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奴隷とお茶を飲む

フォルクさんはドアを開けてくれると今度こそ自分の仕事に戻って行った。


「ハヤカ、遅くなってすまない。ちょっと手間取ってしまってね」


私はトレイを落とさないように慎重に部屋に入りお尻でドアを閉める。


「ん?」


あれ?ハヤカが居ない。

え?まさか逃げた?

でも、ドアはさっきまでフォルクさんが見張っていたし窓から出るにしても手枷と足枷を付けた状態だと······って居た!

ハヤカは部屋の隅の床に静かに座っていた。

低い位置に居たので私が気付かなかっただけらしい。

ああ、驚いた。


トレイをテーブルに置くとハヤカを手招きする。


「ハヤカ、ソファーに座って一緒にお茶にしよう。おいで」


ハヤカはゆっくりした動きで部屋の隅からソファに移動する。

僕はティーカップにお茶を注ぐ。


「はい、熱いから気を付けてね。ドライフルーツも良かったらどうぞ」


そう勧めつつ、私はハヤカより先にお茶を啜り、ドライフルーツをかじった。

別に私が物凄くお腹が減っていてがっついたとか私が実は食い意地が張っていたとかではない。

ホストがお客より先に自分が出した飲食物を食べるのはマナーなのだ。

何も変な物は入っていませんよ。

あなたに敵意はありませんよ。

そう言うアピールである。

元々は貴族社会のマナーで昔貴族の間で毒殺が流行ったのが由来らしい。

やっぱり貴族は恐ろしい。


親しい相手になるとこのマナーは無視される事が多い。

逆に先に客が食べることで

あなたの事を信用していますよ。

というアピールになる。

たまにお互いの認識の相違からどちらも先に食べようとする事があるらしい。

そう言うときはお互い笑いあってより仲良くなるんだとか。

私は友人が少ないし、あくまでも聞いた話だから本当のところはよく分からない。


私はお茶を啜りつつ、ハヤカの様子をそれとなく観察する。

ハヤカは最初警戒していたのかティーカップを眺めていたが、しばらくしておずおずとティーカップを手に取った。

食い付いた!

釣りに例えると今は浮きが沈んだと言ったところだ。

もちろん、まだ竿を上げるのは早い。

竿を上げるのは餌をしっかり飲み込んだ後だ。


ハヤカが手にしたティーカップをゆっくり持ち上げる。

ふふ、良いぞ!そのままそのまま。

そして、その小さな唇がティーカップに口付けした。

よし!飲んだ!

と思ったが、よく見るとぎりぎりティーカップに口は付いていない。

なぜ、飲まない!?

まさか、私が淹れたお茶なんて飲みたくない。

そう言うことなのか⁉

私は無表情を維持しながらお茶を啜り続ける。

するとハヤカはフーフーと息を吹き掛けお茶を冷まし始めた。

良かった!あんたが入れたお茶は飲めたもんじゃないぜ!という事では無いようだ。

そうだね、火傷すると大変だしね。

ゆっくり冷ましてから飲みなさい。

それにしても中々に焦らしてくれる。

しかし、釣りという物は焦らされれば焦らされる程、釣れたときの喜びは大きくなるのだ。


そうしてハヤカは息を吹き掛けるのを止めゆっくりとお茶を口に含む。

飲んだ!

今度こそ確実の絶対だ!

今だ!竿を上げるぞ!


「ハヤカ、お茶のお味はいかがかな?」


私は見事に魚を釣り上げた。

後は魚のサイズである。

さて、釣果やいかに?


「······まあまあです」


「そうか、まあまあか」


残念ながら大物は釣れなかったようだ。

まあ、今回は魚が釣れただけでも良しとしよう。

またの機会もあるのだから。

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