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6-4 妖精 2

負けず嫌いです。




 簡単に返事をしたものの、ボクはちょっと困った。今、両手がふさがっている。

 手を離すのは簡単だ。2人とも、言えば手を離してくれるだろう。でもそうすると、2人には妖精の姿が見えなくなる。

 アルバートはたぶん、気にしない。妖精にはたいして興味がないようだ。だが、ルーベルトは興味津々だ。いつもドライなルーベルトが、珍しいほど食いついている。見れなくなるのは嫌だろう。

 アルバート同様、ルーベルトだってボクには大切だ。出来るなら、妖精の姿を見せてあげたい。


「ちょっと待って」


 妖精にそう言った。自分の手を見て、考える。手を離しても、視界を共有できる方法を探った。


(触れていれば見えるということは、見えない何かが触れることで伝達しているのかな?)


 仮説を一つ立てる。それなら、離れていてもそれが伝われば問題ないと思った。


(なんかそんな魔法があった気がする……)


 本か何かで目にした気がする。ううーんと悩んでいると、ぱっと頭の中に魔法陣が浮かんだ。

 その浮かび方はあまりに不自然だ。


「もしかして、教えてくれたの?」


 妖精に尋ねる。


(ああ。だから早くしろ)


 妖精は急かした。どうやら、待ちくたびれたらしい。


「わかった」


 返事をして、ボクは2人の手に繋がりの魔法を掛けた。これで手を握っているのと同様のことが起こるはずだ。


「手、離して」


 アルバートとルーベルトに頼む。


「……」

「……」


 2人は何も言わず、そっと手を離した。

 ボクはアルバートの膝から下りて、立ち上がる。


「あの子、見える?」


 妖精達を指さした。


「!?」


 ルーベルトが驚く。


「手を離したのに、何故見えるんだ?」


 不思議そうに聞いた。


「手を離しても、魔法で繋がっているから」


 ボクは答える。

 ルーベルトは言いたいことがありそうな顔をしたが、何も言わなかった。とりあえず、納得したらしい。


「さて、何して遊ぶ?」


 ボクは妖精の方を向いた。

 答えの代わりに、小さな水の球が飛んでくる。水滴より一回りくらい大きなそれをボクは避けた。元が猫だからか、ボクは身軽だ。ひょいっと動くと、思った以上に身体が移動する。避けるのは容易かった。

 すると、次の球が飛んでくる。

 どうやら、これが遊びらしい。雪合戦を雪の球ではなく、水の球でやっている感じだ。

 もちろん、ボクも一方的にやられている訳ではない。

 水の球を一気に幾つも作って、反撃した。

 緑の子は避けたが、周りにいた2人は完全に濡れる。


(やばっ)


 そう思ったが、遅かった。声は聞こえないが、2人はボクに対して怒っている。ジェスチャーからそれが伝わってきた。


「ごめん」


 ボクは謝る。避けない方も悪い気がするが、今、それを口にしたら相手をより怒らせるだけだろう。


「拭いてあげるから許して」


 そう言うと、2人をそっと掴んだ。ルーベルトのところに連れて行く。


「え?」


 ルーベルトは戸惑う顔をした。


「ハンカチで拭いてあげて」


 ボクは頼む。ルーベルトの膝に2人を置いた。

 ルーベルトはハンカチを取り出して、濡れた身体を優しく拭いてあげる。その丁寧な感じに、2人はまんざらでもない顔をしていた。機嫌も治る。


(あれ? もしかして、魔法で水を分解すれば液体が気体になって服も乾くんじゃない?)


 途中でそのことに気づいた。しかし、上手くやれる自信はない。下手なことをして、取り返しのつかない事になったら不味いと思ったので止めた。


「さて」


 ボクは振り返る。黙って成り行きを見ていたもう1人の子を見た。その子は面白そうにボクたちの様子を眺めていた。


(他人事だな、おいっ)


 心の中で突っ込む。

 たぶん、聞こえているのにそれは無視された。


「続きする? もう止める?」


 問いかける。


(もちろん、する)


 その子は答えた。






 水合戦は、ボクの勝利に終わった。


「やった!!」


 ボクは両手を大きく上に掲げて、ぴょんぴょんはねる。自分では見えていないが、耳がぴくぴく動いているのがわかった。

 それをじとっとずぶ濡れの妖精が恨めしげに見ている。


「大人げない」


 膝の上に2人の妖精を乗せたルーベルトがボクとびしょ濡れの子を交互に見て、呟いた。2人の妖精はすっかりルーベルトに懐いている。優しくされて、気に入ったようだ。足の上で寛いでいる。

 一方、ボクと対戦した子はびしょ濡れだ。

 小さな水の球を沢山作って投げるのが面倒になったボクは大きな水の球を作って投げる。バスケットボールくらいの大きさのそれをその子は避けた。だが、間に合わない。身体に当たった。

 その瞬間に球は割れ、妖精は頭から水を被る。

 その顔は怒っているようにも拗ねているように見えた。仁王立ちでふよふよ浮いている。


「これはどういう現状?」


 そこにロイドがやって来た。授業が終わり、生徒達は一旦、学園に帰したらしい。

 ボクたちを迎えに来たようだ。


「遊んでいただけ~」


 ボクは答える。


「……そうは見えない」


 ロイドは苦笑した。


「どう見ても怒っているよね? せっかく仲良くなるチャンスを上げたのに」


 そんなことを言う。ため息を吐いた。


「仲良くなるといいことがあるの?」


 ボクは問う。


「契約してくれることがある」


 ロイドは答えた。


「うーん」


 ボクは唸る。


「使い魔が妖精と契約するって、可笑しくない?」


 首を傾げた。


「それに、ボクは冒険者でも勇者でもないから、妖精と契約する必要性を感じない」


 わりと本気でそう思う。


「いや、力は持っていた方が何かと便利だろう?」


 ロイドも本音で答えた。


「ううーん。過ぎた力は身を滅ぼすだけな気がする」


 ボクは苦く笑う。


「だから、契約するならルーベルトがいいと思う」


 そう言った。

 突然、話題に出た自分の名前に、ルーベルトが驚いた顔をする。


「その身体、ルーベルトに拭いて貰うといいよ」


 濡れたままの子にボクは囁いた。


「掴んでいい?」


 問いかける。いいとは言わないが、逃げもしない。

 そっと捕まえて、ルーベルトに渡した。

 ルーベルトは大切そうに受け取り、その身体を優しく拭いてあげる。なんとも甲斐甲斐しかった。

 妖精は満足な顔をしている。


「何故、手を繋いでいないのに見えているんだ?」


 ロイドは困惑した。

 ルーベルト達には見えていないと思っていたらしい。


「繋がりの魔法をかけた」


 ボクは手の平を見せた。そこには魔法陣がある。


「そんな魔法、いつ覚えた?」


 問われた。


「あの子が教えてくれた」


 ボクは答える。ルーベルトに尽くされている子を見た。その子はルーベルトの膝の上で我が物顔でふんぞり返っている。

 偉そうだった。


「いろいろ想定外だな」


 ロイドは呟く。ボクを見た。ロイドが何を言いたいのか、ボクはわからない。


「まあ、いい。このまま、補講をしよう」


 その言葉に、自分の猫耳がピンと立つのをボクは感じた。








妖精の契約は使い魔とは違います。

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