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ダブり集

イライラ

作者: 神村 律子

 最近彼はイライラしている。


 仕事もうまくいっていない。


 上司には叱責される。


 家に帰れば妻には愚痴られ、子供には無視され。


 何もかも消えちまえと思う程、イラついている。


 その上、趣味で始めたインターネットの小説の投稿でもイラついている。


 1人、ストーカーもどきがいて、彼がアップする小説全てを口汚く罵るのだ。


 最初は「厳しい意見」と受け止めていた。


 しかし、相手はエスカレートし、「生活態度が悪いのでは?」から始まり、人格否定にまで及んだのだ。


 さすがにこれには彼もガマンできず、遂に反論した。


 すると相手は、


「小説にはその人の品格や人生観が滲み出るものだ。貴方の小説は貴方の全てを曝け出している」


と書いて来た。


 彼はギクッとした。


 確かに彼はイライラしながら、私小説的な物語を書いていた。


 しかし、自分の事を書いているとは一言もコメントしていない。


 見抜かれている。


 彼は、このストーカーもどきの人物が、実は高名な作家なのではないかと思った。


 そう思うと少しは落ち着き、その厳しい批判を真摯に受け止められるようになった。


 やがて彼の小説は賞賛されるようになった。


 彼のイライラは収まり、仕事もうまく行くようになった。


 ほんのちょっとしたきっかけ。


 それが彼を変えた。




 彼は営業先が自宅の近くだったので、妻を呼び出し、昼食を共にした。


「どうしたの、今日は? 偉くご機嫌ね」


 妻が言った。彼は照れ笑いして、


「そうか?」


 妻は悪戯っぽく笑って言った。


「私の小説批評、当たってたでしょ?」

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― 新着の感想 ―
[一言] 怖い! 怖いです!>< リアでありそうです。 こんなんなったら、僕小説書けなくなりそうです。 ある意味怨霊とかより怖いですね。 素敵な作品をありがとうございました。
2010/12/31 15:02 退会済み
管理
[一言] 短い中にも、二人の生活の本質が垣間見えました。 そうなってくると、前半の部分がホラーに見えてくるから不思議ですねーw 頑張ってください。
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