....」
そう思いソファから立ち上がった時、何かに躓いてしまった。
まずい...と思い受け身を取ろうとした時、空が瞬時に助けてくれた。
『っとぉ....危ないなぁ〜お兄ちゃんは~
気を付けてよね~?』
「あぁっ...ありがとう。危なかった~.....」
そしてお茶を取りに行き飲んでいると、スマホから着信が鳴る。
着信は【ボス】からだった。
「もしもしボス?」
«元気か美夜。いきなりで悪いが仕事だ。
簡単な仕事。ある男の暗殺だ。»
「暗殺ですか。そりゃ誰の事を?」
«Allの副総統だ。その男は全国で能力保持者撲滅運動を起こそうと企てている。必ず阻止し始末しろ。»
そして他にも様々な詳細を伝える。
«しかし注意しろ。空港は今日に限って人がいつもよりごった返している。
それに一人特殊能力保持者の人間が来る。
恐らく敵と言っていい。気を付けろ。
副総統は黒のスーツにネクタイをしてない。これで見分けてくれ。頼んだぞ。»
「了解、すぐに向かいます。では失礼します。」
通話終了。
通話を終え、すぐさま空に声をかける....が既に空は準備を終えていた。
「空~仕事だ......ってお前もう準備出来てんのかよ!」
『まっ、できる女ってわけよ!笑』
くそウザイドヤ顔を殴りたいところだが、俺自身も準備を終わらせなくてはならない。
数分の準備を終え、車に乗り込む。
『ねぇ〜ダサい~この車〜!何だよこれぇ〜!』
助手席に座りながらそう騒ぎジタバタ暴れ出す。
「文句言うな〜下ろすぞ〜」
『仕事で金貰ってんならもっと良い車買え〜!』
車を発進させても尚騒ぎまくる妹にはうんざりしてる......子供が何故この組織に.....
「だーまれ殴るぞボケ。騒がれんの嫌いなんだよ。降ろすぞてめぇ。」
《出発/道中》
無言で運転していると、助手席から空が話しかけて来た。
『特殊能力保持者って今日本に何人居るの?』
「.....16人ほどだ。誤差はあるがもうホントに少ない。殆どが虐殺の対象になり、他と我々除いての16人はどう生きてんのか知らない。」
『そうなんだ......』
「特殊能力保持者かどうかを生まれたばかりの赤子を検査して、陽性なら親元から切り離される。その後どうなったかも分からないし、親元に返ってきたケースは1度も無い。」
『うわ......可哀想.....』
──────
あれから数分が経過した時、俺はある場所に車を停車させた。
『ここって....P?』
「ここで1度車を変える。」
通話の時にボスから指定の車に乗り換えるよう言われ、その通りに車を乗り換える。
ドアの鍵は既に開いており、キーも既に刺さっていた。
「よしっ....空いいか?お前は周囲の警戒をしてくれ。俺は運転をするからな。」
そう言いながら白色のセダンのエンジンを付け、発進させた。
法定速度を破る程の速度で車を走行させ、そのままハイウェイへ出た。
《車内/道中/首都高速湾岸線》
空港まであと15分。
「お前の能力って、どこまで見れるんだ?
何秒先まで見れる?」
『んー、5秒とかそこらかな。』
我々特殊能力保持者には長所と短所がある。
俺達は、長所も短所も知られてはならない。
「5秒だったか。微妙な時間だな。」
『お兄ちゃんのよりはいいもん!』
「......そんな機嫌悪そうな顔すんなよ。そのとてもとても強い能力で何か起こらないか予言してくれー」
そう言うと、空は目を閉じる。
そしていきなり、何を見たのか分からんが焦った雰囲気でこう言いだした。
『........っ!お兄ちゃんタイヤ!タイヤに何か起きる!』
「タイヤ?何が起きるっていったい何の───?」
そう言った瞬間、車が強く揺れた。
「....っ!?....っ?なんだ....今の衝撃は.....」
走行中、車に再度何か衝撃が走る。
「なんだ今のは....っ!」
そしてまたもや車体に衝撃を感じ、車が揺れ、なぜ故か速度が落ち始める。
「速度が...!ガソリンは.....ある.....これは...!?」
停車させて確認したいところだが、ハイウェイで車は止められないし何より時間をこれ以上かけていられない。
そのまま走っていると───
「っ!?なにィ!?」