第1章 レインの長い夜①
おまたせしました!
今回はついに、主人公のレインが登場します。
それでは第2話のはじまりはじまり~♪
空が泣き始めてから、丸2日が経とうとしていた。
昼間よりも更に影を落とした森は、いつもと違って少し不気味だ。
窓ガラスに弾かれる雨粒を、レインはぼんやりと見つめる。
雨音が心地いいのか、彼女のとがった耳は楽しそうにリズムを刻んでいるようだ。
静寂の森の木々達を支える大地も、久方ぶりの雨に歓喜の声をあげているだろう。
すると突然、壊れんばかりの力でドアを叩く音が部屋中に響いた。
レインは冷静に、探索を使いドア向こうのようすを確認した。
「人間だな。この天気に、道にでも迷ったのか?」
こんな土砂降りの雨に、森へ入ろうとする者はまずいない。
確実に遭難してしまうからだ。
だからこそ、この訪問者を警戒していたが、ノックの仕方から、緊急を要していることが読み取れた。
レインはそっとドアを開ける。
そこには、眉間に深くしわをきざんだ、体格のいい男が立っていた。
「こんな時間にすまない。連れが体調を崩してしまったので、雨宿りをさせてはもらえないだろうか」
不安で揺れる瞳は、強面の彼には似つかわしくない。
見た目以上に、自分以外の人間を大切にする男なのだろう。
これだから、人間とかかわることをやめられない。
我々「神秘の存在」にはない感情。
それが垣間見えたとき、レインは人間という生き物に近づけているような気持ちになれるのだ。
(この男と、もっと話しをしてみたい)
そう思ったレインは、ドアを大きく開き、男を室内へと招き入れた。
男が部屋に入った瞬間、乾燥でふたりの衣服に染みこんだ水分をうばいさった。
男は、突然自分の身体にかかっていた負荷が軽くなり、目を見開いた。
「いまのは、なんという魔法なんだ?」
「乾燥。雨の日の洗濯に便利だぞ」
「さて。それでは、そなたは少年をそこにあるシーツの上に寝かせるのだ」
「わかった」
先ほどまでとは打って変わり、表情の硬くなった男に違和感を覚えたレインだったが、少年を見る方が先決だと、すぐに視線を戻した。
どうやら少年は、慣れない森での生活と雨で体温が低下したことにより、熱を出してしまったようだった。
薬草を調合して解熱薬をつくると、少年に飲ませた。
薄れた意識の中でも薬の苦みは感じ取ったのか、あの男のように、眉間にしわを寄せてうなっていた。
だがその後、薬が効いたのか穏やかな表情で眠りについた。
そのようすを見ていた男は、強張っていた表情を緩め、穏やかな笑顔を見せた。
その表情に、レインは思わずドキリとした。
だが、彼女にはこの感情がなんなのか、わかるはずもなかった。
第2話、いかがでしたか?
レインの口調、独特ですよね。
それにもちゃんとした理由がありますので、お楽しみに!
それではまた。第3話でお会いしましょう。