01 カミス
『リヴァイス 23 ノラ召喚少年の流浪進路』の続きで、
チームカミス(?)のお話しです。
お楽しみいただければ幸いです。
こんにちは、華城華三栖です。
今日はお城での仕事はお休み、かねてからの予定通りのお出かけの日。
もちろんエルミナさんとシスカさんと三人で、です。
少し街道を外れたら、目の前には広がる大平原、所々に群生するきれいな花がアクセント、確かに聞いていた通りの絶景。
城下町北門から徒歩半時間、こんなに近くにこんなにきれいな景色があるなんて、さすが異世界。
教えてくれたメイドのルルナさんに、大感謝。
「素敵なところですね」
エルミナさん、気持ちよさそうな良い笑顔。
最近、新生活で友達がたくさん出来て、みんなの前ではいつも笑顔だけど、やっぱり僕の前で僕に見せてくれる笑顔は格別です。
それにしても、やっぱりきれいだな、エルミナさん。
初めて会った頃の気品はそのままに、時々見せる同い年の女の子っぽい可愛らしさがすごく良い感じ。
夫婦ってことになってるけど、それらしい事は何も出来てない。
それでも、こうして一緒にいられるだけで幸せいっぱい。
「心が、落ち着く」
シスカさんも、穏やかな良い笑顔。
最近、新生活で緊張顔や戸惑い顔が多いので、笑顔が見られてうれしい。
それにしても、やっぱりきれいだな、シスカさん。
あの国での騎士時代に、あちこちの国の王家とか名門大貴族とかからの結婚の話を全部断ったって聞いたけど、確かにウエディングドレス姿とか見たくなっちゃうよね。
女優さんやモデルさんみたいにきれいだけど、なんていうか化粧っ気が全く無い嘘っぽくないきれいさ、です。
一緒に過ごす時間が長いせいもあるからかもだけど、最近は知り合いとか友人じゃなくて家族になれたんじゃないかな、なんて思っちゃうのは僕の思い込みなのかな。
何にせよ、こうして一緒にいられるだけで幸せいっぱい。
「カミスさんもとても幸せそうですね、シスカ」
「目線は景色では無いようですよ、エルミナ」
しまった、ぼーっと見惚れすぎちゃったみたいだよ。
ピクニック気分だったけどここは異世界、ちゃんと警戒しないとね。
「えーと、休憩の準備の前に、安全確認しますね」
モノカさんからお借りしてきた広範囲探査魔導具で、周囲の魔物を確認しなきゃ。
範囲はこれくらいっと。
これで目に見える範囲の確認が可能なはず。
感度はこんな感じかな。
自分の強さを登録して基準値にすると、それが反映されて索敵表示されるんだよね。
よし、探査開始!
……怪しい表示は何も無し、ですね。
このままにしておけば、何かが近づいてくれば警報が鳴るはず。
「はい、周囲には問題無し、ですよ」
「それでは、お茶にしましょうか」
僕の『収納』からいろいろ取り出して、っと。
「いただきます」
今の自分、目に映る全てが良い感じ。
きれいな風景。
美味しいお茶と美味しいお菓子。
きれいなエルミナさんときれいなシスカさん。
夢のようだけど夢じゃ無い。
これが異世界。
僕なんかが、こんなに幸せで良いのかな。
『どうしましょう、シスカ。 カミスさんがあまりにも幸せそうなので、あの事を話して良いものやら』
『大丈夫です、エルミナ。 今日一日、必ず話す機会はあります』
エルミナさんとシスカさんが何やらひそひそ話をしているけど、その姿も素敵なわけで。
本当にもう、幸せすぎてバチが当たらなきゃいいんだけどな。
ピロピロピロピロ!
うひゃぁ、ナニゴト!
慌てて広範囲探査魔導具の画面を見たら、僕たちがいる中心部からそこそこ離れた位置に黒い点。
えーと、登録されている味方が緑の光点で、それ以外は赤い光点だったはずだけど、
黒い点?
「探査魔導具に味方でも敵でもないっていう変な表示が出ちゃってます」
振り向くと、とっくに片付けを終えたふたり。
シスカさんは抜刀済み、エルミナさんを守るようにして周囲を警戒中。
「表示の方向は?」
シスカさんの本気の騎士モード、凛々しさ全開。
「あそこにある大きな木のあたり、動いてはいません」
遠くてよく見えないけど、とても大きな木の幹に黒い何かがあるような。
「どうしましょう」
エルミナさんが、少し怯えている。
「シスカさんはエルミナさんのそばにいてあげてください。 僕が見てきます」
あれ? 普段は臆病この上ない僕が、変なことを言っちゃってるよ。
「しかし、カミス殿」
シスカさんは心配してくれる表情もきれいだな、なんて考えてる場合じゃないはず、なんだけど。
「大丈夫です。 『鑑定』出来る距離まで近付いてみて、危なそうだったら全力で逃げてきますから」
おかしいな、なんでこんなにあの黒いのが気になるんだろう。
「お気をつけて」
エルミナさんは心配してくれる表情もきれいだな、って、心配を掛けちゃだめだろ、僕。
「ふたりとも、もし僕が全力で走り出したら、すぐに逃げてくださいね」
逃げ一択なところが、なんというか、僕なのですよ。
「では、行ってきます」






