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君の國(ほし)  作者: mocha
第1部(現代編) 第1章 繰り言
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珠洲の反論

 母親の長電話が終わり、受話器を置くのを見計らって、珠洲がやんわりと言った。

「ね、お母さん。お願いだから、電話で私が結婚していない事を言い()らさないで」

 普段の鬱憤(うっぷん)を吐き出していい気分でいた母親は、珠洲から思わず反撃を受け気分を害した。

「だって事実じゃない」

 母親は何を言ってるとばかりに言い返した。

「いくら親子だって、プライバシーはあるんだよ。今は家族の間でもそうゆうトラブルが問題になる時代なんだから、言葉には気を付けてよ」

 自分のカミングアウトで失敗している珠洲は実感を込めて言った。

「はいはい」

 でも珠洲の母親はまるで反省していないような口振りだった。そして、まるで口煩(くちうるさ)い珠洲から逃れるようにキッチンへと行ってしまう。

(もうちょっと釘刺しておかないと)

 コーヒーを飲み終えた珠洲は、コーヒーカップを持ってキッチンに向かった。母親はキッチンで特に何もする事がなかったらしく、冷蔵庫を開け閉めした。珠洲は流しでコーヒーカップを洗いながら話を続けた。

「お母さんは電話で日頃の鬱憤(うっぷん)を晴らしていればいいけど、言われている娘の気持ちも考えてよ。そう言う噂話が巡り巡って、私の婚期を遠ざける結果になるんだから」

(全く・・・わざわざ自分が里帰りしている時に、自分をディスるような電話はやめてほしい)

「最近は家族間でもそうゆうトラブルで裁判になるケースもあるんだから、大概(たいがい)にしてよね」

 珠洲の予想以上の剣幕に母親はちょっと引いたが、自宅の会社をパート(もど)きで手伝っていて、クレームにも対応している母親は存外(ぞんがい)打たれ強かった。

「・・・随分(ずいぶん)と理屈っぽくなったねえ。お父さんに似たのかしら」

 母親は溜め息混じりに呟いた。

(全然反省してないじゃん!)

「とにかく、少なくとも私が帰省している時にそんな電話しないでよね」

 珠洲は念を押した。洗い終えたコーヒーカップを拭いて食器乾燥機の中に入れた。

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