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君の國(ほし)  作者: mocha
第1部(現代編) 第3章 遥かな再会
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一重への説明

 で、『チャペリエ』のテーブル席-

 その週、二人は仕事が忙しく、なかなか話す暇もなかった。金曜日にようやく時間が取れたのだ。

 高級フレンチを(うち)っているが、それほど鯱張(しゃちほこば)った店でもない。服装の制約もなく、若いカップルもいるし、値段も安いコースもあり、幅広い年齢層で賑わっていた。お一人様の席もあり、試験的に導入を始めたそうだ。何でも、数年前にオーナーが交代し、今までの格式に(こだわ)らず、もっとオープンな店にと方向転換したらしい。将来の少子高齢化を睨んでおひとり様席を作っているようであれば、相当な手腕だわと珠洲は思った。

随分(ずいぶん)・・・ここも変わったわね」

 一重(ひとえ)はちょっと残念そうな顔をしていた。

「昔は如何(いか)にも上流階級っぽそうな人たちばかりで落ち着いた雰囲気だったのに」

「そうかなあ。あたしとしては、こっちの方がフレンドリーな感じでいいんだけど」

 珠洲は昔と違って内装がオープンな感じになった事を好ましく思っていた。

 二人はスペシャルディナーを注文し、食前酒で乾杯した。

「で?」

 と一重(ひとえ)が促した。

「え、先週の事?」

 いきなり本題になったので珠洲はしどろもどろになった。

「あんた、まさか本当に家までお持ち帰りしちゃったの?」

「ま、まさか。|Nocheノーチェ tranquilaトランキーロでちょっとお話しただけよ」

 珠洲は色々端折(はしょ)って言った。

「ふうん。それで、一目惚れな訳?珠洲がおねショタだったとは・・・」

 珠洲は思わず食前酒を吹き出しそうになった。

「あのね、相手は大学生だから、おねショタとは違うでしょ」

 それでも6歳差、か。

「じゃあ、おねショタの変種?」

(おねショタに(こだわ)るなあ)

 前菜が運ばれて来て、会話が一旦中断する。二人は前菜を堪能する。前菜でも手を抜かないところはさすがに『チャペリエ』だ。

「美味しいわね」

 珠洲はうっとりとした。

「ホントに」

 一重(ひとえ)も頷いた。


()・・・『野の君』の生まれ変わり」

 珠洲は単刀直入に説明した。

 一重(ひとえ)は一瞬理解出来ず、黙り込んだ。そして、昔何度も聞かされたフレーズである事を思い出す。

「ぜ、前世で恋人だった人よね」

「そ、そうよ」

 珠洲は自信なさげに頷いた。昔この話をした時、「野の君」とは恋人どうしであったと話を盛って話していた。事の詳細を話したところでどこまで信用してもらえるか自信がなかったからだ。

「やっぱり、転生していたのか」

 一重(ひとえ)は納得したように独り言(ひとりご)ちした。

「やっぱりって?」

 一重(ひとえ)があまりに断定的に言うので珠洲は(いぶか)しがった。

「何言っているの。始めに言いだしたのは珠洲じゃない。『自分がこの時代に生まれてきたのだから、あの人も輪廻(りんね)の輪の中にいるのではと思っている』って」

「その話、一重(ひとえ)にしてたっけ?」

 確か、自分の記憶ではその話は自分の心の中に留めてきた想いであった。

「いつかは忘れたけど、珠洲が珍しく悪酔いした時、帰りのタクシーで珠洲がぼそっと口にしたから、印象的で今も覚えているのよ」

 一重(ひとえ)は懐かしそうに視線を遠くにやった。

「そうだったか・・・よく覚えてないや」

 ああ、深酒は控えようと珠洲は改めて思った。

「でも、ホントに『野の君』なの?」

「ええ、今度は間違いないと思う。彼、全てではないけど、前世の記憶を持ってた」

「よく・・・あの大学生君が『野の君』だと分かったわね?」

「見た瞬間に、『野の君』だって気付いたの。どうしてそう思ったかは、理屈は分かんないだけど・・・」

「彼にあの話(・・・)したの?」

「まさか・・・探りを入れてみたけど、具体的には、ね。初対面で実は私には前世の記憶がありますって・・・宗教の勧誘みたいじゃん」

「それは確かに」

 珠洲の的確な表現に一重(ひとえ)は苦笑した。そして、珠洲と「野の君」の縁の強さも・・・

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