始まりの日
翌日、私は調教師の事は一旦後回しにして仕事に取り掛かった。
奴隷達の管理は父の代からの従業員に任せて、私は父が築いた取引先と顧客の維持に努めることにした。
今日は奴隷問屋のビーゼンさんが私の店にやって来る。
ビーゼンさんは父と長く取引していた人で所謂、得意先の1つだ。
しかし、継いだばかりの私とは当たり前だが今日が初めての取引となる。
今回はあまり値切らずにいこうと決めている。
商売は持ちつ持たれつ。
もし、ビーゼンさんや他の奴隷問屋に嫌われれば良い奴隷を売って貰えなくなる。
そうなれば、即破産!
は流石にしないが経営は苦しくなるだろう。
仕事机の鏡で自分の姿をチェックする。
「おかしくはないよな?」
商人には身嗜みも大事と父はよく言っていた。
あまり気取りすぎると調子に乗っていると思われるし、逆に庶民的過ぎても侮られる。
それでは、無難に纏めればとすると相手の印象に残らない。
このさじ加減が難しかった。
とりあえず、ビーゼンさんは以前会ったことがあるので今日のところは無難に纏めておいた。
「若旦那!ビーゼンさんがお越しになりました!」
「分かった。すぐにお通ししてくれ」
私は深呼吸して椅子から立ち上がった。