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君の國(ほし)  作者: mocha
第1部(現代編) 第1章 繰り言
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時代感覚の違い

 珠洲は何て時代錯誤なんだと思う。男女雇用機会均等法が完全施行され、統計によれば、男性より女性の方が管理職の比率が高くなっている時代に、逆行するような事を言う母親が信じられなかった。

 今の管理職は女性の方が()き易い。変な権力意識を持った男性よりも事を荒立てない女性の方が部下の受けもいいのだ(珠洲体験談)。男性はとかく派閥も作りたがり、その派閥どうしの争いが会社の運営とは()け離れた歪んだ人事を生むケースがある。女性は男性とは一線を画し、女子会の感覚で(みんな)仲良く的な感じになる。 

 結婚には資金が必要だし、昔のように一度就職したら生涯同じ会社に勤めるご時世ではない。いつ職を失ってもおかしくない。だから、稼げる時(20~30代)に稼ぎ、ポストに()くなりして余裕が出来れば、婚活に入るみたいな。終身雇用制度の時代が終わり、年金が当てにならない以上、体が動く限り働き続けるのがデフォルトになるだろうし、それまでに安定した地位を得ていればそれに越した事はなかった。無論それは理想論だが、結婚しても共働きが当たり前で、結婚のメリットが見つけにくい時代とも言えた。時間の流れとともに人の考えもどんどん変わっていくのだ。珠洲の父親は現役で働いており、母親の実家で働いているから生涯現役も可能だけど、年金を全額もらえるかどうかは微妙だろう。

 珠洲が話さなくなったのを自分に反論出来なくなったからと判断したのか、母親は持論を展開する。そもそも自分の若い時は20代前半で退職し、結婚するケースが(ほとん)どだったと。就職は飽くまで結婚する相手を見つけたり、結婚するまでの生活を維持するだけの腰掛け程度という意識が強かったと。その後は専業主婦になって、子供の出産や子育てに時間を費やしたからこそ今のあなたがいるんでしょとお仕着せてくる。

「それは私も感謝しているよ」

 珠洲は素直に言った。自分を育ててくれた恩に言及されれば、子供としてはそう言うしかない。でも、今や子育ては母親だけでなく父親も参加するのが当たり前になっている。父親が子育てのために育児休暇を取る時代なのだ。逆にそれが評価対象になるくらいだ。

 親はまだ何か持論を展開していたが聞き流した。

 今は仕事中心の生活だからこそ、プライベートは大切にしっかりと持ちたいと珠洲は考えていた。その一環として実家に里帰りしたつもりだったが、見事に裏切られる羽目になった。

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